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南瓜の魔法使い  作者: 栗木下


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第100話「遺跡調査-3」

祝100話でございます。これからもよろしくお願いしますね。

「以上が今回の調査結果であり、これ以上については冬明けを待ってからの再調査が必要になる。か」

「まあ、期間が短かったからこの情報量はしょうがないんじゃない?」

「それは確かにな」

 俺はクレイヴとゴーリキィから件の建物に関する調査報告書を受け取ると、自宅でミズキと共にその報告書を読みつつ意見を交わしていた。


「と言うかあの短期間で良くここまで調べた物だと思うぞ」

 報告書には件の建物周辺(同様の建築様式で建てられた建物も含む)の配置を表した地図に建物の外装と建築様式及び歴史的な背景などから推測された建築年代に関する考察。加えて周辺地域に出現する魔獣や採取可能な植物・鉱石などの各種素材に関するデータなどが納められており、このデータが有れば次回以降の調査において必要な物資や人員を配備するのが非常に楽になると言えるだろう。

 なお、報告書を読む限りでは件の建物は最低でも五百年以上昔……センコ国が出来る前に存在していたと思われる文明に建てられた建物であり、建物そのものに対して劣化を抑える効果があると思しき魔法がかけられているため正確な年代は分からないとのこと。

 ちなみにこの文明については謎の天変地異によって崩壊した文明らしいが、崩壊理由は……まあ、恐らくは『陰落ち』だな。間違いない。ほぼ何も前文明の遺物は残って無い訳だし、それだけの破壊はあの破壊神程度では無理だろう。


「で、問題はこれね」

「これはなぁ……」

 で、俺とミズキはその報告書の中から同じ一文に注目する。

 そこにはこう書かれている。


『なお、地図に印を付けた建物については大量の魔力が集まって魔力溜りを形成しており、近づけば冒険者であっても軽度の魔力酔いを引き起こし、普通の人間ならば重度の魔力酔いを引き起こして死亡する可能性が存在する。そのため、この建物について調べる場合は何かしらの対策が必要になることは間違いないだろう』


 普通に行けばここで俺たちが気にするべきなのはどうやって魔力対策をするのかだが、俺とミズキにとってはそれ以上に気になる事がある。


「常人なら死にかねない濃度の魔力か……天然か人工かどっちだと思う?」

「この報告書だと分からないわね。人間たちの王都の地下には大量の魔力を収集・保管する装置が有るってアンタが言ってたから同様の設備が有ってもおかしくない。ただ、天然物なら……生まれてもおかしくは無いかも。属性までは分からないけど」

「ふうむ。となるとこの建物だけは俺たちが直接調査をした方が良いだろうな」

「そうね。その方が良いかもしれないわ」

 と言うわけで俺とミズキが気にしているのはこの魔力溜りが人工か天然かであると同時に天然であるならばここから精霊が産まれるかである。

 なお、俺は体内に高濃度の魔力を保有しているし、ミズキは精霊なので余程……それこそリーン様のような高位存在が魔力放出をしたりでもしない限りは魔力酔いとはまず無縁であるはずのため、基本的には対策は不要である。


「ま、とりあえずは冬明けまでに必要な物を揃えて、冬が明けたらこの建物の周辺以外を調べればいいだろう。件の建物に関してはそれからでいい」

「それもそうね」

 と言うわけで結論が出た所でこの件についての話はこれで終わりとして、俺は別の羊皮紙をミズキの前に出す。


「ああそうだ。ミズキに聞きたかったんだけど、村の開発計画ってこんな感じなら大丈夫か?」

「えーと、ちょっと待ってね」

 羊皮紙にはサンサーラエッグ村を今後どのような形で広げていくかが記載されている。

 で、それを何故ミズキに見せるかと言えば村の発展と言うのはサンサーラエッグ村の立地上、どうしても森を切り開くことになるためであり、森を切り開くと言うのはそのまま自然を壊す行為であるため精霊であるミズキに相談してどこまでなら大丈夫かを判断してもらう必要があるのである。

 加えて言うとリーンの森内部に関しては無秩序に破壊を繰り返した場合は多分ミズキだけじゃなくてリーン様からもお叱りを受けることになるので、その辺の予防線を張る意味でもミズキの意見は必須である。


「うーん。問題は無いけど……」

「けど?」

「この中央通りに沿って灰硬樹を植えるってのは何?アンタの事だから何かしらの意味が有るんだろうけど、正直言って景観としては微妙よ?」

「ああそれか。灰硬樹を植える理由としてはこれがそうだな」

 俺はミズキの言葉に合わせて別の羊皮紙を取り出す。

 そこに書いてあるのは灰硬樹製のナイフや盾(勿論ハンティングビーの蜜蝋塗装済み)、それにリーンの森で採れる植物や鉱石を使った軽量且つ頑強な装備類を求めるクヌキ伯爵からの依頼である。

 と言うわけで安定供給を計るために一部の植物については村の中で育てることを考え、その結果が街路樹を兼ねた植樹である。

 なお、中央通りと言うのは俺たちが今居る卵岩からアキューム湖に向かってまっすぐ伸ばす予定の道の事であり、今ある水路に沿って作られる形になるつもりである。

 そして計画上ではサンサーラエッグ村はだいぶ細長い感じの村にする予定。


「ふうん。でも何で灰硬樹製のナイフなのかしら?」

「魔力を込めない限りは危険性が低く、魔力を込めれば並の防具なら簡単に貫けるからだろうな。おまけにその気になれば灰硬樹を使う部分は刃の部分だけでいいから枝一本でもナイフ一本が作れるし」

 なお、灰硬樹製のナイフと言うのは魔力を込めると言う一般的にはほぼ隠密が不可能になる行為を挟まなければ十分な切れ味がないために俺クラスに習熟してなければ暗殺には使えず、逆にある程度扱いに習熟していれば鉄製の板金鎧で胸部を守られていても真正面から心臓を刺し貫けるために騎士なんかが接近戦で使うのに向いた武器と言えるだろう。

 そういう訳でクヌキ伯爵から依頼は出されているのだが、安定供給は計っても大量生産をする気は無かったりする。だって、元々この武器自体扱える人間が限られる上に少数生産の方が管理もし易ければ、希少性も高めやすい訳だし。


「ま、問題は無いからこれで進めて良いわよ」

「了解。それじゃあこれで進めさせてもらう」

 なお、当計画は割と何年もかけて進める予定の物であるため、この図面通りの物が出来上がるのは当分先の話である。

 ま、気楽にのんびりとやっていくべき仕事だからペースを緩めることは有っても速めることは無いだろうな。たぶん。

色々と進展はございます


05/04誤字訂正

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