第十三話 パフェ
「アレン!報酬を貰いにいくわよ!」
昼食をすませるとルナが言った。ハルナのおかげで二人は退院し、ホテルに戻っていた。
「報酬?あぁ、依頼のやつか!」
アレンは報酬の事をすっかり忘れていた。
「そうよ。100万Aよ!」
「確に100万A分はある依頼だったなι」
「さあ、行くわよ!」
二人は依頼主の家に向かった。
†††††
「どうもありがとうございました。」
「いえいえ、それでは。」
アレンとルナは報酬をもらい、二人で通りを歩いていた。
「必要な物を揃えましょ!」
ルナがそう言うので店を探しながらうろうろする。アレンの眼にひとつの看板が映った。
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長旅の食糧はここで!
保存の効く肉、魚、野菜、何でもあります!
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「ルナ、ここでいいんじゃ無いか?」
「・・・」
アレンは話しかけたが返事は無い。顔を覗くと何かに目を奪われている。
「?」
ルナの視線の先を見るとそこには喫茶店。その中のあるテーブルに視線は注がれていた。
「こちらが特大パフェになります。」
超巨大なパフェを二人がかりで持って来るウエイトレス。そして頼んだ事を後悔している三人組の女の子。ルナの視線をもう一度確かめる。確に見ている。超巨大なパフェを。
「ルナ?」
アレンはもう一度呼んだ。
「!な、なに?」
「食べたい?」
「!な、なんの事・・・」
「視線が釘付けだよ。パフェに。」
「・・・///」
ルナは無言で頷いた。
「・・・食べる?」
「いいの?」
「いいんじゃない?100万あるし。」
「で、でも無駄使いは・・・」
遠慮するルナにアレンがもう一度聞く。
「食べる?」
「・・・うん!」
ルナは子供の様な顔で笑った。
(・・・かわいい)
アレンはルナの笑顔に見とれた。
(普段はなんだかんだうるさいけど、笑うとかわいいかも・・・)
「どうかした?」
「えっ?何でもない!」
アレンは突然ルナに聞かれて焦った。
「?」
ルナは首を傾げている。
「よ、よし!じゃあ行くか。」
「うん!」
アレンとルナは喫茶店へと入っていった。
†††††
「お待たせしました。こちらが特大パフェになります。」
本日二回目のパフェに店内の視線は集まっている。
「♪」
ルナは嬉しそうにパフェをながめている。
「ではごゆっくりどうぞ。」
ウエイトレスはそういって去っていく。アレンは改めてそのパフェの巨大さを確かめた。
(・・・でかい)
そのパフェは人ひとり分程あった。
「いただきま〜す♪」
ルナはにこにこしながらパフェを食べ始めた。
-3分後-
ルナは最後の一口を口に運ぶ。今や店内の全ての人がこっちを見ていた。
「ごちそうさまでした。」
ルナはスプーンを置いた。と、同時に店内から歓声が上がった。かわいい顔した女の子が自分よりも大きいかもしれないパフェを3分で完食したのだ。当然である。
「・・・」
アレンは言葉を失った。
「どうかした?」
ルナがにこにこしながら聞いた。
「えっ?いや、よく食べるな〜って。さっき昼飯食ったばっかりなのに・・・」
「甘いものは別腹なの♪」
ルナはあっさりと言った。
(別腹なの♪って・・・ιそもそも自分よりでかいもん食って大丈夫なのか?てか、食った分の体積は一体どこに・・・)
アレンがそんなことを考えていると、ウエイトレスが近付いてきた。
「こちらが代金になります。」
ウエイトレスはそういってレシートを置いた。アレンはそれを拾って見た。
「?あれ、‐5万A?」
店長が近付いてきて言った。
「特大パフェは一杯2万Aなんだが、30分以内に完食した場合は5万Aプレゼントだ。」
「そうなんですか?」
ルナは聞いた。
「おう。お嬢ちゃんには負けたよ。まさか3分で完食するとは・・・」
「じゃあもう2杯!」
店長の顔から笑顔が消しとんだ。
(ご愁傷様です)
アレンは心の中で呟いた。この日、この喫茶店は経済的に大打撃。この日から、一杯2万Aの特大パフェはメニューから姿を消した。そして、ルナは後々この喫茶店の伝説として語り継がれることになる。
†††††
「得したわね!パフェを食べるだけで15万よ!」
ルナは嬉しそうに笑った。
「『食べるだけ』ねぇ・・・ι」
アレンは呆れた。二人は喫茶店を出て、必要な物を買い揃え、ぶらぶらと通りを歩いていた。
「そろそろ帰りましょうか。」
「そうだな。」
二人はホテルに向かった。
†††††
「おっはよ〜〜ございま〜す!!!」
翌朝、ハルナがやけに高いテンションでホテルにきた。
「お、おはよう。」
アレンは高いテンションに圧倒されながらもちゃんと返事をした。
「あら、ハルナおはよう。
」
「おはようございます〜。」
ルナは台所から出てきた。今日の食事はルナが作る番だ。再びルナは台所に戻った。
「それよりアレンさん・・・」
「ん?」
ハルナはヒソヒソと声を潜めながらアレンに近寄った。
「見ましたよ〜。二人共ラブラブですね〜!」
「?」
「とぼけたってダメですよ〜、昨日二人でデートしてるところを見ましたから!」
「あ、あれはただ買い物に・・・」
「とってもいい雰囲気でしたよ。」
「いや、だから・・・」
「ルナさんとっても幸せそうでしたよ!きっとアレンさん一緒にいるのが嬉しいんですね〜!」
嬉しそうだったのはパフェのせいだ。アレンがそう言おうとした時、
「二人でコソコソとなに話してるの?」
台所からルナが言った。
「何でもないですよ〜。」
ハルナはとぼけたように言った。
「あっ、そう言えば知ってますか?」
「なにを?」
「昨日ですね〜、通りの喫茶店の特大パフェ3杯を10分で完食した人がいるらしいですよ!」
「!」
「凄いですよね〜!一体どんな胃袋してるんですかね?きっと熊みたいな体格してますよ!」
「・・・」
「・・・」
「・・・あれ?どうしたんですか二人共?」
-バン!!!-
荒々しくテーブルに朝食が置かれる。
「朝ごはん出来たわよ。」
「・・・」
三人は気まずい空気の中で朝食を食べた。
どうもぺたです。最近更新が遅くてすみません!出来るだけ頑張ります!さて、今回はのほほんとしてましたね。次回から旅を再開すると思います。ハルナは無駄に元気なんでどうなる事やら。次回も付き合っていただければ幸いです。