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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第28話「街に来た南瓜-5」

「わ、私はコウゾー爺さんに知らせてきます!」

「俺も神殿の司祭を呼んでくる!これは洒落にならないぞ!」

 そう言ってエルフの女とリザードマンの男が外に飛び出していく。

 あの二人の反応から察するにやはり予断を許さない状況と見て良い上に、リオの母親に使われているのは許されざる魔法と見てよさそうだな。


「パンプキンさん……」

「俺は見習い魔法使いだ。出来ることは限られてる。だがやれるだけはやらせてもらうさ。上手くいく保証とかは出来ないけどな」

 そう言って俺はマントの裾を掴んでいるリオの頭を撫でた後にマントの中からクヌキハッピィに来る道中で拾った桜の花びらを取り出す。


「結界桜……?」

「やっぱそう言う名前なのかこれ」

 俺は結界桜の花びらが纏っている魔力の色を思い出し、マントの中で蔓の配置を動かすことで自身の魔力の色を変える準備を整えると、ゆっくりと結界桜の花びらの反応を見つつ魔力を流し込み始める。

 そして魔力を流し込むと同時に思い浮かべるのは悪しき者からリオの母親を守る障壁のイメージ。そしてリオの母親に流れ込もうとしている黒い魔力を弾き飛ばすイメージ。


「いけ……」

 魔法は魔力の属性や詠唱、道具などに影響をされる。それは間違いではないだろう。

 だが、それは決して魔法は常に同じ効果しか発揮できないと言うものを表す事ではない。

 【共鳴魔法・ネムリ草】が触媒となるネムリ草を加工することによってその効果の強さを変えたように、術者のイメージや想いの強さによってその効果の幅を変えることも出来るはずである。

 だからこそこの魔法は必ず成功する。


「【共鳴(レゾナンス)魔法(スペル)結界(バリア)(チェリー)】」

 俺の宣言と共に手の上から桜の花びらが舞い上がり、家の壁をすり抜けて周囲に舞い散る。

 それと同時に舞い散った桜の花びらを境界線として薄い桜色をした魔力の壁が作られ、境界の内側に黒い魔力が侵入するのを防ぎ始める。

 どうやら上手くいったらしい。これで【共鳴魔法・結界桜】が解除されるまでこれ以上リオの母親の容体が悪くなるのは防げるだろう。

 心なしかリオの母親の顔色が多少だが良くなっている気もする。


「パンプキンさんこれは……」

「リオ、お母さんの手を握っておいてやれ」

 だがまあ、こんなのは根本的な解決にはならないな。と言うか一時的な措置としても不十分だ。なにせ魔法が切れたら終わりだし、リオの母親の容体は未だに予断を許さない状況だからだ。

 だから、これ以上は専門家の手に任せるべきだとは思うが、俺の今扱える力の範囲でかつリオの母親の負担にならないレベルでいくつか試みるとしよう。


「ううっ……」

「お母さん……」

「さて……」

 俺は母親の手を握るリオの手に俺の手を重ねると共にリオには見えない位置でリオの母親に蔓の一本で直接触れ、その状態でよく目を凝らす。

 やはりと言うべきかリオとリオの母親は母娘と言うだけあって魔力の色がよく似ている。

 そしてさらによくよく見ればリオからリオの母親に僅かずつではあるが魔力が流れ込み、リオの母親の魔力が少しずつだが健常化していっているのも分かる。

 恐らくはこれこそが祈りと言う最も原始的な魔法なのだろう。

 ならば俺はそれを助ける方向で動くとしよう。


「上手く行けよ……っつ」

「うっ……」

 俺はリオの母親の魔力に出来る限り色を似せた魔力をリオと言うフィルターを介した上でリオの母親に流し込むと共に、血を吸うのと似た感覚でリオの母親の魔力から出来る限り黒い魔力だけを選んで吸い取っていき、吸い取った黒い魔力は自切の準備を整えた葉っぱに集約させる。

 言うなればこれは魔力の輸血であり、透析だ。汚染された魔力を俺が吸い取って、健常な魔力を吸い取った分だけ与える。

 魔力が生物にとって生きる力である以上は吸い取り過ぎるのは論外だが、【オーバーバースト】の事を考えれば与え過ぎてもよくないだろう。

 だから俺は細心の注意を払ってリオの母親の魔力を交換していく。


「これは……」

「……」

「ふう」

 そしてしばらくの間そうしているとリオの母親の顔色は目に見えて良くなってきた。ここまで来ればこの後再び黒い魔力を受けなければ大丈夫だろう。


「あ、あのパンプキンさん!」

「言いたい事は多々あるだろうがまだ終わってない」

「え?」

 だがまだ終わっていない。

 俺は結界の方を見る。

 するとそこにあるのは結界に阻まれた結果として滞留している大量の黒い魔力。

 もしもこれが一斉にリオの母親に流れ込めば、弱っているリオの母親の身体では確実に耐え切れないだろうし、それどころか当初よりも悪くなりかねない。と言うか間違いなく死ぬ。

 だからまだ終わっていない。この黒い魔力をどうにかしなければ終わったことにはならない。


「リオ。ちょっとお母さんの髪の毛を貰うぞ」

「え?パンプキンさん何を……あっ!」

 俺は悪いとは思いつつも貴方の為なので許してくださいと心の中で呟いてからリオの母親の死相を浮かべるほどに弱っていた割には綺麗な髪の毛を一房分掴み、強化した蔓でそれを切り取る。

 さて、こちらの魔法がどれだけ前世での呪いと似通った物なのかは分からないが、それでもここまでの威力と精度の魔法ともなればリオの母親をターゲットとして認識するための方法が何かしら存在していると見て良いだろう。

 だからそれを逆手に取る。


「えっ?何でパンプキンさんから……」

 俺は黒い魔力を集めた事によって真っ黒になった葉を自切するとリオの母親の魔力に似せた魔力を作り出してリオの母親の髪の毛に纏わせる。

 そして自切した葉にリオの母親の髪の毛を巻き付けるとそれを結界の外に出す。


「ひっ!?」

「よし」

 すると俺の目でなくても目視できるほどの黒い魔力が結界の外に出したそれに殺到し、黒い球体のようになる。

 しかも黒い球体は後から続いてくる黒い魔力を取り込むことによってそのサイズを少しずつ大きくしている。この様子だとマトモに研究もしていない状態で使った【共鳴魔法・結界桜】程度の結界では破られるだろう。


「リオ。お前はお母さんに付いてろ」

「えっ?パンプキンさん!?」

 俺はリオにそう言い残すと家の外に出て魔力の塊と正面から相対する。

 こうして正面から見るとやはりと言うべきか相当の悪意を感じる。ぶっちゃけ本気で気分が悪い。


「ただまあ。ここまで来れば何とかなるか」

 だが、どんな化学反応を起こそうが元は俺の魔力だ。俺の魔力の総量と制御能力をもってすれば十分に御せるだろう。

 だから俺は手の平を球体に押し当てた。

 さあて、誰がこんなことをやったのかは知らないがいいことを教えてやろう。


 人を呪わば穴二つだ

結構な力技でございます


2/22誤字訂正

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