表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

スキル【幸福】〜無能とパーティー追放された俺、三人の痴…美女と、実は最強だったスキルでざまあする〜するったらするの!!

追放ものです!主人公はどクズだけど幸せになりますすいません!

ヒロインはやばいのと変なのです!よろしくお願いします(´∀`*)

「タロウン、君にはパーティーを抜けてもらいたい」

「な、なんだって……!?」


 俺は愕然とした。

 ここは冒険者ギルドの酒場。俺たちは幼馴染の冒険者パーティー「馴染みの剣」だった。

 一緒に村から出てきて、一からコツコツ、最近ではそれなりに名が知れるようになってきた。

 それなのに、パーティーを抜けてもらいたいだって……?


 そこは「追放する!!」だろうが!!!


 俺は転生者である。

 

 前世は平凡な高校生。転生チーレムや追放ザマァが好きで、俺だって死ねばやれんのにわかってねーよな神はとか思ってたら死んだ。

 まんまと剣と魔法の世界に転生、これで勝ったと思うも転生もので頻出するマヨネーズの材料をかろうじて覚えている程度でどうにもならず。ちなマヨネーズは失敗した。混ぜりゃいいんじゃねえのかよ!

 そんなわけで冒険者になるという幼馴染とともに都会へやってきたのだがーーー……


 パーティーをぬけてもらいたいだと?


 俺は歯噛みした。アーサー、目の前のこの男はそう言うところがダメだ。

 アーサーと共にこちらをじっとりとした目で見ているマリアとメグもだ。

 パーティー名だって俺は「十十天界の天翔るエクストリーム宇宙騎士団(ナイトメア)十十」を推したのに、「馴染みの剣」なんてダサいのにされた。


「ずっと一緒にやってたのに心苦しいが、君は現状まったくパーティーに貢献できていない。この先ランクを上げるにあたって、君を守る余裕もなくなるんだ。

 タロウンを危険に晒すわけにいかない。親御さんにも頼まれているからね、だからすまないが……」


「そ、そんな!確かに俺は戦闘はできないが、荷運びや料理で役立ってきたはずだ!それにスキルだって……!」

「荷運びって……マジックバッグを私物化しているだけじゃないか。あれは君以外の全員で金を出して買ったんだ。有り金全部娼館に使うのはやめた方がいいよ。

 料理は本当にやめて欲しい。人の食べるものじゃない。いや人の好みは様々だけど、自分だけそのままの干し肉食べたりしていたよね。自分でも本当はわかってるんだよね?

 あとスキル……スキルはねえ……」


 俺のスキルは「幸福」。

 ユニークスキルで前例がなく、効果は不明だ。多分なんかきっとすごいはずだ。だって唯一無二だぜ!?

 効果は不明だがこのパーティーは俺の力で持ってるに決まってる!!


「君がいる時といない時とで、ステータスチェックしてみたり、ダンジョンを同じルートで攻略してみたり、色々試した結果、少なくとも知覚できる、冒険に有効な効果はないとわかった。

 厳しい事を言ってすまないが、どちらかというと君を守らず、マジックバッグを自由に使える分君がいない方が楽だったんだ。

 だからすまない、親御さんに頼まれたのに申し訳ないが、どうかパーティーを抜けてくれないか」


「親のことばっかいうんじゃねえよ!!

 こんなパーティーこっちから願い下げだ!!」

 

 俺は泣きながら走り出した。

 必ず、必ず見返してやる!!

「あんた娼館に使った親の仕送り返しなさいよーーー!!」

 マリアが怒鳴っていた。うるさい!!



 そして数年……


「帰ってきたぜ、この街に……」


 俺は再び戻ってきた。

 Sランクもとびこした、ランク外パーティー「十十十漆黒に輝ける(ドラマティック)天上の七つ星(ドラグーン)十十十〜聖なる絶望を添えて〜」として……!!

 しかも…!!


