#12 邂逅
今回は彩華視点で物語が進みます。
真海と彩華の関係が分かる話になりますので、主人公視点を希望した方も閲覧推奨です。
待ちに待ったゆうくんとの学園生活、やっぱりすっごく楽しい⋯⋯!
転校初日から1週間ぐらい経って、友達も沢山できて、バラエティ豊かな人達と連絡先を交換したけどそれよりもやっぱり⋯⋯
えへへ、ゆうくん⋯⋯
遂にずっと大好きだったゆうくんと連絡先を交換できて嬉しいな⋯⋯!
小さい頃から今までにかけて、一途にゆうくんだけを思い続けてきた甲斐があった⋯⋯
前の学校だとカースト最上位の男子達に告白されて、でもゆうくんの為にそれを全部断って⋯⋯そう考えると私って結構モテてるのかも?
⋯⋯ま!カースト上位も、学校一のイケメンも、ゆうくんにはま〜ったくかなわないけどね!
だけどやっぱり、上辺だけの彼女でもゆうくんと交際関係を築けた事が今でも信じられないよ⋯⋯
遠い昔にゆうくんと離れ離れになってから一人、絶対に実らない恋に身を焦がして途方に暮れちゃってた⋯⋯
でもっ!曲がりなりにもこうして彼女になれたんだし⋯⋯!
うんっ、喜びに浸るのはここまで!
昔みたいに元気よく!シャキッとしなきゃっ!
そういえばゆうくん、今日はコンビニのお弁当で昼食を済ませるって言ってたなぁ
釘を刺すメールを送ってから結構時間が経ってるのに全然返信が来ないし⋯⋯
ゆうくんの事だし⋯⋯絶対私に隠れて楽しようとするから、もしかして返信を渋ってる?
もしそうなのだとしたら、彼女になった私が愛情を込めて栄養たっぷりの料理を振舞ってあげたいな
あぁでも残念⋯⋯今日はお互いの時間を大切にする日だったっけ?
ゆうくんが私に気遣って作ってくれたこの時間を無下にするのもなんだか嫌だし⋯⋯
「それでもご飯⋯⋯作ってあげたいなぁ」
強すぎる欲求に、思わず私しかいない場所で声に出す
でも、ゆうくんのためって言うちゃんとした理由があれば気にせずに済みそうかも⋯⋯!
ゆうくんだって、きっと私の言い分にちゃんとした理由があれば許してくれるはず!
うんっじゃあ決まりだね!今日のお昼と夕ご飯も、裕介に美味しい料理作ってあげよう!
よ〜し!思い立ったら行動するべしっ!
こんな課題なんか直ぐに終わらせちゃって、直ぐに出発しよ〜っと!
ゆうくん、驚いてくれるかな?
〜
昔によく通った道を来て、そしてゆうくんの家が見えてきた
彼の家に近づくにつれて心臓が早まってドキドキする⋯⋯
交際関係を持ってから明らかにゆうくんへの思いが強くなってて、留まらない
まるで恋する乙女のような、家に近付くだけでドキドキするこの思い
好きとは伝えてあるけど、ゆうくんはこんなに強い気持ちだって気づいてくれてるかな⋯⋯?
そう考えると、なんだかドキドキが強くなって恥ずかしくなってきちゃった⋯⋯
「⋯⋯ダメダメ!」
私は大きく首を横に振り、私の周りに纏わりつく邪魔な感情を払った
⋯⋯そうだよ、今日はゆうくんの彼女として家に来たんだ。何も恥ずかしがる事ない!
彼女が家に来て料理するのは、家が近いカップルじゃ日常茶飯事!
何もドキドキする必要ない!
