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DARKNESS  作者: 名無し狐
2/2

2・現実

ガラム領内・通商の町、ベルロンド


「あー、ごほん


ベルロンドの民の諸君


われら帝国軍はこれより反逆者探しを開始する


匿う者はその場で処刑するから覚悟するように


着なれない鎧を着た兵士が民にそう告げた


探索兵は元山賊や盗賊などで構成されているため元が元だけに民に対する態度は悲惨なものであった


「どこだぁ!隠れてないでさっさと出てこい!1・・・ん?これは・・・」


兵士の1人が民家で金になりそうな宝石を見つけた


「それは我が家の家宝です・・・」


家の主は兵士の機嫌を損ねないように答えた


しかし、兵士にとってそんな事はどうでもよかったのだ


「ウソをつくなぁ!これはきっと逃亡者が国から持って来た宝石に違いない」


目の前に金になりそうな物がある、それだけで兵士にとっては充分だった


「ま、待って下さいっ、私はウソなどついていません」


「うるさい!邪魔をするな!」


兵士は剣を横に振った


「ぎゃあああ!」


次の瞬間、床が紅く染まった


「私に対する妨害は国に背くのと等しい行為!よって貴様をこの場で処刑する!」


「そっ、そんな・・・っ」


ドスッ


家の主が声を発する事は二度となかった


「やっと死んだか、まぁ逃亡者を匿った疑いでどのみち殺してたけどな」


傍若無人の如く


民家に入り、金品があれば軍資金徴収という名目で略奪する


抵抗すれば反逆罪として殺す


それが彼らのやり方だった


「今日はこんなもんか・・・」


指揮官らしき男は広場に集められた金品と辺りに転がっている死体をまじまじと見つめながら答えた


どれだけ略奪行為を行なっても、


軍資金徴収と言えば処罰されない


彼らにとってこの仕事はまさに天職であった


「さて、そろそろ戻るか」


時間はすでに深夜をまわっていた


淡い月光が町を照らしていた、その時だった


「ぎゃあああ!」


「何事だ!?」


街の片隅から誰かの叫び声が聞こえた


その声は聞いた村人や兵士たちがいっせいに静まり、その声が聞こえた方向を見た


月光に照らされ、闇夜から出て来たのは・・・


1人の兵士だった


しかし、その顔は恐怖によって固められ


現れた直後に倒れた


背中には剣で斬られた痕が1つだけあった


その傷口からは血が流れていた


即死だった


だが、それはあまりにも不自然だった


人間はそんなに脆くはない


ましてや、鎧を着た大の大人が剣で一度斬られたぐらいで即死など普通はあり得ない


心臓など急所を突き刺したなら話は別だ


しかし、みたところ即死レベルの傷は見当たらない


なら、なぜこいつは死んでいる・・・?


この兵士は圧倒的な力によって殺された


頭では理解しているが、納得したくない


その結果として体がうまく動かず、兵士たちはその場で固まっていた


コツコツ、コツコツと、足音が不気味によく聞こえてきた


次の瞬間、暗闇が揺らめいた


現れたのは、1人の少年だった


すこし長めの黒髪と暗闇のせいで顔はハッキリとは見えなかったが、


右手にある剣から滴る紅い血がすべてを物語っていた


「お前・・・何者だ」


兵士の1人が緊張に耐え切れずに必死に言葉を発した


「・・・・・」


しかし、少年は何も答えない


「お前が殺ったんだな!?」


無言の少年に兵士が近付いた


その瞬間


少年の右腕が僅かだがブレたかのように見えた


ゴトッ


その直後、何かが落ちた音がした


「うわぁぁぁ!!」


何人かの兵士たちが絶叫した


その兵士たちが見たものは、頭部と身体が分離した兵士の姿だった


「お前たちは罪のない人たちの血を浴びすぎた・・・


なら、今度は」


自分の血を浴びろ・・・!


死の宣告を聞いた兵士たちは完全に統率が崩れ、ある者は逃げ、またある者は少年に攻撃を仕掛けた


しかし、それが上手くいくはずもなく、辺りに兵士たちの死体が転がる結果となった


残るのは唯一その場でじっとしていた指揮官のみだった


「・・・貴様、帝国に逆らう気か!?」


「・・・・・」


少年は何も答えなかった


指揮官は少年の無言の返答を聞いて口の端を上げた


「なら・・・死ね!!」


指揮官は片手を高く上げた


次の瞬間、辺りで息を潜めていた別部隊が現れ、一斉に構え、そして各自が各々の獲物を放った


爆音が響き渡る、攻撃の雨はまだ止まなかった


「ふははははは!帝国に逆らう奴はみんな処刑だ!

みーんな処刑だ!!

処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処刑処処処処処処処処処処処処処処処処処処処処処処処処・・・・・」


無数の雨が降り注ぐ、そして止んだ


辺りは煙でよく見えなかった


硝煙の臭いが辺りに立ち込める


「うきゃきゃきゃ!死んだ!死ぃーんだ!!あばばばばじゅfpwhgヴぇkjべfp@えrjgvぺqwd」


狂喜、驚喜そして狂気、指揮官はそれらの感情の奴隷であった


煙がすうっと消え、視界が広がった


そこには1人の少年が立っていた


「・・・え?バカな、あれだけの攻撃を浴びて・・・何で立っていられるんだよおぉぉぉ!!」


目の焦点が合わない、感覚で分かる・・・こいつには勝てない


逃げろ


本能がそう告げる


しかし


足が動かない、足だけじゃない全身が金縛りにあったかのように動かない、そして隠れていた別部隊はピクリとも動かなかった・・・え?


辺りにいた別部隊が消えていった


もしかして逃げたのか?そんな疑惑は別部隊と同じ数だけある肉塊が晴らしてくれた


「あ・・・あああぁぁぁぁ」


指揮官は呻きのような声をあげる


脳裏に浮かぶ死、死、そして死


「お、俺に逆らうと・・・てて、帝国が黙っていないぜ」


最後は神、いや帝国頼みであった


指揮官はくしゃくしゃになった一枚の紙を懐から取り出した


「見ろ!これが帝国からもらった書状だ!これが俺を守っているんだよ!!」


続けて指揮官が発する


「だから、お前は黙って俺に殺されろぉぉぉぉぉ!!」


ぶしゅ、と血渋く音が響く


地には書状を握った手が転がっていた


「い・・・いぎゃあぁぁぁぁぁ!!」


「お、俺の手が、手がぁぁぁ!!」


「斬れたぞ?帝国が守ってくれるのではなかったのか?」


少年は一つ笑みを零す


「さて、今度は帝国が守ってくれるといいな」


あまりの痛みで動けない指揮官に剣を向ける


「まっ・・・」


ドスッ


・・・


・・・・・


・・・・・・・


「帝国は、守ってくれなかったな」


少年は上を見上げて月を眺めた











































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