「ここがタロウンの思い出の街かあ〜」

 褐色肌に紫のロングヘア、琥珀色の吊り目で大巨乳、肌にスリットの入ったなんつーのあれ女神っぽい布地激少な服で常にノーパン(理由は後述)の闇魔法使いヤミコ。

 

「素敵な街ですわ!」

 真白な肌に銀色の髪、優しげな青い瞳をもつ、小柄で華奢で微乳にして美乳。神官服(ただし透けてる)の神官アリー。


「ぶっかますでゴワス!!」

 癖のある赤髪をポニーテルにし、乳も体も大マッスル。ガテン系ビキニアーマー戦士、リキータ。


 三人の仲間の痴……美女と共に!!

 


 思えばここまで、苦労した……。

 俺はふと、追憶にふけった。


 あの時、なけなしの金で乗合馬車にのり、俺は近くの王都をめざした。これまでいたのもそれなりに大きな街だったが王都は別格だ。

 田舎者にはわからなかった俺の真価も、大都会ならスマートに活かせるだろう。


 しかし王都は厳しかった。俺は最低ランクの街中の草むしりなどの依頼をこなすのがせいぜいで、すぐに困窮した。どぶさらい?俺汚いのむり!

 そして何日も食べるものもなく、路地裏に倒れ伏していた時、なにか液体がかけられた。かろうじて目をあけると、立ちションしている女がいた。

 それがヤミコだった。


 何言ってるかわからないと思うがそうだった……。

 

 ヤミコは女ながらに立ちションできる女だった。田舎の婆さんに存在したと言われる伝説のあれだった。


「いーやわっりー!人いると思わなくてよおーぶひゃひゃひゃひゃ!!!オエッ!!オエエエーーー!!!」


 ゲロもかけられた。

 ヤミコは笑いながら俺を自分の宿に連れて行き、風呂に入れてくれた。(宿に入る前に主人に水ぶっかけられた)

 俺は人の優しさに泣いた。


 風呂をあがるとヤミコがうつ伏せで床に倒れて小便たれながして寝ていた。

 俺は人の業に泣いた。

 

 後でわかったがヤミコは大概アレなアル中で、うつ伏せで寝るのはゲロ死予防、ノーパンなのはわりと漏らしがちでパンツとか洗うのだるくねってことだった。ひどい。

 なんというか、見た目はバツグン美女なのだが魂が朝からやってる居酒屋の「店の前で」へたり込んでコップ酒煽ってる歯抜けのジジイだった。歯クソほじって食べたりするし。わりと無理だった。


 まあそれは後のこと。

 その時の俺は困惑するまま、しかし疲れて寝てしまった。

 そしてヤミコに胸ぐら掴まれて起こされた。


「誰だあーてめえ!!」

 ヤミコは覚えてなかった。

 俺は慌てて説明した。いや、しようとした。

 しようとしたが「あっあの…!!」の時点で「まあいいややらせろよ」と言われ、俺の服はひんむかれた。

 やらせろとは!!??

 

 これがそこらのお嬢さんならあざまーす!だった。しかしセンシティブな俺の俺くんはしょんぼりさんで、ふかふかのベッドルームにグッバイだった。

 俺はこわくて顔を覆いしくしく泣いた。ヤミコ無理。


「はあー?つかえねーなあ。しゃーない」

 ヤミコが俺の頭をわしづかむ。潰される!恐怖した瞬間、この世のものとも思えない歓喜が身を襲った。


 はっびーーーーーーーーーーーー!!!!!!


 溢れ出る多幸感。その瞬間、ついにーーーー


 俺のスキル「幸福」が発動した!!!


「ウヒョーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

 俺は全裸のまま、飛び上って天井を壊した。遥か高い上空からアクロバット回転しながら着地、そのまま一直線、並ぶ街並みを破壊しながら走り続けた!

「ウヒョーーーーーーーーーー!!!!!」

「あははははなんだてめえチ◯コかせや!!!」

 俺の俺くんはお元気さんだった!!


