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#3 彩華の本心

 

「そっか⋯⋯ゆうくん、昔から真海ちゃんの事が大好きだったもんね⋯⋯」


 夕闇が静かに公園を包み込み、冷えたべンチに身を寄せる。泣きはらした目を隠すようにうつむくと、彩華がそっと俺の手を握ってくれた。


「ゆうくんは悪くないよ」


 俺が公園に居た、途端に泣き崩れた理由────

 思い切って事の経緯を全て打ち明けた俺の事を、彩華は只々肯定してくれた。


 その吸い込まれるような優しさにまた涙が溢れそうになるが、かなりの瀬戸際でなんとか堪え切る。


「ありがとな⋯⋯全部聞いてくれたおかげでさっきよりもめちゃくちゃ楽になったよ」


「役に立てたなら私も凄く嬉しいな。でもさ、こうやって泣いたゆうくんを私が慰めるの⋯⋯なんだか昔に戻ったみたいだね?」


「ん⋯⋯確かにそうかもしれん。小学生の頃も彩華に守られてばっかだったし⋯⋯」


 俺は深くため息をついた


 高校生になっても幼馴染の女の子に慰めてもらってる、こんな惨めな男がいるなんて

 この情けなさがもしかしたら真海にとっては嫌いな部分のひとつだったのかもしれない⋯⋯


 ⋯⋯⋯


 ダメだな、どうしても思考の片隅で真海の事が浮かび上がってくる

 二言目には彼女の事を考えては落ち込んで⋯⋯


 せっかく彩華が慰めてくれてるってのに何やってるんだろうなぁ、俺⋯⋯


「はぁ⋯⋯」


 こんな自分が嫌になりすぎて、またため息が出ちまった



 1度崩れたメンタルをどうやって立て直そうかと考えるうちに、俺達の間にはちょっとした沈黙が流れるが⋯⋯不思議と気まずくは無い



「────また今から私が傍で守ってあげたいな」



「はっ!?それってどういう⋯⋯?!」


 突然の予想外すぎる発言に、自分でも驚く速さで彩華の方へと振り向いた。



 急に黙ったと思ったら急に何を言い出すんだ⋯⋯?!

 それって⋯⋯遠回しに俺に告白してるって事に気ついてて言っているのか!?



「中学生ではまだ私の方が大きかったのに⋯⋯ゆうくん、何時の間にかこんな大きくなっちゃってさ?私、凄く驚いたんだよ?」


 俺の手を握る彩華の力が一層強くなる


「あの頃のゆうくんはもういないんだ、もう私が守る必要も無いのかな⋯⋯って、内心じゃ私も落ち込んでた」


 彩華、頬を赤らめて⋯⋯?

 頑なに俺と目を合わせようとはしない


「だけどね?蓋を開けてみたら全然そんな事なかった」


 すると、頬を赤らめていたはずの彩華の表情がどんどんと暗くなっていく

 伏し目がちな顔がみるみるうちに酷くなり、涙目にすらなっていた



「それどころか、今迄のどんな時よりも深く傷ついてるゆうくんを見て、その⋯⋯ごめん、泣き崩れるゆうくんを見て、また守ってあげられるって心の奥底では凄く喜んじゃってた⋯⋯本当にごめん」


