#10 所有物
※注意
今回は1話から9話までの真海の考えが見れる真海視点。所謂回想です。
読者様にとっては今後の物語に大きく関わる物ではありますが、閲覧せずとも主人公視点のみでもストーリー上は問題ありません。
真海の考えを考察したい方や、真海視点を望まない方は閲覧にお気をつけください。
ありえない、ありえない、ありえないっ!
あの裕介がっ、小さい頃から何も出来ず独りじゃ何も成せないあの裕介が⋯⋯私を冷淡に扱うなんて!
せっかく昼休みまで使って、裕介と昼食でも食べながら冷静にこれからの事を話し合おうと思ったのに⋯⋯!
これじゃ全て台無しじゃない⋯⋯!
────間違いない、あの女のせいだっ
そうよ、あの女が裕介を誑かしたんだわ!
じゃなきゃあのヘタレが、告白するほど好きな私を拒絶するわけない⋯⋯!
きっとまた昔みたいに、こうやって私達の仲を険悪にしようとしてるんだわ
そして昔の時みたく、あわよくば私から彼を⋯⋯!
唾をつけるなんて許せない、裕介は⋯⋯!
私の"所有物"なのに────
〜
これまで幼馴染止まりだった裕介が告白してきて、それに深く考えちゃう私が居た
今現在私が付き合っている彼氏は、凄くイケメンで、裕介が持っていない逞しい背中を持ってた
バスケ部のエースとしてチームを先導する漢らしい姿。何があっても私だけは守ってくれそうな太い腕⋯⋯
彼との恋人生活を謳歌してたそんな日、幼馴染の裕介が私に思いを伝えてきた
"ずっと好きだった、俺と付き合って欲しい"
⋯⋯タダの幼馴染でも、その言葉を向けられて嬉しくならない女は居ない
けれど、その嬉しさだけじゃ、大好きな彼氏を持つ今の私を満足させてはくれない
⋯⋯裕介の告白は、私には微塵もなびかなかった
彼には全く及ばない。終始その考えが浮かんで、あの逞しさに及ぶ物は無いって⋯⋯
裕介は一途で、曖昧な答えを出したその次の日にも告白してきて⋯⋯少し、嫌気が差した
私と付き合いたいなら彼を超えてって、不甲斐ないその性格と見た目を治して、そう心の中で愚痴を吐いて。
そして2回目の告白をされたその日の晩、収まらないイライラを発散したくて、私の家に大好きな彼氏を呼んだ
あれだけの事を思っても⋯⋯それでも裕介を振れない自分は、もしかしたら心の中では裕介を好きでいるのではないかと確認したくて⋯⋯裕介と、そして大好きな彼氏を天秤にかけた
そして、その日の夜
全てが逞しい彼に包まれて、改めて今の彼氏が大好きなんだと、やっぱり裕介は幼馴染のままでいいと私の中で結論が出た
そして業を煮やした私は彼の3回目の告白で、遂に遠回しではあるけれど、振った
裕介に関してだけは天邪鬼だった私は、それでも結局の所、彼氏の存在は伏せちゃったけれど⋯⋯
それで全てが丸く収まった──そうやって信じて疑わなかったわ
これからは裕介に構わず、大好きな彼氏と遠慮なく過ごせるって心から喜んだ
後ろめたくて彼に隠れて交際してたけど、彼を振った今なら気兼ねなく家に呼べるって躍起になってた
そして、その日も大好きな彼氏と一緒に帰って、今日の出来事で談笑
裕介を小馬鹿にすると彼は大いに笑ってくれた。私だけに見せるあの笑顔が堪らなかった
⋯⋯いつから?