 走る俺と追いかけるヤミコの無意味なレースは、しばらくして俺の気絶により終わった。街を遠く離れていた。


 ヤミコは俺に、多幸感を感じる魔法をかけたのだという。そして、俺のスキルは、幸福を感じると身体能力やその他、全ステータスが爆上がりするものだった。


 なるほど、これまで俺は環境に恵まれず不幸だったからスキルが発動しなかったんだな…。

 俺は世間を恨んだ。


 しかしこうなっては最早ざまあは目前。

 あのいい気になってるアーサーたちに、ざまあしてやるのだ!!


 俺はヤミコにざまあの為仲間となることを願った。面白いからオッケーだった。


 パーティーを組んだ俺たちだったが、まあなんというかひどかった。

 ヤミコはクソアル中の性格破綻者で、冒険者ギルドのランクが「殿堂入り」だった。殿堂入りと書いてえんがちょと読む。

 ぼろかす強いがやることがわけわからん上、ギルドのトップ連中が徒党を組んでもまるきりかなわないので、そ〜っと扱われていたのだ。

 なにしろ街全体に発情魔法をかけ大乱行パーティーを開いても、みなさんに殺し合いをしてもらいますパーティーを開いても、蘇生させ記憶を消しときゃいいだろつって、平気にしていて、それを世界中の国が容認していた。

 ちなみに俺が子供の飴をうばって泣かせたらヤミコにぶん殴られ、手足をもがれて眼球を指で押し込まれ潰された。そして奪った飴を舐めながら去っていった。

 この時は三日ほど放置されたが、ギルメンの俺が邪魔だし子供があまりの恐怖に廃人化しているどうにかしてくれという訴えと、龍が飲むというやたらめったら強い酒、というか人間にとって毒の献上により、俺は治され、子供は記憶を消され健全さを取り戻した。俺は三日放置したギルメンの仕事の遅さを憎んだ。

 なのでヤミコの威をかり好き勝手はできなかった。パーティーだからヤミコの力は俺の力なのにひどい。

 しかしヤミコによる脳内麻薬どばどば魔法のおかげで、俺の幸福スキルはどんどんあがった。最早生きてるだけで幸せである。ハッピー!


 そんな俺とヤミコの珍道中だが、やがて神官アリーが仲間に加わった。


 アリーは聖魔法をつかう神官だったが、ひどいできそこないだった。

 孤児上がりで、神殿の孤児院で育ちそのまま神へつかえる道へすすんだが、その魔法は指のささくれをちよっとましにする程度だった。

 彼女はヤミコによるチキチキ神官の首もぎタイムアタックレース中に、隠れているところを仲間に突き飛ばされ、俺たちの前に姿を表した。

 完全に恐慌状態で漏らしていた。大も。


 ヤミコは大喜びしてわははくせーくせーと、生首を両手でブンブン振りながら彼女の周りをぐるぐるまわった。自分を棚に上げて。

 彼女を突き飛ばしたものたちも、逃げられぬままヤミコの機嫌を取ろうとやーいくさいくさいとはやしたてた。地獄だった。


 そしてアリーのスキル「羞恥」が発動した。


 あまりの自己評価の低さから羞恥心すら失っていた為発動せず、蔑まれていたそのスキルは、やはり俺と同じく感情により全ステ上げのやつだった。


 バーサク状態のアリーとヤミコの戦いは、ヤミコの持った酒がなくなるまでというかつてない長時間(5分)のものとなり、なんとヤミコの爪をかけさせるという快挙をなした!!


