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13/22

#13 宣戦布告

 

「私は⋯⋯」


 逡巡(しゅんじゅん)としながら言葉を探して、真海ちゃんがまた言葉を詰まらせた

 私の発言で落ち込んだ真海ちゃんの指は小刻みに震えて、流れるように肩も震え始めた


 そこから直ぐに、真海ちゃんが頭を左右に振る

 落ち込んでいた表情から打って変わって、私に対して強い憎悪を帯びたような鬼の形相に変わる


 そして直ぐ、質問に答えず憎まれ口を吐きかけてきた


「私のしたい事なんて分かってる癖にそんな質問してホントに私の神経を逆撫でする奴ね!」


 続けて右腕を大きくを横に振って、今度は真海ちゃんが私を捲し立ててくる


「さっきも言ったけど私の裕介に近づくな!その穢らわしい手で私の裕介に触れるな!さもないと昔以上の苦痛を与えてやるわよ!」



「⋯⋯ふっ」



 私の口元がどんどん緩んできた


「ふふっ、あはははっ!」


「何がおかしいのよ!」


 滑稽すぎるあまり、私は抑えていた笑みを堪えきれず噴き出してしまった


「馬鹿にしてるの!?」


 困惑し、怒る真海ちゃんの面持ちを見て、笑いがどんどんと生まれ続け、そのまましゃがみ込んでお腹を抱えた


「ごめんっ、ごめんね真海ちゃん!」


「あ、あんたどうかしちゃったんじゃないの!?」


「大丈夫っ、大丈夫だから⋯⋯!」


「⋯⋯⋯」


 はああ、ようやく落ち着いてきた⋯⋯


 えへっ、きっと私と裕介の距離感が気に食わなかったんだろうなぁ

 ゆうくんが下校中や登校中、そして私と一緒にいる時も妙な視線を感じるって言ってたけど⋯⋯私には全部お見通し


 真海ちゃん、貴方は来る日も来る日も裕介と仲直りする機会を窺ってたんだよね?

 ゆうくんと話したくて、仲直りしたくてウズウズして⋯⋯ふふっ、でもその隣にはいつも私が居た


 真海ちゃんが声を掛けられそうなタイミングは私が全部潰してたんだよ

 蟻の這い出る隙もないぐらい、傷心したゆうくんを傷つけられない為の徹底した()()()()()()()


 私が意図的に機会を潰していたとは露知らず、業を煮やして遂には私の前に現れて⋯⋯凄く滑稽だよ


 こんな事、ゆうくんが知ったら⋯⋯私は気持ち悪がられるかな?


 でも⋯⋯問題ないよね?