いや、多分彼氏と帰り道で別れてから⋯⋯私の裕介へ向ける気持ちはそこから全てが狂い始めた
裕介を振ったその日の晩、流石に気まずくて彼の家には出向かなかったわ
そのせいか、振ったことも合わさり、私は妙に身体がソワソワしちゃって⋯⋯私の生活に裕介が居ないと落ち着かなくて、その日の夜は何もかもが上の空に
大好きなはずの彼氏に包まれて完全に吹っ切れたはずだった
でも、最終的にはやっぱり自分の思いに確信が持てなかった
裕介の告白を無下にしちゃったけど、振ったその時に至っては不思議と後悔の念はなかった⋯⋯
裕介に向ける思いは幼馴染としての、きっと本能的な物、そう自分に言い聞かせて、余計な事は頑張って考えずに自分の机に向かっていた
恋に焦がれるような不思議な感覚に陥って、最初こそ幼馴染だから裕介に気を使っちゃってるだけって思って、その時の私はあまり深く考えてなかったわ
⋯⋯振ったのだから、いずれ彼を思う気持ちもなくなるって、そう自分に言い聞かせてたタイミングで、私は更に狂わされた
昔から私と因縁ある、裕介と私のもう1人の幼馴染、"桜木彩華"
長い時を経て彼女が、私と裕介の前に姿を現してから、私の気持ちの何もかもが変わった
告白されて彼を振った晩、私が家に着いた頃には裕介はまだ家に帰っていなかった
彼の行動が気になって、私は自分の部屋からずっと彼の家を監視していた
⋯⋯すると直ぐに裕介が帰ってきたけど、そこにはもう1人の姿が私の目に留まった
何やら凄く美人な女の子を家に連れてきて、楽しそうに笑いあってる姿が見えた
それを見ると、何故だか急激に胸が締め付けられて⋯⋯辛かった
それを目撃した夜、結論から言えば、私は裕介の事を考えすぎて満足に寝られなかった
────あの子は誰なの?
裕介に私以外の仲良しになれる女の子が居たって、彼の事ばかり考えて⋯⋯
大好きだったはずの彼氏なんて、それ以降は考えてる余裕が無かった
そして朝になると裕介から一件のメッセージが届いた
『今日は一人で登校するから迎えは要らないよ。色々とありがとう、昨日は本当にごめんね』
⋯⋯あの裕介が1人で⋯⋯?そんなわけない!
裕介が普段寝ている時間に届いて、私はいてもたってもいられなくなって
顔は洗わずろくな化粧もせず、それでもお弁当だけは作って⋯⋯焦るように制服に着替えて裕介の家の前で立ち往生してた
ここで待っていればすぐに出てくるよねって、そう信じて⋯⋯
結果として、ギリギリまで粘っても結局の所彼は家から出て来なかった
振ってしちゃったから、きっと傷心して学校を休む気なんだと、そう私は自己暗示をかけて⋯⋯遅刻するぞって叩き起してやると考えて
私は裕介に隠れて作っていた合鍵を使って、家に上がり込んだ
⋯⋯でも、そこには誰もいなかった
裕介の部屋からはほんのりと女の子の甘い匂いがして、更に胸が締め付けられて⋯⋯
嫌な予感がしたの、そこから直ぐに家を飛び出して⋯⋯通学路で必死に裕介の姿を見つけようとしても、見つからない
裕介は終始見つかんなくて、ホームルーム開始の合図のチャイムが鳴る1分前に教室へ入った私
そこでようやく必死になって探した祐介の姿を見つけられた
────学校、来てたんだ
彼の姿を目視できて、昨日見た女なんかもう頭に出てこず⋯⋯
改めて、面と向かって裕介と昼休みにゆっくり話したいなって、気持ちを整理してた
彼の姿のおかげで冷静になれて、いつも整えて来るはずの身なりをホームルーム中に整えて
裕介に謝ろう──この複雑な思いを伝えた後、彼氏と別れて⋯⋯裕介と付き合おう
彼氏にはこんな思い、抱いたことなかったし⋯⋯
裕介とのこれからのプランを考え、これまで幼馴染として接してきた彼を恋人として迎えてハッピーエンドだと思った
でも⋯⋯そこで、アイツが姿を現したのよ
まるで空気を読めない、かつて私から裕介を奪おうとしたアイツ⋯⋯!
昨晩見た裕介の隣に居た忌々しいあの女──私の嫌いな幼馴染、腐れ縁の"桜木彩華"として
お読み頂きありがとうございました!
前回のアンケートに応えまして2人の視点を展開して物語を進めます。
基本は主人公視点をメインとし、シリアスな展開や催事など特別な事は3人の視点を全て展開しようと考えています。
主人公視点を除いて、分かりやすいようその都度前書きでどちらの視点かを明確にします。
主人公視点からすればBSSかつNTRで、利己的な真海視点で考えれば完全なNTRと言うアレですが、今回の真海視点は上手く彼女の性格を表現できたんじゃないかなって思います!
続きが気になる!面白い!など思ってくださればよろしければ評価、感想やブックマークをいただけますとすごく励みになります!