変わらない朝
今日は、変な夢を見た。
私は暗闇に立っていて、周りの景色は全く見えない。
ここは、何処?
私は、誰?
なんにも、分からない・・・・・・・・。
目を覚ますと、一般人だった私には似つかわしくない豪華な部屋が映り込む。
ベッド脇の小窓からは、城下に広がる街と、地元では見られなかったコバルトブルーの海が、輝く太陽の光に照らされ、きらきらと光って見えた。
私は思わず目を細め、けだるい体をゆっくりと起こす。
元は目覚めの良い方だったのだが、ここに来てからはどうも調子が悪い。目覚めたくない・・・・・・という内心での願いが、私の体をそうさせているのだろう。
やっと立ち上がると、コンコン、と小気味よい音がした。
私はドアまで歩き、丁寧に磨かれた金のドアノブを握る。ドアを開けると、白いワンピースのような侍女服を着た茶髪緑目で髪を下の方で結んでいる女性がいた。
「おはようございます、レミ様。今日は良い天気ですね」
にっこりと笑う彼女ーーーーーーロミーナ=アリベルティの顔を見て、不可解な夢を見て曇っていた私の心が、少しだけ晴れた。
「そうね。------今日は誰と食事なの?」
「はい。今日は皇帝陛下と宰相様と、それから皇太后様と昼食会です」
「庭園で?」
「ええ」
よかった。堅苦しくきらびやかな城の中にいるより、たくさんの植物に囲まれていた方がよっぽど落ち着く。だから私は、ロミーナと共に庭園で過ごすのを常としている。皇帝ーーーーーーー私の夫も、共に何かをするときはつねにここを選んでくれるのだ。
「朝食を、お持ちしますね」
ロミーナはそういうと、足早に部屋を出て行った。
今日もーーーーいつもと変わらない。
私は、レミ=エリザベータ・ラミレス。ーーーーーー私は、ラミレス帝国第83代皇帝、マルセル=オクタビアン・ラミレスの妻。
そしてーーーーーー元OL、玉岸怜美である。