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#41 ひととき

 

「⋯⋯ゆうくん?」


 会計を済ませ、颯爽とコンビニから退散

 すっかり日も暮れてしまった。日が沈んだ街道を歩いている人はおらず、車の通りも極小数


 会計が済んで今に至るまで、ずっと沈黙を崩さなかった俺を見続ける彩華。彼女を街灯に照らされた夜道で連れ立って歩く


 自尊心の低さが相まって、真海に対してもヤキモチを抱いてこなかった自分⋯⋯

 それが今、彩華に向けられた生まれ落ちたばかりの強烈な嫉妬心が俺の心を大きく揺らす


「ごめん、早とちりしちゃったから怒ってるんだよね⋯⋯」


 俺は、痛みを感じない程の加減で腕を掴んでいた


「⋯⋯⋯」


 感情に突き動かされているのは俺の方だってそう⋯⋯

 立場を考えれば怒る資格なんてないし、親友を貶されて動いたんだから、それを咎めるのも野暮と言うもの


「⋯⋯嫉妬だ」


「えっ?」


 このまま無言を貫く訳にも行かず、揶揄される覚悟で打ち明ける


「だからっ!ヤキモチ妬いてるだけだっ!」


 瞬間的に顔が熱くなってしまい、恥ずかしくて後ろを向けずにいる

 太陽が落ち、若干の肌寒さを感じても説明できない程の頬の赤み


 きっと、人に向けられた物ではないはず



 ────夜道を歩きながらの告白に、彩華が一向に言葉を返さない

 果たして、彩華は驚いてるのか笑ってるのか⋯⋯


 彼女がどう言った反応を見せたのかが不明

 羞恥心のあまり顔向けできない。衝動に駆られて動いた代償は思いの外大きかった



 そこから少し時間を置いていると、少し早歩きで俺の隣に足並みを合わせ始めた


 もしかして、俺の顔を覗きに来たのか?


 彩華に赤くなった顔を凝視されて、俺の唇の端がきゅっと上がった。そして、断固として目線を前に向け続けた


 やがて、それと並行して俺の腕が途端に心地好い温もりに包まれる


「⋯⋯??」


 気がつくと、抱俺の腕と、掴んでいない彼女のもう片方の腕が抱くようにして組まれていた

 不明瞭な振る舞いに、気がかりに対する我慢の限界が来た俺は彼女の顔を見てしまう

 

