表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/331

第9話 どうして助けてしまうんだろう

「ほら、ヒナもこう言ってるんだ。お前の出番はもうないから帰れよ」

 フリーズしていた西田がニヤニヤしながらヒナに近づいてくる。


「それじゃあこれはもういらないよな……なぁヒナ?」

 そう言うとヒナの首のペンダントをチャラチャラと指で持ち上げる。それはおもちゃみたいな安物のペンダント。ペンダントトップは手術の成功を祈って病気平癒の願いを込めたアメジスト。

 手術が怖いって泣いていた陽菜に俺がお小遣いとお年玉を前借りしてプレゼントしたものだった。


「1学期に付き合ってた時からこの安物はヒナには似合わないって思ってたんだよ。もっといいやつ買ってやるからこんなの捨てちまえ」

 そういうと西田がヒナのペンダントを引きちぎるように外す。


「やめっ」

 ヒナが何か言いかけるがそれよりも早く西田がそのペンダントを車道に放り投げる。ホテルダイヤモンドの前には大きな車道が通っていて冬の夕方のこの時間、薄暗い中をライトをつけた車が行きかっていた。


「ああっ! 私の!」

 ヒナがそういうと西田の手を振り払って車道へ飛び出す。

 まさか俺のあげたペンダントのためにヒナが車道に飛び出すなんて思っていなかった俺は完全に反応が遅れる。


「ヒナッ」

 だけど次の瞬間、俺はヒナを追って一緒に車道に飛び出していた。

 ヒナはペンダントを拾おうと薄暗い車道にしゃがみこんでいる。大型トラックがクラクションを鳴らしながら急ブレーキをかけるがその質量は簡単には止まらない。

 ヒナだけでも突き飛ばす!? イヤ間に合わない!


 ヒナを抱きしめるようにして押し倒す。運が良ければ奇跡的にトラックの下をくぐれるかも……頭で考えたわけじゃないが体が動いていた。


 ガシッ!体のどこかがトラックにひっかかる。引きずられるようにして体がもみくちゃにされるが必死にヒナを抱きしめる。


 ガシャンと大きな音がして次の瞬間、路側帯のブロックがものすごい勢いで近づいてくるのが見える。最後の力を振り絞るように必死にヒナを掻き抱き、抱きしめたまま俺の頭はブロックに激突してそこで意識が途絶えた。

 自分の命が失われるって分かっていてもどうして助けてしまうんだろうな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 命を擲って誰かを助ける。 なかなか出来ることではありませんが、恭介にとって裏切られた上でなおヒナがそれだけ大切だったことを証明するのにこれ以上はないのではないでしょうか。 初見で読んだとき…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