『異世界転生して占い師やってたら…知らず知らずのうちに第一王子と平民の女の子を結婚させちゃった!?』〜王族直属の占い師は、叶わぬスローライフ希望で…〜
「なぜあの様な者が…?」
「陛下も、アレス殿も御乱心なされたのか?」
「それでは私の仕事は一体どうなる?」
ヒソヒソと聞こえる噂話、それは止まることを知らない。
ガチガチになって手足を同時に動かしていないか、とても心配だ。
「それでは其方を王族直属の占い師として任命する」
「…はっ!ありがたき幸せでございます」
真っ赤な嘘が、震える口からペラペラと出てきてくれた。
その最中も、ダラダラと頰を伝う汗がメイクを崩してしまわないか心配になる。
けれど今は、そんな事言ってられない。
そうして私、ライラは王族直属初の占い師として任命された。
……どうしてこうなった!?
いやあ、今日もいい天気みたいだ…見えないんだけどね。
ここは分厚い天幕の中、人の目も太陽の光も届かない。
唯一の明かりは火が灯された蝋燭と、それを反射する目の前の…水晶玉だけだ。
キャンプに水晶玉?って思う人がいるかもしれないけど…違う!
これは私の仕事、占い師の仕事場だ。
それで、占いって当たるの?って思う人もいるかもしれない。
確かに百発百中なんて人…いないよ、私以外ね!
…まあ修行の成果じゃなくて、生まれた時からある能力なんだけどさ。
生まれ持った絶対当たる占い能力…そして誰にも言ってないけど、実は前世の記憶を持っていた。
前世の私は、メチャクチャ働いている記憶ばっかり。
そして仕事場で目の前が真っ暗になる様な感じで記憶が終わっている。
…悲しい事に、多分過労で現世とサヨナラした感じだ。
それで気づいた時には…
「おぎゃあ!おぎゃあ!」
異世界にいた。
この時は良く分かってなかったんだけどね。
それでスクスク育ち…途中で占いの能力に気づいて、弟子入り。
占いの技術、というよりは喋りや運営の技術の方をを重点的に教えてもらって、今は独立し…立派な占い師の一員だ!
将来の夢は…自分の城である、占いの店舗を持つこと!
それを目指して今日も、開店の準備をしていたのだ。
「あの、お店は空いているだろうか?」
「はいっ、空いてます!」
今はカフェにある様な黒板に描かれた看板みたいな物を設置してただけだ。
だからお客さんは、誰でもウェルカム!
…例えそれが、帽子を目深に被った怪しげなお兄さんでもね!
そうして彼を天幕の中へと案内しながら、中へと入って行く。
なんだけど…
「…何か、顔に付いているだろうか?」
「っ…いえ、失礼致しました。 どうぞ、中へ…」
人の目が無くなったからか、帽子を取った彼は…かなりのイケメンだった。
シュッとした顔立ちに少し焼けた肌、燃える様な赤髪に…彫刻の様な美しいパーツの配置、まるでモデルみたいだ。
軽い変装までしているのは、本当にお忍びの芸能人みたいだけど。
…まあこの世界には雑誌とか無いし、モデルなんてありえないんだけどさ。
でも本当に、今まで出会った中で一番かもしれない。
「こんな…雰囲気なのか?」
「はい、他の場所も似た様な雰囲気かと。
ちなみに占い師は初めてですか?」
「ああ、初めてで勝手が分からない…よろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いします。
どうぞそちらの椅子へお掛け下さい」
そうして彼を椅子へと促し、机を挟んだ向かいに私は座る。
机には黒いテーブルクロスがかけられ、紫の小さな座布団の上には大きな水晶玉が乗っていた。
どうやら初めての彼は、この天幕内が気になるみたいでキョロキョロと見回していた。
少し微笑ましい気持ちになりながら、
「まずは自己紹介を…私は占い師のライラと申します。
それでは、早速占いを始めましょうか」
「あ、ああ」
「では人生相談か…恋愛相談か、どちらに致しましょう?