 ゆうくんはもう、私の"彼氏"なんだから──



「真海ちゃん、ひとつだけ教えておくよ?」


 真海ちゃんの必死な姿を見て、未だに笑いが止まりそうにない私は深呼吸⋯⋯

 落ち着きを取り戻した私は、眉間に皺を寄せて真海ちゃんに言ってやった


「真海ちゃんの脅しなんてもう通用しないよ」


 忠告を聞いて引き下がらないと宣告して、そのまま唖然としていた彼女の横を素通りする


「ま、待ちなさいよっ!」


 すると、ハッとした真海ちゃんが私の肩を掴んできた


「なに?まだ何か言いたいことでもある?」


 止められた私は、振り返って彼女を睨む

 この不快な手を早くどけてと、遠回しにその目で伝えるように


「ゆ、裕介にある事ない事吹き込んだの、あんたでしょ!」


 絞り出した勇気で言い返そうとしたのかな

 真海ちゃん、声が震えてるよ


「何も吹き込んだりなんかしてないよ?事実を伝えただけで⋯⋯」


「嘘よ!私の悪口が裕介に聞かれたぐらいで、あのヘタレな彼なんかが私を無視する訳ない!」


「ふ〜ん⋯⋯私よりも長くゆうくんと過ごしてて、何も分かってないんだ?」


 思わず、ため息が出ちゃった

 つくづく呆れるよ⋯⋯何でゆうくんがあそこまでして真海ちゃんを避けてるか、未だに分かってないなんて


「そこまで知りたいならゆうくんに直接聞いてみたらどうかな?」


「まず裕介は今、家にいないし急にそんなこと聞けるわけないじゃない!」


 あっ、やそうなんだね

 これだけ大喧嘩して反応無しだからもしかしてと思って帰ろうとしたけど⋯⋯ゆうくん、やっぱり家にいないんだ


 それならこの女に忠告した後、急いでゆうくんの居る所に向かわなきゃ


「⋯⋯私が信用できないなら、もう話す事はないよね?」


「いいやっ!あくまでも真実を話さないなら何がなんでも無理矢理に吐かせてやるわ──」


 急に、真海ちゃんは私の前に立ちはだかった


 やにわに私を壁際に追い詰めては腕を掴み、容赦なく壁へ押し付ける


「うっ!」


 真海ちゃんによって、壁に全力で押しつけられたことで背中に激痛が走った


 ⋯⋯そんなのじゃ私は怯まない


「さぁ言いなさい!」


 真海ちゃんの怒号が周囲に響く

 その怒号は周囲の空気を一変させるぐらい大きくて、近くの電線に止まっていたカラスが逃げ出した


 私の耳にもキーンとした不快な感覚が走る


 だけど、真海ちゃんになされるがままの私はもういない

 ここに戻ってくる前、ゆうくんに好きになって貰えるように⋯⋯あなたよりず〜っと頑張ってきたんだから──


「きゃっ!」


 押さえられた手を力づくで振りほどき、動揺して反応が遅れた真海ちゃんに猛攻をかける


 怯んだ真海ちゃんの隙を逃さず、私は足払い

 彼女が体勢を崩した所で、今度は逆に私が手を押さえつけてやった

 真海ちゃんの上に跨ると、彼女は足をじたばたさせて抵抗


「は、離しなさいよ!」


「真海ちゃんの方から仕掛けておいてよく言うよ」


 そういう自分勝手な所がゆうくんを傷つけてるって、本当に気が付かないのかな?


「うるさいっ!!」


 自衛として真海ちゃんを押し倒したはいいものの、私は彼女に暴力を振るいたい訳じゃない⋯⋯

それよりかは、今はゆうくんに会いたい


もうそろそろお昼が過ぎちゃう⋯⋯

 ゆうくんがお昼ご飯を済ませちゃったら、わざわざ家を飛び出した意味もなくなるし


 もっと沢山言ってやりたいことはあるけど、そろそろ行かなきゃ⋯⋯


 急ごうと思い、押さえていた真海ちゃんの手を離した


「──!!」


 そうすると、それを私の油断だと思ったようで、凄い反応速度で私の手を振り払っては距離を取ってきた


「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯もう許さないわよ」


 息を切らしてそれでも減らず口を利いてくる

 形勢逆転するまで追い詰めたのに⋯⋯それはゆうくんへの執念深さと遜色ない


「ゆうくんに執着するって言うなら止めはしないよ」



 身構える真海ちゃんを無視

 私はスマホで位置情報を()()して、ゆうくんの居る方向に向かい始める


「⋯⋯どういう意味よ」


 真海ちゃんには何を言っても無駄⋯⋯

 私から何を言っても、彼女はゆうくんを諦めない⋯⋯絶対にね


 何年も会ってないし、もしかしたら少しでも物分りがよくなってればなと希望を抱いてた。

 でも、それはやっぱり淡い期待だったみたい


 自己中心的な性格は以前にも増して酷くなってる。独善的な身振りで、真海ちゃんの全てが分かった気がする


 そもそもの話、真海ちゃんが変わっていれば私はゆうくんと付き合えてないんだけどね⋯⋯


 それでも真海ちゃんと仲良くしたい節は、私のどこかにあったんだと思う

 ⋯⋯だけど、そんな気もなくなっちゃった


「もしこれからゆうくんを悲しませるようなことをしたら⋯⋯」



 ────私、黙ってないから





お読み頂きありがとうございました!


今回は続けて彩華視点です!

彩華が一際強い印象を受けますが、実はそんなことは無く


裕介<真海<彩華


こんな感じで裕介の力がだいぶ弱いです。

彩華も同じ男子同級生にはかないません


そして真海もなかなか狂った性格をしているように見えますが、彼女とは別の方向で、彩華もその片鱗を見せてると思います!

彩華視点なので、深くは言及されていませんが突拍子もなく引き返したり、1度見返すと「ん?」となる行動が見えてくると思います。


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愛海は豹変するしゆうくんのことを所有物扱いするし とんだ事故物件ですよね。 これは酷い。異世界物ならザマァされて奴隷まで落ちるレベルの酷さ。
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