少ししてゆうくんの家の前に到着
まだドキドキはするけど、それでも自分を納得させられたおかげでだいぶ収まってきてる
⋯⋯これならゆうくんと顔を合わせても平常心を崩さずに行けそう
玄関の前に立ち、改めて深呼吸⋯⋯
鍵を開けてもらおうと、インターホンに手を伸ばした──
「────待ちなさい」
突然、私は声をかけられた
インターホンへ伸ばしていた手を引かせ、続けて直ぐに振り返る
するとそこには、私がこの世で1番会いたくないと思っていた女性が立っていた
⋯⋯真海ちゃん
姿を見た瞬間、手が震えた────
ゆうくんに悲しみを背負わせた彼女にやり場のない怒りを、未だに覚えていた私は感情を抑えるように握り拳を作る
「私に何の用?」
私がいつもより低い声で真海ちゃんに用件を問う
「桜木彩華⋯⋯久しぶりね。帰ってきたそんなあんたの為にひとつ忠告しておこうと思って」
とある事で大喧嘩してそれから相容れない間柄になった私に、どの顔で声を掛けてきたって言い放ってやりたかった
⋯⋯でも、裕介の家の前だし喧嘩もしたくなかった私は何とか堪え切った
「そんなの要らない。どうせゆうくんに近づくな〜とか、しょうもない事でしょ?」
「よく分かってるじゃない?」
真海ちゃんの表情が威圧する物に変わった
獣のような殺気を感じる目で私を睨む
私は怯まず、飄々として彼女の目を見続けた
「彼は私だけの物なの。分かってるなら穢らわしいあんたが私の許可もなく触れないでくれる?」
「何を言う出すかと思ったけどそんな事⋯⋯ゆうくんと同じで、真海ちゃんも変わらないね」
真海ちゃん、ホントに私を怒らせるのが得意だね⋯⋯久しぶりにふつふつと怒りが込み上がってくるなぁ
ゆうくんを勝手に所有物扱いして、しまいには私を穢らわしい物扱い⋯⋯
⋯⋯ううん、そんな事はどうだっていい
私を穢らわしいって思うのは真海ちゃんからすればそれはそうだと思うし、私は真海ちゃんからどう思われてても気にした事はないから
かく言う私だって彼女を利己的な"クソ女"だと思ってる
そんな事を真海ちゃんに言っても何もかも無駄だから、わざわざ口にはしないけど⋯⋯
「そうかしら?私から言わせればあんたは変わりすぎよ。裕介の好みに合わせたつもりなんだろうけど、さっきも言った通り──」
「──ゆうくんは真海ちゃんの物じゃない」
「は?」
ゆうくんと付き合ってから私は、ゆうくんを通じて真海ちゃんの事を沢山聞いてきた
彼がされたこれまでの数々の仕打ち
「⋯⋯⋯」
ゆうくんは凄く優しいから、酷い仕打ちをされても真海ちゃんには不満を抱いてなさそうだった
それどころか、真海ちゃんの幸せを考えて⋯⋯でも真海ちゃんは彼の悪口を言っていて⋯⋯
────知らなかったとは言っても、幼馴染を傷つけられて黙って許せる訳ないよ
優しいゆうくんをあそこまで追い詰めた真海ちゃん、私ははっきり言って彼女が嫌いだ
「自分から手放したのは真海ちゃんだよ。思わせぶりな態度を見せてから振ってさ、しまいには彼氏さんにゆうくんの悪口まで言って」
「なっ」
驚いた真海ちゃんに構わず、そのまま捲し立てる
「ゆうくん、あんな風に言われてすっごく傷付いてた。貴方は彼の気持ちを知ろうともせず執拗に付け回して⋯⋯」
「そ、それは⋯⋯」
ゆうくんに対する悪口が聞かれてた事を知った真海ちゃんは、凄く動揺してた
バツが悪そうに私の質問に言葉を詰まらせて、目を逸らす
どこか思う所があるような沈んだ表情
モジモジとして、私に反論する余地はなさそう
「なんで黙っちゃうの?」
正直に言っちゃうと、女の子である私にも⋯⋯真海ちゃんの考えが全然読めない
私は⋯⋯ゆうくんと真海ちゃんが、もし恋仲に発展していたとしたら⋯⋯以前みたいに遠くから叶わぬ恋として眺めるつもりだった
だけどね、真海ちゃん
ゆうくんを振って、文字通り手放したのは貴方なんだよ
好きな人の隣には、いつも幼馴染が居た
男勝りで冴えなかった私は、悔しくても2人の仲を引き裂く事に罪悪感を感じて、諦めた⋯⋯
そんな気持ちも露知らず、長年経ったある日に一度限りの大きな隙を見せたのは貴方自身
今更それを返せって言われても、それは無理な相談
「⋯⋯ゆうくんに、悪いって思わないの?」
ゆうくんが本当に好きだったら告白された時に付き合えばよかったんだよ
そしたら、私が彼と付き合う事も⋯⋯ゆうくんと真海ちゃんの関係がここまでもつれるはずはなかったのに⋯⋯
愛月真海──貴方はいったい、何がしたいの?
風音だけが響く曇っている世界
通行人が全く居ないそのひとつの家の玄関で、私と真海ちゃんだけが立ち尽くす
静寂を裂くように、風が鋭く吹き抜ける
それを足掛かりに、真海ちゃんはずっと続いていた沈黙を遂に破ってきた
「私はただ──」
お読み頂きありがとうございました!
すみません!投稿が少し遅れてしまいました!
近々、真海と彩華の立ち絵を掲載予定です!
お楽しみに!
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