いつもの質問を繰り出す。
そうすると、彼は急にモジモジとしだした。
う〜ん…言いにくいならと、
「それでは、恋愛相談でよろしいでしょうか?」
「まだ、何も言ってないではないか!」
出した助け船なんだけど、彼はガタリを椅子を倒す勢いで立ち上がる。
隠そうとしたのかもしれないけど、むしろその行動で強調されてしまっていた。
これは、合ってる…かな?多分。
そう彼が着ているもの…それは学生服。
しかも、どうやら最高難易度のカイゲル学園のもの。
初代国王の名前がついたその学園はこの国で…どころか大陸でもトップの学園、国力の象徴だ。
とはいえ、それは別に占いには関係ない…ちょっとはあるけどね。
「失礼致しました…では人生相談でしょうか」
「……秘密は守られるのだろうな?」
「ええ、大丈夫ですよ。
しっかり防音の魔法もかけておりますし、他の人の目もございません」
そこまで言ったら、どうやら安心したみたいだ。
ふう、と彼は一息つくと、
「…恋愛相談で頼む」
「かしこまりました」
ちゃんと当たっていたみたいだ。
…まだ能力は使ってないんだけどね。
彼の様な10代の男女、もし抱えてくるのが人生の悩みなら先生や親など身近な人へ相談するはず。
だから彼らが占い師を頼る時は『十中八九恋愛相談に来る』というのが師匠からの学びだ。
流石あのスパルタ師匠、頼りになるぜ!
「それでお相手の方とは…どの様な関係を目指しているのでしょうか?」
「それは無論………ヶっこんだ」
「なるほど、分かりました」
蚊の鳴くような声で、その要望が表に出てくる。
別に恥ずかしがる事ないだろうに…ってそれは無理な話か。
10代の恋愛なんて、振られたら一大事って感じだしね。
……今のセリフにものすごい年齢を感じた、肉体年齢はまだピチピチの22歳なのに…。
前世も合わせたら4、50代だから、こういう話題だと少し微笑ましさを感じてしまった。
…これ以上自傷するのはやめておこう。
自分の心のスイッチを切り替え、
「では、今のお相手さんとの関係はどれくらいでしょう?」
「…見ているだけで、喋ったことはない」
「なるほど、では…一目惚れということでしょうか?」
そう現状を言葉にすると、彼の頰がかぁっと静かに赤く染まる。
…きっと蝋燭の明かりに照らされてるだけだし、見逃してあげるのが大人の余裕だ。
それはともかく、今回の依頼はまだ喋ったことのない男女を結婚まで導くのが仕事という事かな?
…まあまあな、無茶振りをしてくるなあ。
答えに辿り着いた時頭がズキンと痛くなった。
これは、前世の仕事で何度も無茶振りされたトラウマからだろうか。
でも受けよう、私はこの痛みでスイッチが入った。
まあ私は?百発百中の占い師なのだし?行けるでしょ!
…これが占い師の仕事かは、議論の余地があるけども。
「では占いを始めましょう」
「ん? 今までのは占いではn……!?」
そんな彼の言葉は途中で止まった。
事前に言わないで驚かしてしまったのは、悪いとは思っている。
でも私が占いの能力を使うと…自然とこうなってしまうのだ。
バサバサと風にたなびく様に動くのは卒業記念に師匠から贈られたローブ。
緑の生地にツタが這う様な意匠の施されたそれが動くと、まるで生命の様な躍動感を感じる。
そうした状態になれば、
「あなたの想い人は…黒髪の小柄な方ですか?」
「あ、ああ。…凄いなアンタ!」
全ての情報は思いのままだ!
その噂の彼女の映像は、しっかりと水晶の中に映像として映されている。
ちなみにこの能力の映像が見えるのは私だけではあるんだけど、伝えるのがダメとかそういうデメリットはない。
…まあ師匠からは、
「もうそれは…占いの域を超えとるやろ?」
と呆れながら言われてしまったけども。
…まあ、良いのだ。
千里眼とかの能力って言うより、占い師っていう方が人来るしさ。
何より千里眼って呼ぶと変な事に巻き込まれそうだしね。
私はあくまで、占いで稼いでスローライフを満喫したいだけなのだから!