 なおヤミコの爪は不摂生不衛生のためもろもろで、戦いが長引いたのはヤミコが白いタイルから外れると死ぬという縛りをしていたからである。街は崩壊した。

 ちなみにこれは後から聞いた話で、俺は幸福バーサク状態でわちゃわちゃしていた。ヤミコはタイムアタックゲームなどの時、俺をお邪魔虫としてそうするのだ。

 街を修復し、旅立つ日、彼女は俺たちに仲間にして欲しいと告げた。ヤミコの被害を少しでも少なくする為に。

 ヤミコは神官嫌いだからどうかなぁと思ったが、(だから神殿は街にヤミコがくると、厳戒態勢となり、ベニヤで周りを囲んで禁酒治療院の札をたてる)ヤミコはあっさり受け入れた。


 そして彼女はスケスケ衣装を身に纏った。


「うふふふ恥ずかしい〜〜恥ずかしいですわ〜〜力が溢れ出ますわ誰でも殺せそうですわ〜〜おお神よこのような考えを持つなどわたくし恥ずかしいですわ〜〜」

「うけるー!!!あほじゃん!!!」

「ま、まってくれよお〜〜!!」


 アリーのスケスケに俺の俺くんがお元気して足が遅くなるなど、そんな三人のほっこり仲良し珍道中だった。

 アリーは、悪鬼とクズの仲間に慣れたおかげで、生きてるだけで恥ずかしく大変力がわいてくると、俺たちに大いに感謝してくれたのだった!!


 そして三人目、リキータ。

 リキータはふんどしの国から来た。よくわからないが本人がそう言っていたし、会った当初はふんどし一枚だった。

 当然公序良俗に反するとしてお尋ね者だった(捕まらなかったのだ強いから)

 官憲を振り切る力を持ちつつ、武者修行の旅をしていたリキータは、成果の上がらなさに焦っていた。

 勝負を挑んだヤミコに片手間に殺されたリキータは、アリーに蘇生され嘆いた。

 みんなあたいを追い出そうとするでゴワス!!余所者つらいでゴワス!!乳がどんどんはれてうまく動けないでゴワス!!


 アリーに贈られた乳バンドにより全ては解決した。

 

 ブラ開眼し、アリーの導きによりビキニアーマーを手に入れたリキータは同行を望み、俺たちは快諾した。ヤミコはゴワスがツボだった。

 俺はリキータには一目おいている。奴は漏らしてないのだ!!


 そして俺たち四人パーティーは旅を続けた。

 アリーのおかげでヤミコはギルドの依頼を受けるようになっていた。アリーは長年下っ端のなかの下っ端として苦労しており、人に仕事をさせる太鼓持ち能力に長けていた。ヤミコとて暇だったのだ。

 俺たち四人は認められ、ヤミコは長年守り続けた頼むから死んで欲しい人ランキング一位の座をどっかの国王に渡した。

 俺ももちろん頑張った。かっこいいパーティー名や、二つ名を考えて貢献した!裏方の苦労ってシブイよな……、照れるぜ。


 そして今ーーー俺たちは、俺は、かつて俺が追放された街へ帰ってきた。世界中で名の知られたパーティーとして。

 今こそざまあの時!


「さあ行こうぜみんな!!!」

「おえええええええええおろっおろろほろろろろろろろろろろろーー」

「うふふふふふあらやだ大丈夫ですかうふふふふこんな人と一緒にいるなんてわたくし恥ずかしくてたまりませんわあああ」

「ゴワッ!!ゴワスっ!!」


 もーーー!!!


「なんだよもーーー!!きったねーな!!ここはギルド行ってあっあいつらは……とかざわつかれて俺追い出してうらぶれたアーサーがな、仲間に戻ってくれないか……て言ってくんのをもう遅いするとこじゃんかーーーー!!!」

「うるせえーしねーおえー」

「揺るぎなくクズですわあーわたくしはずかしいですわあー」

「どうして仲間に戻れってなるんでゴワ?アーサーという冒険者の噂は聞いたことないでゴワ。強いのでゴワ?」

「だからー!!追い出した俺が実はすげーってわかったからじゃん!!ギルドの特別枠パーティーなんだから!!そんでアーサー知らねーのは無名だから!ウププ無名だからーーー!!」

「あれ、タロウンかい?久しぶりだな、どうしたんだい?」


「アーサー!!!!」


 なんとアーサーがひょっこり現れた!!


