第十一話 作戦実行
駆け出したアレンは振り下ろされた右腕をきっちりみきった。
「あれ?」
しかし思う用に体が動かない。
「くっ!」
アレンはギリギリでかわした。アレンの左肩が裂ける。
(あぶねぇ〜!・・・くそっ、足が言うことをきかねえ!)
「しっかりしろよ!」
アレンは自分の足に文句を言いながら剣を構えた。
†††††
ルナは剣にありったけの魔力を込めていた。
(もうちょっと頑張って!)
アレンの作戦とはこうだった。
「なあ、その剣は魔力を蓄えられるんだろ?」
「ちょっと違うわ。魔力を込めると、どれか一つの属性の魔元素を刀身に集めるの。そして、集めた魔元素の属性に応じて刀身が変化するみたい。」
「魔元素ってのは魔法の元だよな?じゃあさ、その集めた魔元素を魔法に構成しなおせないかな?」
「多分出来るけど・・・」
「よし、じゃあ聞いてくれ!アイツの皮膚は頑丈で魔法も効かないし、普通の刃物じゃ傷も付けられない。」
「じゃあダメじゃない!」
「聞けって!確に普通の剣じゃ、傷も付けられない。けど、この剣ならなんとか傷を付けられる。アイツは固いのは皮膚だけで、中身は普通のオーガと変わらない。」
「それで、どうするの?」
「この剣で傷を付けて、その傷にルナの剣を突き刺す。そして内側から魔法で吹き飛ばす。」
「だから剣に集めた魔元素を魔法に構成しなおせないか聞いたのね。」
「そういうこと。」
「でもアイツを一撃で吹き飛ばすほどの魔力を剣に込めるのは時間かかるわ!」
「大丈夫!俺が時間を稼ぐから。な?いけそうだろ?」
という事だった。
「もう少し・・・」
ルナは魔力を込め続ける。
†††††
「おっと!」
アレンは相変わらずフラフラしながらもなんとか攻撃をかわし続けていた。
(どこに剣を突き刺せばいいかな・・・やっぱり頭か心臓だよな・・・)
突き刺すべき場所は決まっている。しかし
(高すぎだろ・・・)
通常のオーガの三倍、つまりアレンの六倍は大きいこのオーガの頭も心臓もアレンにとって遥か上空にある。
(どーすっかな・・・)
アレンは考えている。
(アイツが腕を振り下ろした時に腕を駆け上がるしかなさそうだ)
しばらく考えたアレンはこの結論に至った。その時
「アレン!準備出来たわよ!」
ルナが叫んだ。
(よし、勝負だ!)
アレンはルナに頷くと剣を構え、オーガの腕を見た。左腕が振り上げられる。
「馬鹿!どこ見てんのよ!」
突然ルナが叫んだ。
「がはっ!?」
アレンは前から衝撃を受けて吹き飛んだ。
(蹴・・・り・・・!)
オーガの右足を受けて吹き飛んだアレンはそのまま地面に叩き付けられた。
「アレン!大丈夫!?」
ルナが呼ぶが返事が無い。動かないアレンに左腕が振り下ろされる。
「アレン!!!」
左腕は地面まで振り下ろされた。
「・・・そんな!」
ルナは膝をついた。オーガの左腕がゆっくりと持ち上げられた。ルナがもうダメだと思ったとき、左腕の下からアレンがユラリと立ち上がった。
「アレン!」
ルナが呼び掛けるがやはり返事は無い。オーガはアレンが生きていた事に驚いたのか一瞬固まっていたがすぐにまた左腕を振り下ろした。しかし、左腕が再び地面まで届く事は無かった。
「うそ・・・」
ルナは眼を疑った。ルナの眼に写ったのは振り下ろされた左腕、そしてそれを左腕一本で受け止めるアレンの姿だった。
「・・・」
アレンは何も言わず、微動だにしない。
(どうしたのかしら・・・)
ルナがそう思って見ていると、アレンは落としていた剣を拾い、今だ受け止めたままのオーガの左腕を無造作に斬り落とした。
「!!!」
ルナは驚いて声も出ない。辺りにオーガの叫び声が響く。アレンはいつもと違う声でルナに言った。
「剣を貸せ。」
ルナは突然言われて驚いたが、素直剣をアレンの方に投げた。それをアレンは見向きもせずに受け取ると、オーガに向かって跳んだ。アレンは一跳びでオーガの胸の辺りまで跳んだ。
「・・・」
アレンは無言で金色の剣を振った。オーガの胸から血が吹き出す。そして血が吹き出している傷口にルナの短剣を深く突き刺した。
「後はお前の仕事だ。」
アレンは着地すると唖然としているルナに言った。
「!」
我に帰ったルナは呪文を詠唱し始めた。
「闇に輝く星の光よ、ここに集いて闇を打ち砕く十字架となれ。
-スターダストクロス-」
オーガは輝く十字架によって内側から吹き飛んだ。暗闇に月と星と十字架だけが光輝いていた。
-ドサッ-
ルナは物音がした方を見た。
「アレン!」
そこにはアレンが倒れていた。ルナはすぐに駆け寄った。
「アレン!ちょっとしっかりしなさいよ!」
「・・・」
「馬鹿やってないで早く眼をあけなさいよ!」
「・・・」
「アレン!!!」
「・・・」
「死なないって約束したじゃない・・・!」
「・・・スー。」
「アレ・・・えっ?」
「スー、スー。」
「・・・寝てる。」
アレンは寝息をたてながらぐっすりと眠っている。
「もう!人に心配させといて寝息たてて寝てるなんて!」
ルナは恥ずかしくなって悪態をついた。
「・・・」
アレンは起きそうに無い。ルナはアレンの寝顔を見て呟いた。
「・・・おつかれさま。」
ルナは夜空を見上げて微笑んだ。
どうもぺたです。今回も読んでいただいてありがとうございます。ようやくネタが思い付きました。書いてる途中で自分自身訳がわからなくなりましたι(オイ)でもどうにかなったと思います(多分ι)さて、今回アレンはちょいとおかしくなりましたね。あれは後々の展開に繋げたいと思います。かなり後になると思いますがιそれでは次回も付き合っていただければ幸いです。