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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第26話「街に来た南瓜-3」

「では、貨幣の価値と協会の登録証のちょっとした機能についての説明といこうかの」

 コウゾー爺さんはそう言うと数枚の硬貨を机の上に並べていく。


「まず、この国の硬貨の単位はエンと言う。由来は貨幣制度と言う考え方をもたらした転生者が大昔に居たそうでその転生者が名付けたとの事じゃ」

「エン……ね」

 うーん。間違いなくその転生者は日本人かそれに近い世界の出身者だろうな。

 でなければこんなピンポイントな名称が来るとは思えん。


「でまあ、そのエンじゃが種類としては5種類存在しておって価値が低い物から順に石貨、銅貨、銀貨、金貨、白貨となっておって、石貨一枚が1エンじゃ」

「ふむふむ」

 コウゾー爺さんが石で出来た硬貨をつまみ上げて俺に見せる。

 で、その後の説明をまとめるとだ。

 石貨=1エン

 銅貨=100エン

 銀貨=10,000エン

 金貨=100,000エン

 白貨=1,000,000エン

 とのことである。

 ただまあ、こちらの貨幣価値と俺の前世の貨幣価値は確実に違うので1円=1エンではないようである。

 コウゾー爺さん曰く人一人が贅沢をしないで1年生きるのに銀貨5枚も有れば十分らしいし。


「それにしても石貨ぐらいなら偽造できそうだと思って偽造する奴は出てきそうだな」

 俺は石貨を手に持つと指で弾いてジャグリングをする。

 ただ、ジャグリングをしつつも俺は石貨がどういう風に出来ているかを観察する。


「確かに毎年偽造しようと思って捕まる者は出るのう」

 コウゾー爺さんは俺の言葉に笑いながら答える。

 そしてその顔を見て俺もまたニヤニヤと笑う。

 どうして俺もコウゾー爺さんも笑っているのか。それは察した経緯は別ではあるが、俺もコウゾー爺さんもこの硬貨に仕掛けられている物に気づいているからだ。


「具体的にどういう仕組みかは分かるかの?」

「流石にそこまでは分からないな。が、何かしらの魔法がかかってるのは分かる」

 俺は硬貨を注視する。すると、極々微量だが全ての硬貨の周囲に4色の魔力が纏わりついているのが分かる。

 この魔力が持っている具体的な効果までは分からないが、恐らくは偽造防止の魔法だとか本物であることを証明する魔法だとかそんなところだろう。

 そしてこれに気づかず石貨程度なら簡単に偽造できると思って偽造して使うとバレて捕まると。

 いやー、いい仕事してんなぁ。俺の目でもきちんと注意深く見なければ分からないような量の魔力を残滓とするレベルでこんないい魔法を使うとは。一魔法使いとして心の底から見習いたいものです。


「ま、硬貨に関する説明はこれぐらいにして査定の結果の方じゃな」

「ああ、そう言えば」

 ああうん。そう言えばそんなの有ったね。硬貨の作りの素晴らしさに感動して忘れてたわ。


「査定の結果はこんな感じじゃな」

「!?」

 そう言ってコウゾー爺さんは袋の中身を机の上に出し、俺はその中身驚いて大きく目を見開く。


「こ、こんなに……?」

 その査定結果……金貨1枚、銀貨6枚に銅貨20枚。つまりは162,000エンなり。

 ……。その気になれば三年間寝て暮らせますね。

 と言うわけで俺はコウゾー爺さんの方を向いて目で訴える。どうしてこんな量になったのかと。


「量があったと言うのも有るがそれ以上に傷が殆ど無くて質が良かったと言うのが大きいの。加えて言うならクロイングボアもストライクベアも並の狩人が狩れる魔獣ではないしのぉ」

 ああー……なるほど。

 量に関しては貯め込んでいたから。質に関しては吸血で倒す事によって殆ど傷が無かったからかな?

 クロイングボアとストライクベア……猪と熊の強さに関しては確かにこの協会に出入りしている冒険者らしき人間の実力とか、クヌキハッピィの周囲に生息している動物たちの保有魔力量とかを考えたら当然なのかもなー。


「それにしてもこれだけのお金を持っているのは怖いんだけど」

 俺は素直な気持ちをコウゾー爺さんに向かって吐露する。

 実際、金貨とか一枚盗まれただけでも大損害ですよ。と言うわけで何かしらのセキュリティは欲しい。


「じゃろうな。と言うわけで十数年前から協会では一つのサービスをしておる」

 で、そんな俺の質問にコウゾー爺さんはしてやったりと言う顔で応じてくれる。

 コウゾー爺さんが登録証を右手に持って俺に見せる。


「キャッシングカード。と言うとある転生者が作った機能でな。協会の方に預けてある額のエンまでなら登録証を見せるだけで使えると言う機能じゃ。この機能を使える店は限られておるがの」

 ふうむ。まさしくキャッシングカードだな。使える店が限られていると言う点まで含めて。


「まあ心配しなくてもじゃ。家だの宝石だの高価な品物を扱う店では大抵使えるから安心していいぞい」

「なるほどね。てーことは普段持ち歩くのは銅貨と石貨だけで、銀貨以上は預けておくのも有りなわけか」

「まあ、そう言う事じゃな。と言うわけで預けておくかの?」

「そうだな。そうしておくか」

 と言うわけで俺は都市の入場料をコウゾー爺さんに聞いてその分だけ細かく貰い、金貨1枚に銀貨4枚。計140,000エンを協会に預けることにして俺は適当な協会推薦の宿でその日は休むことにした。

 さて、明日は念願の買い出しだな。リオに頼んで案内してもらうとするか。

過去にも結構な数の転生者が来ている世界だったりします。


02/20誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[良い点] 転生者が来ているを通り越して、転成者の遺産で異世界の文明文化が侵食されてるというか別物に変化していますなあ。
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