ChatGPT版「旅の終わりに、杯を」
復帰祝いの席は、思ったよりも賑やかだった。
粗末な木造の酒場の一角に、彼らは円卓を囲んでいた。
三ヶ月ぶりに鎧を身につけたガルドは、ぎこちなく笑いながら杯を傾けている。肩の古傷はまだ完全ではないはずだが、それを感じさせないよう、背筋を伸ばしていた。
「いやあ、やっとだな。待ちくたびれたぞ、ガルド」
魔法使いの青年が軽口を叩く。
その隣で、僧侶の女性――リィナは微笑みながらも、杯に口をつけることはなかった。
リーダーのアレンは、その様子を静かに見ていた。
三ヶ月前。
偶然立ち寄ったこの街で、モンスターの大行進に遭遇し、防衛戦に加わった。
勝利はしたが代償は大きく、ガルドは町娘を庇って深手を負った。そのまま彼は動けなくなり、パーティーは街に足止めされた。
病室に通っていた町娘の姿を、アレンは何度も見ている。
彼女は何も語らなかったが、ガルドの表情が少しずつ柔らいでいくのを、リーダーは見逃さなかった。
そして、もうひとつ。
リィナの身体の変化も。
彼女は隠しているつもりだったのだろう。
だが、回復魔法の微妙な調整、立ちくらみを誤魔化す癖、そして何より、腹部を無意識に庇う仕草。
アレンには、それが新しい命の兆しであることがわかっていた。
魔法使いの青年――セイルは、まだ気づいていない。
あるいは、気づかないふりをしているだけかもしれない。
「……みんな」
アレンは杯を置いた。
酒場の喧騒の中で、その声は不思議とよく通った。
「今日、この祝いの場で、伝えておきたいことがある」
一瞬、空気が張りつめる。
「俺たちは――この街を出る」
ガルドが目を見開いた。
リィナの肩がわずかに震え、セイルは言葉を失ったままアレンを見る。
「明日だ。俺たちは旅を終える。少なくとも、この四人での冒険は、ここまでだ」
沈黙。
最初に口を開いたのは、ガルドだった。
「……俺は、この街に残る」
その声は、迷いがなかった。
町娘の顔が、皆の脳裏に浮かんだ。
リィナはしばらく俯いたまま、やがて静かに言った。
「私も……ここに残ります」
セイルがはっとして彼女を見る。
その視線に、リィナは小さく頷いた。
「言わなきゃいけないことがあるの。でも、それは……ここで生きると決めてから」
セイルは息を呑み、そして、ゆっくりと微笑んだ。
「……なら、俺もだ」
アレンはそれを聞いて、ようやく肩の力を抜いた。
「そうだと思ってた」
彼は立ち上がり、最後に杯を掲げる。
「これは、復帰祝いであり――別れの宴だ。
俺たちは、それぞれの場所で、生きる」
杯が触れ合い、乾いた音がした。
冒険は終わる。
だが、守った街で、新しい物語が始まろうとしていた。