「じゃあまずは…」
「まずは…?」
「その子に挨拶からしましょうか?」
…でもまだ占いは要らないんだけども。
どれだけ占っても、流石に『喋ったことのない男子からの告白』を成功させることは出来ないのだ。
なんだけど、
「それをやったら…目立つんじゃないか?」
彼はそう言いながらモジモジとしている…恥ずかしいのか。
まあそれもそっか、普段喋ってない子とだけ挨拶を始めたら周りに揶揄われそうだしね。
「…であればいっそ、全員に挨拶してしまいましょうか。
そうすれば他の人から目立ちはしないはずです」
「だが…それだと、彼女に伝わらないのでは?」
「彼女と話す時だけ、少し声のトーンを上げてみては?
彼女も他の人とは違う扱いをされてる!と思うかもしれませんし、他の人にツッコまれても誤魔化せるでしょう」
「なるほどなぁ…」
ちょっと彼への返答がおざなりになってきた気もするけど、大丈夫かな?
正直恋愛相談ってある程度仲がいい男女の背中を押したり、憧れの人との相性を調べたりするだけ。
だから、こういう初対面の男女をくっつけた経験はないのだ。
…でも彼には結構刺さったみたい。
なんか妙に沁みた様な顔をしている。
そして、
「感謝する! 吉報を待っててくれ!!」
「あっ……行っちゃった」
ばっと天幕を豪快の捲り上げて、走って行った。
これで、終わり?
そういえばお金は、
「……なっ!?」
机の上には1枚のピカピカと光り輝く金貨が置かれていた。
この大盤振る舞い…間違いなく貴族じゃん。
何となく雰囲気から察してたけど!
占いの料金は銀貨一枚なのにさ…まあ、いっか。
次来た時には、サービスしてあげるとしよう。
そうして彼は快晴の日も、
「ライラ!上手くいったぞ!
今度は彼女の好きな食べ物を教えてくれ!」
「今、流行りのチョコレートです。
それも甘すぎるものではなく、少しビターな物を好まれる様です」
風の強い雨の日も、
「ライラ!今度は彼女と出かけるなら、どこへ誘うべきか教えてくれ!」
「…どうやら彼女は絵を好まれる様です。
なので来週から国立美術館で行われる、カラ・フトの作品展に行ってみては?」
「ライラ! ライラ! …………」
彼女の為に何回もこの天幕へと訪れる。
…サービスするとは言ったけど!
いや、彼には言ってなかったわ!
とはいえほぼ毎週来て、惚気を聞かされる身にもなって欲しい。
その都度ちゃんと払ってくれるから、上客ではあるんだけどさ…。
そう、聞かされているのは惚気…ということで彼らは上手くいっていた。
彼の多少強引さも感じる行動力と、私から相手の好みをドンピシャで当てる能力が合わさった結果だ。
そうしてつい先日彼らは学園を卒業し、予定通りならもう告白してる…はず。
今日の予約では、彼がその結果を伝えに来てくれるらしい。
となんだかんだ文句を言いながらも、緊張する…。
こちらは聞くだけだけど、彼とは約1年間ほぼ毎週顔を合わせて相談し続けた。
それの結果が玉砕だと……あまりにも悲しい結末。
でも今の私には、成功していますように…と祈ることしかできないのだ。
こればかりは占いでどうにもならない。
「ライラ師匠、入りますよ!」
「あっ、どうぞ〜」
聞き覚えのある声と、そのヘンテコな呼び方、該当者は彼しかいない。
天幕が捲り上げられ眩しい日光と共に、
「こんにちは師匠!」
「お邪魔します…わあ」
彼と…1人の女性が入ってきた。
黒髪で小柄な彼女は、物珍しそうに天幕内をキョロキョロと見回している。
どうやら占い師の店は初めてみたいだ。
でも私は彼女のことを知っている、一方的に…だけど。
別に有名人って訳じゃなく、
「どうやら、上手くいった様ですね」
「はいっ!師匠のお陰です!」
彼の想い人だから。
「えっと…初めまして!カリンと申します」
「ご丁寧にありがとうございます。
私はライラ、占い師をしております」
そうして挨拶を交わすけど、私からしたらあんまり初対面っていう感じはしない。
だって、毎週の様に占いをする時に顔を見ちゃってるし。
もはや芸能人とイベントで会った時の、本当にいたんだ…っていう感動が近かった。
…でも冷静になると、あんまり彼女からはよく見えてないのかな?
