表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/39

#38 増えゆく真実を知る人 ※キャラ挿絵あり


 雅俊に説明が終わると、彼は彼女の存在がいる為、直接的な手助けはできないが間接的に助力すると約束してくれた

 例えるなら、真海に何かしら不審な動きがあれば報告するなどのちょっとしたサポートに徹してくれるらしい


 ⋯⋯あの真海の性格からして、表立って俺達に手を貸せば間違いなく彼に飛び火する


 当事者ではない雅俊の身も案じる必要があると、夏目さんと彩華はそれだけでも十分だよと快く頭を縦に振った

 真海の横暴を把握した仲間がいるだけで心の持ち方は変わる、それだけでも十分だ


 しかしなぁ、どうしたものか⋯⋯


 「⋯⋯彩華、後ろの奴に気がついたか?」


「うん、ゆうくんも?」


 さっきから俺達を尾行してる奴が、ずっと会話を盗み聞きしているみたいなんだよな

 そのせいで思うように話せないし、気が散って⋯⋯煩わしい


 夏目さんも背後の気配を察知してるみたいで、断続的に横目で見て後ろを気にしてる⋯⋯

 雅俊の方は⋯⋯あ〜ダメだこいつ、呑気に空なんか眺めてやがる


 身長の高さから真海ではない事は確認できた。あの制服⋯⋯俺達の同級生ではない

 となると、噂を耳に挟んだタチの悪い女子辺りか


 ⋯⋯仕方ない、そこまで踏み込んでくるんならご対面と行くか

 この先は三叉路⋯⋯上手いこと使えるかな


 尾行される事に遂に嫌気が差した俺は、夏目さんと彩華に見えるよう、指先で曲がる方角を指し示す


 捕獲の意図を汲み取ってくれたようで、そうすると彼女達は小さく頷いた後、怪しまれぬよう談笑を始めた

 ⋯⋯雅俊、お前はいい加減気づいてくれ


 業を煮やした俺が雅俊を肘でつつき、こちらに意識を向けさせた


 「ん、あ、なんだ?」


 「⋯⋯次、左に曲がるぞ」


 通学路とは逆方向だが、コイツに説明してる余裕は無い。地獄耳であれば勘づかれ、逃げられる

 別に聞かれて俺達自身が危うくなる話はしてないが、真海の耳に届けばアイツ、何言い出すかわかんないし⋯⋯


「はいよぅ」


 本当に何も気づいていないと言わんばかりの生返事

 気を張り詰める俺達だから逸早く気づけたんだろうが、もう少し危機管理能力を持って欲しいものだな


 おっと、そろそろ三叉路か⋯⋯


「⋯⋯最悪、私が追いかけるね」


 三叉路を曲がる直前、彩華が俺に耳打ち

 元陸上部の足なら余裕で捕まえられるが、出来ることならその場がいい


 俺は頼んだと小さく声にし、頷く

 三叉路を左に曲がる、そこから住宅のブロック塀に沿って身体を張り付かせて待ち伏せ


 夏目さんが雅俊の腕を掴み、勘づかれないように少し距離を取る

 彩華は俺の真後ろに待機


 狙いはアイツが油断するであろう、曲がるタイミング⋯⋯


 焦って距離を詰める足音が近づいてきた。

 何かノートのような紙がはためく音


 何か手に持ってるな⋯⋯?


 奴が三叉路を曲がる瞬間、俺はそこを狙ってブロック塀の角から駆け出した──


「うげっ!」


 角から姿を現した俺に気づき、相手は瞬間的に驚愕の色を浮かべた

 即座に振り返って逃げの体制に入るも、間一髪の所で彼女の腕を掴む


「くっそ〜!離すっす!」


 見ればかなりの小柄、推察通り同級生ではない⋯⋯

 手帳とペンを手に持っていて、さらっと見える箇条書きにされた何かのメモ


「無事捕まえられましたね⋯⋯」


 夏目さんは俺達の元へ歩み寄り、安堵の顔

 彩華は身構えていたのもあるからか少し残念そうな面持ち、一方の雅俊は状況を把握できず頭を掻いていた


 そのまま夏目さんが、腕を掴まれて嫌がる女子の顔を見る


「⋯⋯あなたは⋯⋯」

「あ〜、てへへ⋯⋯」


 二人はなんとも言えない反応を見せ合った


 夏目さんが彼女を知っているかのように反応を示し、謎の女子はバツが悪そうに冷や汗を流して間の悪さを隠す笑み


「夏目ちゃん、この子について知ってるの?」


「ええ、彼女は綾織 時雨(あやおり しぐれ)と言って、新聞部の部員です。しかも、かなり()()()()⋯⋯」


挿絵(By みてみん)


