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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第20話「春の南瓜-1」

「いってらっしゃーい」

「ほいさー」

 春である。

 と言うわけで俺は換金用の毛皮を背負い、熊の毛皮で蔓の部分の身体と【共鳴魔法】に使う各種触媒を隠してリーンの森から遠くに見えていた街に向かう。

 街に向かう目的は勿論筆記用具の入手である!

 木簡はともかく血液インクはもう嫌なんだよ!なんか最近は漏れ出てる魔力の量が多くなってきてるし!

 ああそれから一応『陰落ち』初め各種情報収集も目的の一部ね。夏、秋、冬と季節にして三つ分リーンの森で過ごしたけど外の情報についてはほぼ一切入って来なかったし、流石にこのままだと色々と拙いと思うし。

 なお、換金用の毛皮についてはこうとだけ言っておく。「冬眠中の生物は動かないから締めやすいよね」と。まあそう言う事です。


「ヒュロロロォォ」

 と言うわけで余計ないざこざを起こしたり、人目に付いたりしないようにするために出来る限り高空を飛ぶことで、雪が融けて新芽が萌えだしている森の上を通り、春の農作業を始めている俺が産まれた村の上を通過する。


「にしても村はいつもよりちょっと騒がしかったな」

 俺は村の上空から離れた所で周囲の風景を楽しむためにスピードを落とす。

 で、ちょっと考えるのは先程通った村についてだ。

 実を言えばこの冬の間に何度か情報収集のために俺は村を訪れていたのだが、その時に比べて今日の村は若干嫌な方向に騒がしかった気がする。端的に言えば殺気立っていたと言ってもいいかもしれない。

 うーん。騒がしくなる要因は色々考えつくけど……まあ、俺の気にする所じゃないか。


「それよりも気にするべきはこの解放感だよなぁ……うーん。素晴らしい風景だ」

 俺は空中で横回転して周囲の風景を一望する。

 リーンの森は当然の様に一面の樹海だったが、森の外は平原を基本として実に多彩な地形に溢れていた。

 具体的に言えば頂上から噴煙を上げている山とか、きちんと水平線が見える海とか、平原を突っ切る街道、それに何かしらの作物を育てていると思しき畑なんかが平原以外にも見えてる。

 ちなみに現在俺が飛んでいる高度は高く見積もってもせいぜい100m程であるため、視力を強化すれば普通に地上の様子は見えている。

 地上からは点にしか見えないだろうが。


「ん?うーん?んー…………」

 で、地上の様子を観察しながら俺はゆっくりと遠くに見えている街に向かっているのだが、一つ感じたことがあるために一度地上に降りる。


「やっぱりと言うか何と言うか……」

 地上に降り立った俺は適当な草を引っこ抜いて魔力を子細に観察する。

 そして上空で感じていたことを確かめ、頭の中に浮かんでいる考えが間違っていない事を確認する。


「魔力を殆ど持ってない?」

 俺が感じていたこと。それはこの街道に生えている植物、転がっている石、それからこちらを遠巻きに観察している動物たちが殆ど魔力を持っていないという事である。

 いや、正確に言えば魔力はきちんと持っている。

 だが、その量がリーンの森にいるものと比べて相対的に少なく、目を凝らさなければどういう魔力を持っているかが正確に分からないのだ。


「ちょっと試すか。【オーバーバースト】」

 俺は手に持っている草に適当な魔力を込める。

 すると草は俺が知る限りではリーンの森で手に入る触媒で最も簡単に【オーバーバースト】が発動してしまうアンレギラットの前歯と同程度の量の魔力で光りだし、俺の手から離れた所でポンと言う音と爆竹程度の衝撃だけ立てて弾け飛ぶ。

 うーん。俺の今までの研究成果からして緑色の魔力を持つ植物を【オーバーバースト】させるなら反対色である赤系の魔力が一番効率よく爆発させられて、緑色の魔力なら中々爆発しないはずなんだけどなぁ……なのにこれだけ爆発しやすいって事は魔力の許容量が著しく低いって事か。


「とりあえず上に戻るか。ヒュロロロォォ」

 俺は確認を終えた所で空を飛んで元の高さに戻る。

 で、戻ったところで考えたのだが、よくよく考えたら今の話はリーンの森を基準点に考えた場合の話である。

 だが、リーンの森はリーン様……つまりは神様が眠る森だ。となればその影響を色々と受けている可能性は高い。

 そしてこの考えが正しい場合、さっきの草が持っている魔力量がこの世界における普通で、リーンの森の方が異常だと言う考え方も出来る。

 と言うか、魔力が溢れている水とか土壌とか、勿論血もだがとにかく魔力が多いものは美味しく感じるのは今までの生活経験から分かっていることだし。そう言う色んな意味で美味しい物を食えばそれだけ強くなってもおかしくは無いよな。


「あー、これは街に入る前に気づけて良かった事実かもな」

 本当にあの程度の魔力量が普通だった場合、俺の魔力を全力で開放していたらそれだけで周囲に対して大変な威圧感を与えることになっていたかもしれない。

 なにせミズキ曰く魔力というのは普通の生物には圧力とか違和感とかそう言った物で感じ取るらしいし。


「とりあえずカモフラージュは念入りにしておくか」

 俺は体外に漏れ出る魔力量を極端に抑え込んで、周囲の生物たちよりもちょっと多い量まで漏れ出る量を減らす。これで傍目にはちょっと強いぐらいの生物にしか見えないだろう。

 と、同時に薄皮一枚下からは抑え込んだ分だけ余る事になった魔力があるので、その魔力を利用して全身の防御力を強化する。

 これで見た目の魔力量から油断して襲い掛かってきた敵が不意打ちをしてもその攻撃は薄皮一枚裂いたところで止まる仕組みだ。

 ついでに言えば薄皮一枚は本当に薄皮一枚なので、毒を流し込もうと思っても無理である。毒が全身に行き渡るためには血流の様に何かしらの流れが必要だからな。

 え?俺の身体に血は流れていない?確かに血は流れていないが、水分を行き渡らせるための葉脈とかは流れてるんだよ。だからきちんと毒は効きます。動物向けの毒なんかはほぼ無効化しますが。


「さて、カモフラージュもしたところで周囲の風景も一通り見終わったし急ぐ……」

 で、準備が整った俺は高速飛行によって街に急行しようと思ったのだが……


「はぁはぁ……誰か、誰かあぁ!!」

 地上にて簡素な防具に身を包んだ少女が蜂の群れに追われていた。

 さて、どうしますかね……?

春ですよー

と言うわけでやっと外出です


02/14ちょっと改稿

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