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第126話「南瓜と大きな木-5」

「おっ、ミズキとリーダーか」

 大地の精霊王が居た樹からサンサーラエッグ村に帰って来た俺の目に夕暮れ時だと言うのに俺の家の前でいつもの様に仮面とマントを身に付けたミズキが肩にリーダーを泊めて待っているのを見つける。


「おう、待っていて……」

 そして俺は村に帰って来た安心感から多少気を緩めつつミズキとリーダーに近づこうとして……思わず足を止める。

 何故だろうか?ミズキの後ろが大量の魔力の影響によるものだろうか陽炎のように歪んで見える。

 何と言うか……凄くヤバい気配がする。

 そして本能と直感に従って行動するのならば、今すぐにでも俺は回れ右をして逃げ出すべきだとも思う。


「あっ、いけねえ。俺ってば森の中に忘れ物を……」

 で、俺はそれに従って回れ右をして森の中に遁走しようとしたのだが……。


「パンプキン?」

「ブンブ、ブンブブ?(何処に行くつもりですか?)」

「!?」

 俺が動き出す前に普段と比べて妙に良くミズキの声が響き、リーダーの羽音に込められた意味が綺麗に伝わってくる。

 勿論、それらの言葉に含まれる異様に冷たい魔力も伝わってくる。

 これは……本気でヤバい!?


「今日はもう……」

「パンプキン。とりあえず地面に降りましょうか」

「は、はい……」

 俺はミズキとリーダーの声に含まれている魔力から本気で逃げようとするが、その前にミズキに言われて俺はゆっくりと地面に降りざるを得なくなる。


「あ、あの……ミズキ……さん?」

「何かしら?」

 ミズキの顔色を仮面越しにだが俺は窺う。

 ミズキは……笑っている。満面の笑みで。

 なのにミズキの身体からはまるで感情の高ぶりを抑えきれないかのように魔力が漏れ出て周囲の風景を歪めている。

 ああそうだ。まるでこの感じはかつて俺がアンレギラットで【オーバーバースト】の実験をやった後のミズキのような……つまり大激怒中じゃねえか!


「何で私が怒っているかは分かるわよね」

「あー……いやー……」

 ゆっくり詰め寄ってくるミズキに対して俺はゆっくりと後退して距離を保つ。

 ミズキが怒っている理由に関しては……。


「か、勝手に村の外に行った事か?」

「それも有るわねー」

 そ、それも!?

 え、えーと、他の事となると……。

 俺はミズキとの距離を保とうとするが、ミズキが詰め寄る方が早いために少しずつ距離を詰められる。


「い、幾つかの実験を勝手にやった事か!?」

「それもよねー」

 こ、これだけじゃないのか!?

 と、ここで俺の背中に壁が当たり、ミズキとリーダーによって逃げる方向を誘導されていたことに気づく。

 と言うかこれ以上の心当たりは無いぞ!?


「分からない?」

「分かりません……」

「本当に?」

「本当に」

「ブンブ?(本気ですか?)」

「本気です」

「そう……」

 ミズキの質問に対して俺は素直に返す。

 そしてミズキの笑みと漏れ出る魔力がさらに濃くなると共にリーダーの俺を見る目がまるで汚物を見るような目になる。

 え?俺ってばそこまでされるような事をした覚えは本気で無いぞ!?


「大地の精霊王様に対して粗相をした件については?」

「あ……」

 ここで俺は気づく。

 大地の精霊王(外見は幼女)に対して俺がやった数々の行為を外から見た場合はどう思われるのかと言う事に。


「ついさっき大地の精霊王様から連絡が有ったのよねぇ……寝所に乗り込んできた南瓜に色々酷い事をされた……って」

「ひっ……あっ……」

 ミズキの放つ怒気と伝わってくる魔力が更に強まり、俺は必死に後ずさりをするがすぐ後ろに壁があるために逃げる事が出来ない。


「アンタは何をやって来たのよ!このバカボチャがー!!」

「すみませにゃらばー!?」

 そして俺はミズキとリーダーの手によって心身共にこの上なく物理的にも精神的にも折られることとなった。

 最後にミズキとリーダーはこう言った。


『次に同じような事をしたら……』

『ブンブン(ぶっ刺して)』

『捩じ切るから』


 と。

 その言葉を聞いた瞬間、この身体になった影響で既に無いはずの物が捩じ切られる感触がして俺は本気で恐怖した。

 そして同時に偶然その場に通りすがった男たちも思わず股間を抑えていた。

 その気持ちは何となくだが分からないでもない。


 やがて俺は意識を失った。



■■■■■



「いやー、良い狩りだった」

「今日は祭りだナ」

「ブンブー」

 クレイヴとバルキィの二人と一緒にリーンの森へと狩りに出かけていた俺だが、夕暮れ時と言う事で狩りを切り上げると獲物を持ってサンサーラエッグ村へと戻って来ていた。

 そして今晩は近隣の遺跡調査終了の祝いを兼ねた祭りにすると言う事でミズキさんたちに許可をもらった集会所にまでやって来た俺たちが見たのは……。


 地面にへたり込んでなんかヤバい感じに全身を痙攣させている族長だった。


「……」

「……」

「……」

 俺はクレイヴとバルキィの二人とそれぞれ一度ずつ視線を交わし、長年の狩りで培ったアイコンタクトによってこの場における最良の選択を模索し、方針を決定する。

 その結果として俺たちが下した選択は……


「さて、早い所許可を貰っておくか」

「ミズキさんハ、怒らせたらいけませんかラ」

「ブンブッブー」

 俺たちは何も見なかった。という選択であった。


 まあ、族長の事だからきっと自業自得だろうし、関わらないのが本当に最良の選択だ。

オチも付きましたとさ

サンサーラエッグ村ヒエラルキー第一位は勿論ミズキ様です。

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