第90話 「私は朴念人です」と書かれている
「う~ん、終わった~」
金曜日でテスト週間が終了。手ごたえは上々。テストの自己採点では平均80点はとれていそうだ。
3学期の期間中、授業にほとんど出れていないのにこれだけの点を取ることが出来たのはしょっちゅう病院までお見舞いに来て、テスト範囲について教えてくれ自主学習の中で分からないことを丁寧に嫌がらず説明してくれた岩清水のおかげだろう。
岩清水が持ってきていたプリントをこまめに提出していたおかげで足りていない出席日数にも手心を加えて貰って春休みに補習を受ける必要さえなさそうだった。
お弁当も作って貰うことになったし、本当にこのままじゃ岩清水への恩が大きすぎて返せなくなりそうだからどこかで恩返ししたい。
とにかくテストも終わって今日は待ちに待ったカメラの指導をさんご先輩から受けることが出来る日だ。
テスト終了直後から部活が解禁になるから今日はカメラバッグに日曜日に買った一眼レフのボディと家にあったこの世界の多々良恭介のコレクションしているレンズを入れて持ってきた。レンズについては汎用性が高く一般的とアドバイスを貰ったズームレンズを入れてきた。
ちょっとメカメカしくてワクワクする。この世界の男子もカメラとかロボットなんかは好きなんだろうか? 性的なことじゃないから元の世界と同じかもしれないがその辺はもうちょっと調べてみたいところだ。
月曜日からはテストの返却があって、それが終わったら春休み一直線だから春休み中の部活についても相談したい。水泳部と兼部する予定だからそっちの相談も。
そんなことを考えながらカメラバッグを肩から下げて部室に向かう。
からから~
部室の扉をあけて、こんにちはーと一歩踏み込んだ途端のことだった。
スパーーーーーーーンッ!!!
やたらいい音を立てて頭をはたかれ、目の前に星が飛ぶ!
いったーーーー!? な、なんだ!?
と見るとハリセンを見事に振り抜いたさんご先輩が俺にハリセンを突き付けながら頭を押さえる俺に向かって叫んだ。
「大馬鹿もの~! 朴念仁! とにかくそこに正座しなさ~い」
頭を押さえて目を白黒させながらとにかくいうことに従う。部室の床に正座させられると首からかけるようにと段ボールの板に紐がついたプレートを首から下げさせらられた。
見ると「私は朴念人です」と書かれている。人ではなく仁だと思うが、突っ込むとさらに怒られそうなのでとりあえず黙っておくことにした。
「君は……多々良くんは朴念仁だから自分が何で今怒られてるのか……私が何に怒っているのか全く分かってないんだよね? 分かってないって顔しているもんね」
なんのことだか分かっていないのは本当だが、怒られながらも俺は真っ赤な顔して怒っているさんご先輩も結局可愛いと思ってしまったのだった。