 彩華の涙が制服のブレザーに滴り、直ぐに染み込む


 申し訳なさそうな表情から一変

 謝罪から矢継ぎ早にこちらを向き、早口で俺に言う


「でも勘違いはしないで欲しい!!ゆうくんが振られたからっ、傷ついたから嬉しいって訳じゃないよ!!」


 彩華⋯⋯


「ゆうくんへの私の存在意義がまだ残ってるんだなって、私が勝手に嬉しくなっただけ!」


 ⋯⋯⋯


「安心して、彩華が人の不幸を笑う子じゃないのは我ながらよく分かってるつもりだ。そんな子が俺を守ってくれたりはしないってのも」


 俺だって、正直彩華と再会した際には現実を受け入れ切れてなかったし⋯⋯最低なのは俺の方だよ

 予想外の出来事が多すぎるあまり、真海との一件含めもしかしたら長い夢を見ているんじゃないかと思い込んでしまっていたし


 ⋯⋯彩華が謝ることなんて何もないのに



「もしそれでも自分に嫌悪感を抱くってんなら⋯⋯そうだな。今度改めて今度お礼を言わせてくれれば、それで許すってのはどうかな?」


 今の発言は少し自信過剰が過ぎるかと、軽く頭を掻いて彩華から目を逸らした


「ごめん⋯⋯慰めてもらった立場のくせに上から過ぎたな」


「う、上からだなんてそんな事っ!そうするだけで許してくれるって言うならいつでもするよ!本当にそれだけでいいのかなとは思うけど⋯⋯!」


 す、凄い健気な表情

 あまり彩華をそういう目で見たことがなかったからあれだけど、こうしてまじまじと見てみると、凄く、可愛いなぁ⋯⋯


「じゃあ今度また一緒にどこか喫茶店で話がしたいな。詳しい日程は⋯⋯そうだな、じゃあ"ALINE(アライン)"っていうメッセージアプリやってるか?」


「うん!引っ越しが多いからあまり友達は多くないけど、よく使ってるよ」


「気軽に連絡取れればそれに超したことは無いし、交換しておこうぜ」


 彩華がパッと目に光を宿らせ、大きく頷く



 電話番号を教え合って連絡先を交換っていう選択肢もあるけど、それだと色々大変だしメッセージアプリが1番だ


 こうやって彩華のスマホの近くでスマホを振ってと


 ⋯⋯おっ、出てきた出て来た

 え〜と名前が〜『サヤカ』か。よし、何も問題なさそうだな


 彩華のこのアイコン⋯⋯

 ん、これ⋯⋯もしかして?



「やったっゆうくんの連絡先⋯⋯!」


 なぜかは分からんが何だか彩華の奴、凄く嬉しそうだな?

 俺なんかの連絡先を交換するだけでそんな喜ばれても、愛想笑いされてるみたいでなんか心が痛いな⋯⋯それこそ、アイツみたいに⋯⋯


 まぁ彩華はそんな子じゃないし、もし心から喜んでくれてるならそれはそれでこっちも交換した甲斐があったかな



「とりあえず、俺はそろそろ帰るが⋯⋯俺の家、本当に来るのか?」


「もちろん!ゆうくんの家の場所って今も変わってないよね?」


「生まれてこの方、俺は住む場所を変えたことはないからな。彩華の言うゆうくんが別人じゃなきゃ同じ家のはずだ」



 彩華の言うゆうくんが俺じゃない訳ないと思うが、少し場を和ませようと茶化してみたが、結果は逆効果⋯⋯出し抜かれたのは俺の方だ


 彩華は大きく笑い、「じゃあ大丈夫っ!ゆうくんは昔のゆうくんのままだったし!」と言ってきた


 まさか今度は俺が茶化されてしまうとは⋯⋯やっぱり今も昔も、彩華だけには勝てないな⋯⋯


「日が完全に沈み切る前に行こう⋯⋯と言っても分かってる通り、俺の家はここからそんな遠くないけどな」


「この公園から徒歩3分だもんね〜、よくゆうくんの家に遊びに行っては遅くなって⋯⋯よくお母さんに怒られてたっけ」


「あはは、そう言えばそんな事もあったな?その度に彩華から俺が時間言わないから遅くなったって言われて、責任取れ!って迫ってきてたのまだ覚えてるぞ?」


「うっ、確かにそんな事もあった⋯⋯。引っ越した先ではゆうくんとまた昔みたいに遊べたらなぁってよく考えてたし、またやってみる?」


「いややらねぇよ?!それにもう俺らは高校生だし!」


 先程の落ち込んだメンタルは彩華のおかげで少しの間、真海の事を考えずに出来る余裕が生まれてくれた


 まだ完全に吹っ切れた訳じゃないけど、彩華と話してると落ち着いて、嫌な事が全部忘れられる


 ⋯⋯本当に彩華様様だ


 真海のためにも、俺が頑張って完全に吹っ切れるよう努力しなきゃな

 意中の相手でもない人物から好意を向けられるのも中々嫌だろうし、彼氏がいるならその分、時間を取らせた事も謝らないと。


 ────よしっ!心機一転、頑張って行くぞ⋯⋯!



 あっ、そういえば彩華のアイコン⋯⋯


 中学生時代に撮った俺と彩華のツーショット、未だあれを忘れず、それをアイコンにしてくれてるとは


 彩華、俺が思うよりもか〜なり思い出を大切にしてくれてるんだなぁ⋯⋯


 〜


 話し込むうちに、やがて俺と彩華は目的地の俺の家へと到着する。

 そして、俺の家の向かいには⋯⋯愛月真海の家。


 そして何となしに真海の部屋を見ると⋯⋯そこには愛月真海、部屋から彼女が俺の家を覗き込む姿があった──


「⋯⋯⋯」





お読み頂きありがとうございました!


続きが気になる!面白い!など思ってくださればよろしければ評価、感想やブックマークをいただけますとすごく励みになります!


本日は早い段階で3人の関係を明確にしたい為、内容は全く異なりますが、次も会話中心となる1話を本日中に投稿予定です。



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