だって勝手に心を覗く様な真似をして、好みを暴いていってしまったし…。
そんな事を謝罪を交えながら遠回しに聞いてみると、
「全然気にしてないので大丈夫ですよ!
それより、なんであんなに当たるんですか!?」
文句を言われるどころか、机に身を乗り出すぐらいに興味津々だ。
…良い子過ぎない?
チョロい私はそれだけ好きになりそう…。
だけども、
「これは、企業秘密ですのでご容赦を。
ですが、今後は是非ともカリンさんもご贔屓に…。
恋愛相談以外も受け付けておりますゆえ」
これは秘密だ。
そもそも超能力とかその親戚みたいなものだし、人に教えても…ね?
「それでお二人は、ご婚約を?」
そして私は話を変えるため、彼らが来訪した理由へ舵を切る。
それを聞いた2人は嬉しそうに笑みを溢すが、
「そうなんですよ師匠!
ただ反対する者が多く、中々進まずに…」
「…しょうがない、よね」
少しずつどんよりと沈んできてしまう。
…こちらから振っておいてなんだけど、あんまり良い話題じゃなかったみたいだ。
まあ、しょうがないのかな。
だって、貴族同士って色々しがらみがありそうだしね。
それに大多数の人は、その家の現当主が選んだ相手と婚約するのが普通。
ただ2人の感情というよりは、それが家の利益に繋がるかどうかで選ばれる。
だから恋愛結婚なんて、庶民以外だと相当珍しいものに分類されると思う。
「アレス君は、次期国王で私は平民だもんね…」
そっか、次期国王と平民ならしょうがないよね………は?
いやいやいや、流石に聞き間違い…だよね?
「次期…国…王?」
「あれ、アレス君言ってなかったの?」
「ああ〜、言ってなかった…かも?
でも、師匠なら占いで知ってるんじゃないか?」
「それもそうだね」
…全く知りませんでした。
いや知ろうと思えば知れたんだけど、貴族の事を掘るのはあんまりよろしくない。
例えば…誰にも言わない秘密みたいなものも暴けてしまうし、そんな事を知ったらどんな目に遭うか分からない。
最悪、他の貴族の弱みを握る為に脅されて占いする生活になる可能性も……。
だから私は必要な情報だけ、お客さんが求めるものだけ占いをしてきた。
そんな訳でどう見ても貴族な彼が訪ねてきたけど、名前を明かさないのは秘密にしたいから…だと推測してやらなかったのだ。
その結果…まさかこの国の王族、しかも第一王子だったとは。
……あれ、やばくない?
私の占いで、第一王子と平民の女の子をくっつけちゃったんだけど…
「…ちなみに、カリンさんは次期第一王妃になるのでしょうか?」
「えっと、アレス君が貴族の女の子を娶らなければ?」
「俺は、カリン以外誰も要らない!」
「アレス君…」
「カリン…」
……終わ…ったああ!
それは…ヤバいよ、アレス君ッッ!
キス直前まで顔を近づけてる場合じゃない大問題ッッ!!
そうなったら私…大罪人?
多分アレス君は占いがなければ、積極的なアプローチをしても空振ってたかもしれない。
彼女も相手が王子というのは知っていただろうし、断りづらいかもしれないけど前向きには考えないだろう。
どれだけの人の目に監視され、妬み嫉みをぶつけられるか分からないし。
それを周りの貴族の子も感じたら、少し治める方向で動くはず。
それを…平民の私が唆して、平民と結婚させた。
ええ〜……斬首です。
じゃあ、今のうちに逃げ…
「でも結婚の条件として…その占い師さんに王族直属で働いてもらうなら、というのが出されたんです」
「……んっ?」
ちょっと待って。
…いやいやいや、絶対やばいじゃん!
そんなところ行ったら、貴族の人達の手でお陀仏コースだよ!
「え〜、ありがたいお誘いですが…」
「お願いしますよ、師匠!!お給料いっぱい出すんでッ!!」
「私からも…ライラさん!!王宮には美味しいものもいっぱいありますから!!」
そろりと逃げようとした私は、ガシッと両腕を掴まれる。
逃げることは許されっ…ない。
男のアレス君はともかく、私よりも身長が低いはずのカリンちゃんも力ッ、強すぎッ!