「いやまあ往来で騒いでるから見にきたんだ。うちの店が近いから」

「店!?はははーっ!!冒険者諦めてしょぼい店で雇われてんのか!!ざまあーーっ!!俺は今じゃ有名な二つ名つき冒険者だ!!」

「ああ知ってるよ。パーティーヤミコの「なんかいるやつ」タロウンだろ。みんな誇らしく思ってるんだ」

「違うっ!!「十十十漆黒に輝ける(ドラマティック)天上の七つ星(ドラグーン)十十十〜聖なる絶望を添えて〜」の、笑う絶望の王冠(ハッピークラウン)ことタロウンだ!!」

「そうかいそうかい、君は変わらないね。俺はあれから上位ランクの依頼をこなしてお金を貯めてね、マリアとの結婚を機に引退して店をかまえたんだ。惜しかったけど、まあ君と違って僕らはいつまでも冒険者を続けられるほどの力なかったからね。

 メグも、覚えてるかな、ギルド職員のデレクと結婚してね、今は隣町の支部を夫婦で任されてるよ。

 そうだ、よければマリアと子供に会いにうちへよってくれないか?あと親御さんも君の活躍をよろこんでたよ。いまでも季節の贈り物のやりとりはしてるんだ。僕からもヤミコパーティーの新聞記事なんか送っていてね、大事に飾っているそうだ。とはいえ長らく会えずに心配していたから、せめて手紙をだしてみてくれないか?君も忙しいだろうから、よければだけど……」

「ああああああーーーーー!!!!友達がなんか堅実に先いってるううううーーーーーー!!!!!!ちゃんとしてるううううーーーーーーー!!!!余裕をもって人生で勝ってるうううううーーーーーーーー!!!!あと親のこというなよおおーーーーー!!!!!」

「すげえ。こいつ神じゃね」

「不敬ですがその通りですわ。清らかすぎてこの身を焼かれる思いですわ」

「子供に会わせるのは教育に良くないからやめたほうがいいでゴワス」


 俺は地面につっぷしてしくしく泣いた。

「なんでだよーなんでだよーなんでざまあになんねえんだよー俺の何がわるいんだよー」

「全部だろ」

「全部ですわ」

「ゴワス!!」

「厳しい仲間に囲まれてタロウンは幸せだな。それで成長できたんだね。俺は親御さんを思うとどうしても……才能を開かせてあげられずすまなかったね」

「うわあああああーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 俺は泣いた!泣き喚いた!こんなはずでなかったと大いに泣いた!!


「違うの!!俺はほんとは才能あって、開花しないなりパーティーの裏方でなくてはならない力なのに追放されてアーサーは後悔すんの!!

 俺は追放されて絶望するけど旅の途中命の危機で覚醒してすごい力に目覚めてざまあすんの!!」

「そうかいそうかいおちついて」

「次の街でギルド行ってあらくれものにヒョロガリとか馬鹿にされるけど俺は覚醒した力でうっかりやっつけちゃってみんなびっくりして俺はえっ俺なんかしましたか?てきょとんとすんの!!!」

「そうかいそうかい」

「あっあの人たちも新人ですか?まさかあれでベテランなわけないですもんねー強面うらやましいなーとか言って実はやつら中堅の新人いびりだったからみんなそ、そうですね…てひきつって、早速依頼受けてたくさん魔物倒して、この辺りの魔物は弱いのかなーとか首を傾げつつギルドに帰ったらひ、一人でこの量を!?てびっくりされてー」

「…それでそれで?」

「そんですごいやつがあらわれた!て評判になるんだけど、ある時あの新人いびりたちをやっつけたのはお前?てすごい美少女が話しかけてきて」

「それでそれで!?」

「どきどきしながらそうだよって言ったら怒って襲いかかってきて、女の子だから戦えないよ!て逃げるんだけどしつこく追いかけてきて」

「それでそれで?」

「なんでえわるもんの仲間かよ!!」

「美人でも許せねえ!」

「困って隠れてたら女の子が別のわるものに襲われてて、慌てて加勢に入って助かるんだけど、彼女には大きなお世話って言われて、襲われそうになるんだけどそこへ別の女の子が走ってきて」

