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第15話「秋の南瓜-8」

「で、何をやったの?」

 ミズキがジト目で俺に問いかけてくる。

 うーん。何をと言われてもなぁ……とりあえず説明はするべきか


「とりあえず魔力を一点に集めて……」

 俺は右手の上に魔力の球体を作り出す。


「で、これをだ」

 そこから俺は魔力の球体に対して心臓が鼓動するかのように収縮と膨張を繰り返すように念じて動かすと共に、その拍動に合わせて送り込む魔力を多くしていく。


「複数作る」

 そして同じものを複数個造り、その拍動の鼓動を少しずつずらしてシンクロするように調節してやる。


「っつ!?」

「するとこんな感じになる」

 で、完全に拍動がシンクロした瞬間に球体が発している魔力の光の輝きが大幅に強くなる。

 うーん。ミズキが絶句している辺り、普通はしない魔力の扱い方なのかな?

 原理としては波と波が重なって大きくなるだけの現象と同じなんだけどな。

 まあ、俺も教えてもらった身だから偉そうなことは言えないんだけどな。


「そ、それにしたってなんであんな量の魔力を涼しい顔で操れるのよ」

「そっちに関しては日々の修行の成果です。こんな感じにな」

「っつ!?魔力の属性が変わった!?」

 俺は驚いているミズキの前で魔力の色を変える。

 うーん。ミズキの反応からしてこっちもマトモな技術ではなさそうだなぁ。森の外に出ることがあっても秘密にしておいた方が良い技術なのかもしれん。


「ありえない。一体どこからこんな技術を見つけてくるのよ……」

「さっきの増幅に関しては教えてもらっただけだけど、色替えは何か色々やってたら出来るようになった」

「教えてもらった?」

「そうそう」

 俺はさっき動物たちを威圧するために魔力を操作していた時の事を思い出す。

 あの時集中していたら突然意識だけが変な空間に飛ばされたんだよなぁ……。



--------------



「ん?どこだここ?」

 魔力を集めて放出しようとした瞬間。

 俺は奇妙としか表しようのない空間に飛ばされていた。


 そこは空が下にあり、大地が上にあった。

 そして空では昼と夜が激しく繰り返され、大地は数多の植物が芽を出して成長しては枯れていっていた。


「身体も人間の頃に戻ってるし……」

 そんな全てが激しく移り変わり、天地と共に常識もひっくり返したような空間で俺は前世の人だった頃の姿で空中に浮いていた。


「本当にどこだよ此処」

「此処は世界(アウター)()外側(ワールド)

「っつ!?」

 答えが返されると思っていなかった質問に答える声が聞こえたため、俺は慌ててそちらを向く。

 だが、そこに居るはずの誰かの姿を俺は見ることが出来ない。


「姿は見せられない。声も本当なら聞かせる訳にはいかない。けれど貴方は繰り返しを終わらせてくれるかもしれない。だから今は一つだけ私の力を伝えておく」

「ぐっ……」

 早口でまくしたてられる年齢も性別も読み取れない不思議な声がそう言うと俺の頭の中に何かが流れ込んでくる。

 それは複数の波を組み合わせてその波を増幅したり減衰させたりする技術であり考え方。そしてその応用方法。


「【レゾナンス】。上手く使ってほしい」

「待て……お前は……」

 そして俺が声の主に何かを聞く前に俺の視界は急激に暗く染まっていった。



-----------------



「で、気が付いたら戻されてたんで、早速使ってみた」

「……」

「ん?おーい?」

 俺の身に何が起きたのかを一通り説明した所でミズキを見ると、ミズキがブツブツと何かを呟きつつ考え込んでいた。

 いやまあ、俺としても頭大丈夫か?って思うような現象だったけど【レゾナンス】の力そのものは確かに渡されているしなぁ。

 尤も今の俺が使える【レゾナンス】は魔力と物体を共鳴させて効果を引き出す程度で、俺が考えている魔法を習得する一助に使えそうなぐらいだけどな。


「はぁ……」

 と、ここでミズキが何かを諦めたかのように溜息を吐く。


「ん?どうした?」

「とりあえず色々と常識外れすぎてなんかもう色々と諦めただけだから安心しなさい」

「はぁ?」

 ミズキの言葉に今度は俺は呆れた様子を見せる。

 確かに俺が常識外れなのは認めるけどな。


「一応聞くけど、パンプキンはこの森の名前とか知らないわよね?」

「と言うかこの世界の事に関してはほとんど何も知らないぞ」

 俺はミズキの質問に対して素直にそう答えておく。

 実際、転生早々この森に籠ったせいでこの世界に関するアレコレはほぼミズキからの情報である。


「分かった。ならしっかりと教えておくわ」

 ミズキが真剣な顔で俺の方を向く。その目には力強い輝きが満ちている。


「まずこの湖がアキューム湖だってのは教えたわね」

「ああうん」

「そして、この森の名前は人間たちの間ではリーンの森と呼ばれている」

「ふむふむ」

「で、この世界で生きる者にとって最も尊い神様も人々の間では『リーン』と呼ばれている」

「ん?ちょっと待って……」

 俺は唐突に教えられたいくつもの情報に驚きを隠せず、情報を整理するために一度ミズキの言葉を止めようとする。

 だが、ミズキは俺の言葉を意に介さず一息で言い切る。


「待たないわ。そしてこの際だからはっきりと言っておくけど、この森がリーンの森と呼ばれているのは神様が眠っているとされる森だから。そして恐らくだけどパンプキン。貴方が出会ったのはリーン様ご本人よ」

「!!?」

 そして俺はミズキの言葉に絶句するほかなかった。

お声だけ登場リーン様

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