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第156話「『陰落ち』-4」

『この……振りはーーーーー』

 黒貫丸の鍬がルナシェイドの表面に突き刺さった瞬間、ルナシェイドの中から女性の声が聞こえてくるが、すぐに聞こえなくなる。

 どうやら、謎の技術によって聞こえていた中の声がこれまた謎の理由によって聞こえなくなったらしい。


「うおっ!?」

 そして一瞬の後、黒貫丸が刺さったままルナシェイドの表面が大きく動き出し、柄を握っていた俺はその動きに引きずられて凄まじいスピードで移動させられ始め、【天地に根差す霊王】で防いではいるが凄まじい風圧が俺の全身にかかる。


「ぬぐぐぐぐっ……くっ!」

 やがてルナシェイドの表面が急停止し、慣性の法則によって黒貫丸が抜けると共に俺ごと大きく上空に打ち上げられ、俺は慌てて態勢を整えながらルナシェイドの姿を改めて視界に収める。


「こいつは……!?」

 ルナシェイドを視界に収めた俺は驚きを露わにする。

 なぜなら、俺の視界に入ったルナシェイドは今までとは大きく異なる様相を呈していたからだ。


『戦闘形態への移行を完了……』

 ルナシェイドは黒い月と表現出来ていた今までの姿から一見すれば竜のような姿になっていた。

 翼の数は六枚で、尻尾は一本。今まで月の表面として見えていた物はこれらを折りたたんでそう見える様に擬態していたらしい。

 そしてそれらが展開された今になって見えてきたルナシェイドの本体に翼や尻尾の内側だが、こちらは表面が乳白色に輝くと同時に赤黒い線が何本も走っており、顔や腕などは竜のそれに極めて近い姿をしていた。

 と言ってもサイズが桁違いに大きい上に、自己進化の結果として変化していった結果なのか細かく見て行けば爪の形状が一本一本違っていたり、何かの射出口と思しきものが肩や足の部分に付いているのが見える事を考えると微妙に竜とは言い切れない気もする。


『敵の殲滅を開始します』

「おいおいおい!?」

 そして無機質な音声が周囲に響き渡った次の瞬間……ルナシェイドから明らかに先程までとは大きく違う攻撃が放たれ始める。

 それは先程の黒い槍であったり、赤黒い光線であったり、鳥の形をした何かであったり、銀色の球体であったりした。

 おまけにルナシェイドの口の部分には明らかに大量の魔力が集まっており、このままチャージが完了すれば恐らくはサンホロに大穴を開けたり、奈落の海を作り出したアレ……推定主砲が放たれることになるだろう。

 と言うか正直に言って主砲はそこまで問題じゃない、上に撃たせれば下に被害は出ないだろうし、チャージの時間もかかるから。


「突っ込む!」

 問題はさっき言ったそれ以外の諸々だ。とにかく数が多過ぎる。

 幾何学的な模様を描きながら飛んできてくれているから、パターンを読めれば多少はマシになるが、この密度はそれでも拙い。

 故に俺は弾幕との距離が詰まる事によって逃げ場が無くなる前に、そしてルナシェイドに主砲を撃たれないようにするためにも俺はルナシェイドの弾幕に向かって突撃を始める。


「集中しろ……!」

 俺は弾幕の最初にあった黒い槍を紙一重で避けるのを皮切りとして、攻撃を回避しながらルナシェイドに向かって行く。

 赤黒い光線が突撃していた俺の頬を掠め、鳥形の黒い獣が弾幕の合間を縫って俺に襲い掛かり、水銀を丸めた様な球体が降り注ぐ。

 が、光線は俺の【天地に根差す霊王】の領域に入った瞬間に感知すると同時にスピードを落とす事によって回避を可能にした。

 黒い獣は蔓の射程内に入った時点で【レゾナンス】を発動して俺の蔓を叩きつけると同時に黒い獣の魔力構成を揺らがせて動きを止めてやれば後は勝手にルナシェイド自身が放った弾幕によって落ちていく。

 銀色の球体は粘着性があるようで、当たった相手に対して何かしらの悪影響を与えることを目的としたものだったようだが、命中する前に風を起こして弾けば問題なかった。

 ただそれでも数が多すぎる。

 少しずつ少しずつ近づいてはいるが、ルナシェイドまでの距離は遠く、接近すればするほどに弾幕が濃くなってその身に負う傷が増えていく。

 そして、そうしている間にもルナシェイドの主砲には大量の魔力が集まってくる。


「くそっ!」

 どう考えても間に合いそうにない。

 おまけにこのままだと主砲回避のための行動を取る時間を取る時間もなさそうである。

 しかもこの体格差……いや、体格差なんて次元じゃないな。要塞と人間ぐらい差が有るか。それを考えればこのまま接近して攻撃を仕掛けても効果は薄い……となればだ。


「しょうがない……か」

 俺はルナシェイドから離れて弾幕の密度を下げる。

 ルナシェイドの全身には至る所に攻撃の射出口が有るために攻撃が撃たれなくなる位置と言うものは存在しないが、それでも距離を取れば攻撃の密度は下げることが出来る。

 ただ、この距離では今のルナシェイドは恐らく手動(マニュアル)ではなく自動(オート)であろうから、AIの性質からいって一方的に攻められるだけでもある。

 そもそもこの距離だと俺の手札でこの距離からルナシェイドに当たる攻撃と言うと数えるほどしかないし、その手の攻撃では威力がまるで足りないだろう。

 故に俺は切り札を一つ切る。


「【共鳴(レゾナンス)魔法(スペル)狩猟蜂の(ギガース)圧縮蜜玉(グロウ)】」

 俺は懐から俺の魔力を込めた露をリーダーが蜂蜜にし、それを煮詰めたり圧縮したりして球体状にしたものを取り出すと、それを宙に放り投げてから魔力を流し込んで特定の属性配分にした刃を発生させた黒貫丸で叩き切って共鳴魔法を発動させる。


「ヒュロロロオオおおおおおおお゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉぉ!!」

『!?』

 共鳴魔法が発動した次の瞬間、ルナシェイド……より正確に言えばルナシェイドに乗っている奴が微かに動揺したのを感じた。

 俺の体にルナシェイドの放った槍や光線が当たる。が、効果は薄い。

 どうしてか?単純な理由だ。


 今の俺にとってそんなのは小さな針に刺されたような物だからだ。


「さあ……第二ラウンドだ」

 俺は黒貫丸を片手にルナシェイドを睨み付ける。

 そう。今の俺は【共鳴魔法・狩猟蜂の圧縮蜜玉】によって身体を構成している蔓の量を成長によって大幅に増やし、それによって黒貫丸含めてまるで元の俺を相似拡大したかのように巨大化したのである。

 さあ、ここからが本番だ。

巨大化しました。それでも相手はデカすぎますが

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