「なんでえ助けられといて!」

「むかつくぜ!」

「お姉ちゃんは、あの新人いびりにいじめられた私の仇をとろうとしてくれただけなの!!あなたに仇をとられて、自分で復讐ができず、悔しさのあまり……私のためを思うあまりなんです!ごめんなさい!お姉ちゃんも、そんなの八つ当たりよ!て怒って、女の子は妹に嫌われた…!ておろおろして、さっきまでと大違いのその姿に、俺は仕方ないから気にしてないよ、これでチャラね!て彼女にデコピンしたら、険しい顔ばかりだった彼女が顔を真っ赤にして、す、すまなかった……て」

「「「「「ひゅうううう〜〜〜〜〜!!!」」」」

「きめえ」


「タロウン!!!」

 アーサーががばっと俺の肩を掴んだ。

「すごい!すごいよタロウン!!君にこんな才能があったなんて!!君、本を書かないか!!?」

「本?」

「おい続きは!」「続きはどうなんだよおー!」「続きをくれよおーー!!」

「続きはこれから出版される本を待ってくれ!!大増量てんこもりでお楽しみだよ!!さ、タロウン帰ろう!早く!はなさないぞ!!!」

 俺はアーサーに抱えられ、その場をあとにするのだった。


 それから俺は、作家になった。

 アーサーに軟禁され、口述筆記で記された俺の積み重ねた妄想は商売変えをしたアーサーにより書籍となり、アーサーにより流通にのり、大評判となった。

 そうなればしめたもので、金と名声を手に入れた俺はアーサーの口八丁により更なる新刊という名の、既に妄想ストックはつきたので、前世の世界のベストセラーを書きまくった。

 矛盾や穴はアーサーが補填し、出版されたそれは前作と桁違いの大評判。

 みんなが俺を褒めたたえ、俺はどんどん嬉しくなり幸福スキル発動、もはや口述筆記でもなく、なおかつスキルにより記憶力強化、以前読んだものの細部まで思い出せるようになり、どんどんと書きまくり、大作家の名をほしいままにした。


 

 仲間たちは、アーサーに軟禁されるうち、姿を消した。アーサーも気づかなかったと、謝られた。

 別れも言えなかったが、彼女たちらしいなとも思う。

 彼女たちの噂は、いまでも伝わってくる。


 いつか、年を取ったら、彼女たちとの出会いを、冒険を、本にしたいと思う。

 そしてみんなに、読んでほしい。

 俺の愛すべき三人の仲間の、夢溢れる四人パーティーの物語をーーー……


 ただし奴らの性格はまともで、悪事はぜーーーんぶ悪者がやったことにする!!!

 


★〜★〜★〜★〜★〜★〜★〜★〜


 

 ヤミコは転生者だ。

 

 貧民にうまれ、闇の魔力をもつヤミコはろくな目にあわなかった。見た目のよさも災いした。

 貧民窟で飢えていた赤子の頃がまだましで、本来なら物心もつかぬうちから奴隷というのも奴隷に悪いような扱いを受けていた。


 転生者ゆえ、普通よりも意識ははっきりしていたが、とはいえ前世のヤミコは臆病な中学生で、到底今世の状況に対応できなかった。

 

 初恋も知らぬ純粋ではにかみやの少女は、売られ逃げ出し隷属させられ虐げられこの世の汚濁を見尽くして、心も体も汚され、完膚なきまでに壊された。


 そして成長とともに増加した魔力は膨大なものとなり、完成したのがヤミコである。


 ヤミコは暇つぶしで生きている。殺したい奴は殺したが、この世界を恨んだり、逆によくしてやろうなんて気持ちも既にない。

 酒を飲んでる時は頭がふんわりして少しいい。

 死なないから生きてる。

 それだけだった。


 そんな時に出会ったのがタロウンだった。


 ヤミコは驚いた。


 タロウンは昨日今日前世の記憶を思い出したわけではない。生まれた時から前世の記憶をもち、前世のまま舐め腐った性根で生きている。

 

 まじかよ!!死ぬだろ普通!!!