 俺と同じく顔が火照った姿────


 肌寒い夜風に吹かれながらも、俺の体温は言うまでもなく。それ所か、腕を包む彩華の体温も上昇し続けているのが感触で分かる⋯⋯


 自然と嫉妬で掴んでいた腕も離し、恋人のように腕を組み合う


 夜風による寒さを物ともせず、歩みを止める必要も無く帰路を進み続けた



 ────そして、信号で足が止まる



 初々しい沈黙⋯⋯双方、今の関係には適応しきれていない


 人生初の恋愛は⋯⋯俺の不甲斐なさもあってか、非常にもどかしい状態が続く

 甘酸っぱい思い出残しとしてはいいが、このままでは数少ない2人きりの時間が、会話もろくにせず幕を下ろしてしまう


「な、なぁ彩華?」

「う、うん!?」


 嫉妬、赤面。そんな感情は全て度外視で沈黙を突き破る

 彩華の返事も同じくぎこちなく、緊張して言葉がどもる⋯⋯


 夜空が綺麗に輝いていて、カップルの散歩路としての雰囲気は抜群

 滅多に訪れない時間を無駄にしたくはない一心で、意を決して口を動かし続ける


「ふ、ふと思っちまって!お前はあの時に真海と何を話そうとしたんだ?」


 急ごしらえなので、話題としては少し不穏

 しかし成り行きで言えば違和感も無く、塩梅は丁度いい


 ⋯⋯真海に関する話題は、特に長続きする


「あ、あ〜!あれはね?真海ちゃんらが夏目ちゃんを悪く言ってたから、我慢できなくて⋯⋯」


 てっきり彩華は恋愛経験豊富と勝手ながら思っていたんだが、聞くには彼氏は俺が初めて⋯⋯らしい

 揶揄してくる小悪魔的な子が、こうなっているのを見ると、嘘ではないと言わずとも分かる


 変に緊張し過ぎてしまうのはお互い様で、今は仲良く唇を震わせてる⋯⋯


「そ、そうなのか。心の片隅で真海が多少は懲りてくれたかなと願ってたんだけどな⋯⋯そんな事なくて、逆に安心しちまったよ」


「⋯⋯ゆうくんは優しいね。愛海ちゃんが改心なんて、もう私には想像つかないや。平然と人の恋人を奪うような人だもん」


 確かになと、心の中で大きく納得

 その俺の隣で、俺の耳には届かない声量で彩華がボソッと呟いていた


 ────それは私も一緒か


 聞き返す間もなく、呟いてから直ぐか、それぐらいに彩華が再度話を振ってくれた


「ゆうくんはね、少し真海ちゃんを見習ってみるといいと思う」


「どういう意味だよ?」


 言葉の意図が分からず、無意識に瞬きをする回数が増えた

 もしかしてまたもや俺をからかう為の冗談かと表情を見るも、その顔は至って真剣だ

 問い質すと、彼女は時間も置かずに返答をくれる


「お人好しって意味。こうして私を外へ連れ出してくれたもそうだし、真海ちゃんに対しだって、そう」


 彩華の、腕を組む力が一層と強くなる


「私は今のゆうくんが好きだよ。だけどね、正直に言っちゃうとだよ?優し過ぎて男らしくない。何事も穏便に解決しようとするから、頼りがないって言うか⋯⋯」


 うっ、彩華から真っ向でそう言われると⋯⋯


「ああいや悪く言ってるつもりはないよ!その⋯⋯だからこそ、さっき見せてくれた嫉妬が、凄く私に響いたっていうか⋯⋯」


 彩華の赤くなった顔が、更に色味が強く増す


「と、とにかくっ!ゆうくんには自信を持って欲しいって事!」


 自分の発言がやばいものだったと自覚

 直ぐに破れかぶれになり、声は大きく、口調は荒く


「真海ちゃんを見習えと言うのは自信だけは彼女の右に出る人はいないからっ!癪だけどそれだけゆうくんには男前になって欲しいって意味なの!」


 早口で言われてしまったので、俺は一瞬だが顔を丸くして硬直。彩華は勢いに任せすぎたせいで息を切らし、肩で息をし始めてしまった


 ⋯⋯前々から悩んでたのを、こうして彩華に指摘されると少し考えてしまうな


 紆余曲折あり、まるで実行に移せずじまい

 一応、計画は立ててある⋯⋯


「自信を持つのは卑屈な性格だから時間はかかるけどな⋯⋯1人前にはなりたいなとは常々思ってるんだ。女心が分からんから聞くが、一体何が重要なんだ?」


「そうだなぁ。全体の女性に共通するのは自信の無い男性は恋愛対象外⋯⋯って事かな」


 自己肯定感ねぇ⋯⋯

 昔のいじめによって芽生えた卑屈な性格、それを拗らせたせいで、こんな甚だしい小心者になっちまったからなぁ


 矯正は、俺の努力次第で何とかって感じか


「あぁでも、自信がつきすぎて同級生を貶したりとか陰口は禁止だよ!微小の謙虚さは忘れずに!」


「そうならんように()()()()を見習い過ぎないよう注意だな」


 真海に因んだ軽い冗談を飛ばした

 それがダイレクトに彩華のツボにハマったようで、彼女がくすくすと鼻で笑う


 堅苦しかった雰囲気が会話が広がるにつれていつもの柔らかい物に

 彩華の表情も、段々と明るい素敵な笑顔に変わりつつあった


 街灯に照らされた長い夜道を、のんびりと二人で歩き続ける──さながら年月を重ねた長く付き合っているカップルみたいに


 真海や彼女の手によるしがらみを、夜道を歩く今の間だけは忘れ、無邪気だった頃へと立ち返り、ただ今の喜びを味わう


更新が遅れてしまい大変申し訳ございません!

改めて、お読み頂きありがとうございました!


続きが気になる!面白い!など思ってくださればよろしければ評価、リアクション、感想やブックマークをいただけますとすごく励みになります!

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