第11話「秋の南瓜-4」
「まず、これは分かるのよね」
そう言ってミズキが右手の掌の上に青い球体状の魔力を生み出す。
と、同時に微動だにさせていない左手の上にも同じように魔力を生み出す。
「おう。右手と左手両方に青い魔力の塊が球体の形であるな」
「ふうん。やっぱり私とは感じ方が違うみたいね」
「へ?わわっ!?」
ミズキがそう言った瞬間俺の頭に水がかかり、俺は慌てて自分の頭の上を見る。
するとそこにはミズキの手にある物と比べると小さ目の青い球体が浮かんでいた。
状況から察するにここから水が降ってきたと言う事だろうか?
「どうもパンプキンは私たち精霊や普通の魔獣たちと違って魔力を感じ取るんじゃなくて、見ているみたいね」
「ん?それって俺とミズキでは魔力の捉え方に差が有るって事か?」
「ええ、普通は魔力の揺れとか圧力とかそう言ったところで属性や量を判断するし、色なんてものは分からないわ。多分だけど貴方特有の技能ね」
「へー」
つまりこういう事か。普通の人間やミズキなんかは圧力とか熱みたいな感覚で魔力を感じ取るけど、俺は視覚で魔力を感じ取っているのか。
だから、頭の上にこっそり仕掛けられた魔力には気づかなかったと。
うーん。一長一短がありそうだけど今はまあいいか。
「で、属性ってのは?」
「魔力には属性があってそれぞれ感じ方が……パンプキンの場合は多分だけど色の違いがそうだけど、そういう物があるのよ。例えば私は水精霊だから水属性で、貴方の場合は土属性ね」
そう言ってミズキが手の上の青い魔力を自由自在に動かす。
となると俺の目には水属性が青で、土属性が緑に見えているのか。
うーん。そうなるとだ。
「もしかしてこの森に住む猪は火属性で、鳥なんかは風属性が多い?」
「ええ、大体はそんな所ね。」
なら、火属性は赤で、風属性は黄色に見えていると見てよさそうだな。
「他にも光、闇、属性が無い純粋な魔力なんかも有るわね。」
「ふむふむ」
そうなると何となくのイメージだけど光は白で闇は黒かな?で、純粋な魔力は無属性って事でたぶん無色透明。
となると基本は西洋の四大属性の考え方から俺の魔力の捉え方は影響を受けているみたいだな。
そう考えていくと黄緑とかはどうなるんだろうな?ちょっと所で無く謎な気がする。
「で、魔法って言うのはこの魔力を何かしらの方法で物理現象に転化させる事を指すの。一番簡単な魔法なら魔力をそのまま一番近しい物体に転化させることで、私の場合はさっきやった水に変化させるのが当たるわね」
「ん?」
「どうかしたの?」
俺はミズキの言葉に頭を捻る。
ミズキの説明や感覚が正しいなら俺の属性は土で、俺の魔力を単純に放出すると土……実際には塵だろうけど、とにかくそう言った物に変化するはずだ。
なのに俺の魔力を集めて放出すると……
「いやさ、ミズキにとってはこれは魔法なんだよな」
「!?」
俺はミズキに【ガストブロー】を見せる。
するとミズキは信じられない物を見たと言う顔をして大いに驚いた様子を見せる。
「これどうなってるの?」
「わ、私に聞かれても分からないわよ!?何で何の準備も無しに土属性の魔力から風属性の魔法を使えてるのよ!?あー、でもこんなことが出来るなら飛行魔法が使えている理由にもなるけど……」
うーん。どうやらミズキにもこの現象の理由は分からないらしい。
【ガストブロー】は確かに現象としては風属性。なのに俺自身の属性は土属性。謎だなぁ。
まあ、追々理由については調べるか。
「もう訳分かんない。カボチャに転生してる事と言い、本当にパンプキンは規格外ね……」
「んな事言われてもなぁ……」
ミズキが呆れた様子でそう言うが、俺としては何でこんなことになっているのか分からないのでこう返すしかない。
「で、一番簡単な魔法については分かったけど簡単じゃない魔法ってどんなの?」
「へ?ああうん。悪いけど私には詳しい事はちょっと分からないかな?元々の魔力量が大きい精霊はそう言うのは使わないし、魔獣にしたって人間並みに知能が高くないとそこまでの物は使えないから。だから、私が見た事があるのは精々森の中に入ってきた人間が使ってた物ぐらいね」
「ふむ」
なるほどな。確かに細かい技術は人間の専売特許で、必要のない精霊とかが使うイメージは無いよな。
ただ、断片的な情報だけでも聞いておけば何かしらの参考にはなるかもしれないし聞いておくか。
「その人間が使ってた物って具体的には?」
「人間は種族ごとに強い属性が違うんだけど、風属性なのに魔法で火を起こしたりとか、詠唱とか道具で魔力を違う属性に変更して自分の得意とする属性とは別の属性の魔法を使っているのは見たわね。でも詳しく何をやっていたかは分からないわよ」
「いや、それだけわかれば十分」
なるほどなー、詠唱に道具か。どっちも無いよ!
でもちょっとした属性変更なら踊りと意思で出来るみたいだし、後はどうやって望みの現象を引き起こすかか。
そこら辺は実際に人間の魔法使いに弟子入りでもするか、研究を重ねるしかないか。
「ま、私の知っていることはこれぐらいね。参考になったかしら」
「なったなった。じゃ、俺はあっちにある卵形の岩を拠点にしてるから何かあったら来てくれ」
「ええ、何かあったら良き隣人としてよろしく頼むわね」
そうしてミズキ先生の魔力・魔法講座は終わり、俺はミズキに別れを告げてアキューム湖を後にするのであった。
さて、これらの情報から何か発展すれば良いんだけどな。
ミズキ先生の魔力講座でした
02/05誤字訂正