 ヤミコが生まれ育った環境はこの世界でも最悪のほうだが、それでなくともこの世界は前世よりもーー前世の世界の中世よりも、厳しい。魔物と魔法のある世界なのだ。


 それをどうだ、前世のまんま、舐め腐った性根を変えることなく、現実を見ず、好き勝手言い、自分ばっかり損をしてると他人をうらやみぶーぶー言う。


 こいつすげえな!!


 ヤミコは感心した。この世界に、こいつを生かしておくようなところがあったとは。

 そしてこの世界にもいいとこあんだな、と嬉しくなった。

 

 だからと言ってこの世界が好きになったわけではない。今住んでるとこにもちょっとはマシなとこがあると、少し嬉しかっただけだ。


 しかしそれは、この世界に生まれてはじめてのことだった。


 ヤミコはタロウンを連れ歩くことにした。

 タロウンの甘えきったクズっぷりにあーいたわーこんなん。これでここで生きてんだーと癒されたのだ。

 ちなみに自身が転生者であることは言わない。

 百パーえーっチートじゃんずっりーー!!とか言うし、そしたら蘇生不可能なまでに殺すからだ。

 

 実はタロウンの生まれた村も見に行った。タロウンには言わずひとっ飛び。

 平穏な村で、両親も善良そうな普通の夫婦だった。

 その時は会話をしなかったが、アーサーにあってわかった。


 あいつはほんとに運がいい。


 治安の良い、魔物の少ない平和な土地で、善良な人々に囲まれ、愛され心配されながら育った。

 ヤミコの生まれた場所は、そもそもリソースが少なすぎて人を慮る余裕などない。余裕があったとて、それを悪い方向にふるものなどどこにでもいるもので、治安のいい地域の中でも、タロウンが善良極まりない人々に囲まれていたことは、運がいいとしか言えなかった。


 そして、ヤミコは、ついてなかった。


 そう思い、ヤミコは笑った。

 かつてなぜこんな世界に、どうしてこんなことにと、いるかもわからない神を恨んだ自分がおかしかった。

 前世でもあったことだ。


 ただ、ついてなかった。


 それだけ。


 だからって勿論、この世界が好きになったわけではない。ただ腑に落ちただけだ。そうか、と思っただけだった。



「しっかし今度はあれかあ〜。どんだけパクんだよあいつ」


 酒瓶片手に本をパラパラめくり、ヤミコはぼやいた。

 タロウンの本だ。

 アーサーに回収された彼は、今では作家となりベストセラーを連発している。


「準備ができましー…あら、タロウンさんの本ですの?あの方も、あんな才能があったなんて驚きですわ」

「ゴワっ!!めっちゃおもろいでゴワス!!」

「わはは!!だろうね!!!」


 前世の創作物がこの世界でうけている。

 それもまた少し、ヤミコには嬉しい。


 ヤミコは荷物を積み込んだ馬車にのりこんだ。


「さあーー!いっちょ魔王を犯りにいくかあーーー!!!!」

「うふふ僭越すぎて羞恥がとまりませんですわ!!」

「またぬれでゴワスっ!!」


 ヤミコは元気よく酒瓶をあけ、ひとゲロはいてから旅立った。


 やがて伝説となる、仲間たちとともにーーーー……




☆完☆



 

 


 


 




お読み頂きありがとうございます〜!!!感謝!(´∀`*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] なんだコレ、なんかすごいの読んだぞ。 タウロンの清々しいクズっぷり乾いた笑いが止まりませんでした。 タウロンがアーサーと再会したときの舌戦に感動しました。 そして、その後のヤミコさんの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