第83話 カメラ教えて下さいね、さんご先輩
お昼ご飯も食べ終わったのでハンバーガーショップを出る。
撮影旅行の話が出たあたりから桜島先輩は顔が赤く口ごもりがちになった。今日はそこまで暑くないけど熱中症かな? 早めに解散しよう。
「桜島先輩、今日はありがとうございました。おかげでカメラも買えました」
駅からお互いに上りと下り逆方向に別れて帰るので改札から入ったところでお別れする。
「どういたしまして、明日からテストだからあんまりカメラを弄ってて勉強に支障をきたしたらダメだよ。留年なんかしたら怒るから。
テスト明けの金曜日以降なら私が部室でイヤってほどカメラについて教えてあげるから」
ここでも多々良恭介=成績悪いの図式があるらしい。今回のテストで払拭できればいいけど。
「大丈夫ですよ。入院中も筋トレと勉強ばっかりしていたんですから。
あ、そうだ忘れてた。」
掛けていたショルダーポーチの外側のポケットをゴソゴソと探る。小さなリボンのついた紙袋を取り出して桜島先輩に渡す。
「これ。今日のお礼です。桜島先輩の名前の「三五」って「さんご」とも読めるじゃないですか? だからサンゴのイヤリングです。
俺誕生石とかよく知らないから、本当は調べてちゃんと送った方がイイのかもですけど…俺結構サンゴとかソフトコーラルって好きだから。
邪魔じゃなかったら使ってください。それと誕生日おめでとうございます。今日なんですよね?
また部室で会いましょう。カメラ教えて下さいね、さんご先輩」
本当に安物のイヤリングで悪いけど、せっかく誕生日なんだしプレゼントしたかったっていうのもある。誕生日を名前に使われたせいで誕生日が嫌いなんて寂しいもんな。
もちろん、これからカメラについて教えてもらうことに関してのわいろ的な心づもりもあるのだ。
「それじゃあ、さんご先輩また今度」
何故か立ち尽くしちゃってるさんご先輩に大きく手を振りながら下り線のホームの階段に移動する。
ホームに続く階段を下りて電車を待つ。本線なので後15分ほど待てば電車が来るようだ。
「恭介くん、こんにちは。今日はこっちの駅の方に来てたんだ」
大きなデイバックを抱えた陽菜が階段を下りてきて俺に話しかける。買い物したカメラ店の紙袋を見せながらカメラを買いに来たことを伝える。
家まで一緒に帰ればいいんだからと陽菜からデイバックを受け取る。結構ズシリと重たい。
陽菜の今日は市の中央図書館に行って三バカトリオと小烏と一緒に勉強会をして、その後お弁当組3人はデパートに買い出しにも行っていたらしい。
「ありがとうな、陽菜」とお礼の言葉をかけると陽菜は何か言いたいことがありそうだったが「明日からもお弁当楽しみにしていてよ」とほほ笑んだ。