じゃあ、暴れたら…なんてやれない。
だってアレス君は王族、爪で間違えて引っ掻いてしまうだけで極刑間違いなしだ。
そして諦めた私は肩を落とし、
「…行きます」
嬉しそうなアレス君とカリンちゃんの手で、連れて行かれる。
気分は、捕まえられたグレイ型の宇宙人だ。
そんな頭を抱えた私をあり得ないほど豪華な馬車が、白く光り輝く王城へと導いて行くのだった。
そうして、冒頭のシーンにちょっと前に戻る。
城内でメイドさんから化粧が施され、着せられたドレスの上からいつものローブを羽織る。
少しだけメイドさんの手により綺麗になった相棒が、私の心を多少なりとも落ち着かせてくれた。
本当に…どうしようか?
でも1人でうんうん唸っても答えは出ず、儀式のため呼びにきた執事に連れられ…扉の前へ。
ただの大きな扉ではなく、全体に繊細な薔薇の彫刻と散りばめられた宝石がキラキラと光り輝いている。
もうこの時点で、おかしいんだけど…中はもっと凄いらしい。
ああ…なんか、胃が痛くなってきた。
それで帰らせては…くれないだろうなぁ。
「それでは、占い師ライラの入場!!」
そして高らかな入場の合図とともに扉が開かれる…
眩しッッ!!
どうにか、声に出さなかったのを褒めて欲しい。
天井の巨大すぎるシャンデリアが…壁に置かれた照明たちが、過剰なほどにこの空間を明るく照らしていた。
そして左右に並ぶ全身甲冑の騎士達はその背後の、豪華な服装で噂話を繰り広げる貴族っぽい人達を守護している。
正面には、
「占い師ライラよ、前へ」
天井まで続かんとする背もたれの玉座に座る赤髪の男性。
あの人が…この国の国王、ザルフェル・カルトン様。
とはいえ、あまり顔を見ても失礼だ。
私はかけられた言葉通りにゆっくりと足を前へ進めていく。
そして道中も、ザワザワした貴族達の言葉が聞こえてくる。
「なぜ陛下はあの様な…占い師などという者をお抱えに?」
……いや、それはもっともだ!もっと言ってやって!
私が言ったら首が飛んじゃうけど!
あの貴族のおじさんが私の占いに来たなら…増毛薬を占いで探してあげよう。
「占い師ライラ?…聞いたことのない家名だな」
…もしかして、私の名前をウラナイシ・ライラと勘違いしてる?
…いや、流石に聞き間違いだよね?
流石にそんな人が領地を経営してたら、ヤバすぎるし…。
「本当に陛下は何を考えているのやら?あの様な者は極刑に処せば良いものを…」
お前はもう顔覚えたからな!
犯罪とかやってないか、後で占っておこう。
顔だけを見るなら…あいつは悪人顔だし、真っ黒だ。
「そこで、止まれ」
しっかりと足を止め…事前に言われていた様に地面へ跪く。
垂れた銀髪の毛先が、真っ赤な絨毯と触れ合うぐらいに。
「面をあげよ」
そうして、顔を上げたところでようやく国王様の顔が見えた。
顔立ちも髪色も、アレス君とそっくりだ。
違うのは国王様は髪をオールバックにしていることと、刻まれたシワの数々だろう。
あれが国を背負ってきた年月と考えると…心が震える。
「占い師ライラ、其方はこの国のため…その占いの力を使う事を誓えるか?」
「…はい、誓います」
…もう、この場面では言うしかない。
背中に痛いほどの視線が突き刺さっているし…。
逃げ出そうとしたら、戦闘能力のない占い師なんて一瞬で鎮圧からの処刑コースだ…。
「それでは其方を王族直属の占い師として任命する」
「…はっ!ありがたき幸せでございます」
そうして形だけの拍手の中、私はカルトン王国初…王族直属の占い師になった。
退路が完全に無くなったのを感じて、たらりと汗が頬を伝うのが感じられる。
ああ、本当に…私のスローライフは終わったんだ…。
さよなら、スローライフ……こんにちは、王城生活。
ものすごい続きそうな終わり方ですが、一応ここまで。
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