 話を聞く彩華は、ひとつの単語に向けて首を傾げた


()()()⋯⋯?」


 問題児と評された子は掴む腕を引き剥がそうと必死


 時雨の顔を見て何やら怪訝そうな顔を浮かべる雅俊が不意に介入

 雅俊が暴れる彼女のもう片方の腕を掴み、完全に抵抗できなくする


 流石に男手2人は無理だと観念したようで、手に持っていたメモを地面に落とした

 そのメモの内容が目に入った雅俊は、俺達よりも先に行動に出る


「お前、目をつけた人達を嗅ぎ回っては新聞記事にしてんだろ?」


 少し怒気の込もった物言い、雅俊もこの時雨って子を認知しているのか

 それにしても、新聞部部員の問題児に目をつけられるなんて⋯⋯何やら俺達の知らない所で色々大きくなってそうだな


「プ、プライバシーの侵害っすよ!私は部の活動に勤しんでるだけっす」


「な〜にが部の活動だ、俺と有紗の事も記事にしやがって。おかげで放課後デートもろくにできねぇ、良い迷惑だよ」


「ど、堂々とイチャつけるし、いんじゃないすかね?それもまたひとつの形っす」


 思い出してみれば、新聞部の発行する記事には恋愛部門なる物も存在してたなぁ


 恋愛を重んじる生徒会の理念に反するってことで大きく反発し合ってるらしい

 あんまり興味がなかったから、雅俊と有紗の関係が記事にされてたのは知らなかったけど


 これじゃやっぱり真海の吹聴が何らかの形で彼女の耳に入って、尾行してきたって感じだな⋯⋯


「ははぁん、時雨ちゃん?もしかして私とゆうくんの事でも記事にしようとしたなぁ?」


 地面に落ちていたメモを拾い、そこから彩華は追及を開始

 日頃俺をいじる時に見せる、口角を上げた面持ち⋯⋯


 彩華の奴、何かする気か⋯⋯?


「し、新聞部たるものまことしやかに囁かれる噂は絶つ思い!噂の真相を突き止めるのが責務っすから!」


 おぉう、否定もせずまさかの開き直りかよ⋯⋯

 なかなか強情な子だな、そりゃ生徒会と反目し合っても恋愛部門を畳もうとしない訳だ


「⋯⋯私とゆうくんの関係もいいけど、もっと興味深い記事ネタがあるんだけど⋯⋯聞きたい?」


 彩華⋯⋯まじか、この新聞部員を引き込むつもりか?


「ほんますか!?」


 釣り餌をまく彩華に、その餌に見事釣られて目を輝かせる時雨

 一方で、察した夏目さんが彩華を制止するも、それに彩華は大丈夫だよとジェスチャー


 すると、夏目さんが少し不安そうな顔で腕を組んで成り行きを見守り始める


「もちろん知りたいっす!!近頃面白い記事が作れなくて困ってたんすからっ!」


「よし!じゃあゆうくん、雅俊くん!腕を離してあげて!」


「「了解」」


 その呼びかけに応じ、俺は逃亡を懸念したが彩華を信じて腕を離す

 離しこそした雅俊もまだ言い足りないようで、少しムッとしてる


 ⋯⋯しかし意外と逃げないものなんだな

 見え見えな誘い水をかけられて、ここまであっさり懐柔されちまうのも、少し呆気ないけど⋯⋯


「但し!3つ条件があります。それは、ゆうくんと私は記事にしない事!それと発行するタイミングは私に任せる事!」


 3つのうち、2つの条件を聞いても目の輝きは消えない⋯⋯


「そして最後!これから説明する記事とは別件で、私達に協力する事!どう?」


「やる!やるっす!別件とやらは少し気がかりすっけど記事にできるなら何でも手伝うっすよ!」


 おいおい⋯⋯

 まだ分からない先の事も顧みず、目先の記事ネタを取るのかよ。どんだけ貪欲ってか、ネタに困ってんだ⋯⋯


「決まりだね!それじゃあ一旦再び夏目ちゃんの家に行こっか!」


 新たな人物の登場は、全員の一日の終わりを更に遅くする


 新聞部員と言う一見心強そうな仲間を引き入れ、張り切る彩華を先頭に、彼女の背中を追う形で夏目さんの家へ向かうこととなった


 新聞部員が吉と出るか凶と出るか、それは彩華の采配次第でもある

 記事によっては校内の情勢が大きく変わるので、夏目さんはそこを懸念している様子


 敵を瞬く間に味方陣営に引き込む速さは目を見張る物だが、少し⋯⋯迂闊過ぎる気もしなくは無い


 んで、俺と雅俊の方は早すぎる展開に口も出せず置いてけぼり

 そこで雅俊が先頭に立つ夏目さんら3人組には聞こえないよう、一言⋯⋯



「俺、要らなくねぇか⋯⋯??」




お読み頂きありがとうございました!


物語も中盤になったということで、登場キャラはどんどん増えていきます!

モブキャラは沢山いますが、時雨のように挿絵があるキャラは残り1人、主人公の進化など、ちょっとした物語に絡む人物は2人ほど増える予定です!


続きが気になる!面白い!など思ってくださればよろしければ評価、リアクション、感想やブックマークをいただけますとすごく励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