第7話 俺が満足させてやったんだよ
「ヒナ……」
学校からラブホまで走ってきた息を整えながらどうにかヒナの名前を呼ぶ。
12月の寒空の下なのに汗だくの制服姿で頭から湯気をあげている俺に対して、シャワーを浴びてさっぱりしたばかりの二人が驚いた顔で見つめている。
「どうしたの? 恭」
ヒナは付き合いだしてから俺のことを恭と呼んでいた。
「なんだよヒナ……別れたんじゃなかったのか?」
とヒナの隣の西田が彼女と肩を組むように腕を回してその大きな胸を服の上から揉む。
二人の格好は放課後にもかかわらずラブホに入るためにどこかで着替えたのか私服になっている。
ラブホの前で制服姿で言い争いなんてまずいと思いつつも、冷静になることはできなかった。
「西田先輩……ヒナとは別れたはずですよね?」
西田の前に立ち睨みつける。水泳部の俺よりも10㎝くらい背が高いだろうか。短い金髪で強い眼光の西田のことを負けないように睨む。
「は? 俺がフリーになったからよりを戻さないかって声をかけたら、ついてきたのはヒナの方だぞ。
お前のものだって言うんなら首輪でもつけてリードを握っておけよ。そうだよな? ヒナ」
そういうとヒナの胸を服の上から無遠慮に揉みしだく……人差し指で乳首のあたりをはじくとアンッとヒナが声を上げた。
「ゴメンね……恭。やっぱり西田先輩の方がエッチが上手で気持ちいいから。それに……いくらお願いしても恭は生でエッチしてくれなかったよね?」
胸を揉まれて赤い顔をしながらヒナが言う。そんな顔を俺に向けないでくれ。
「それは……ヒナの体が大事だから……」
心臓移植した後、免疫抑制剤を飲み続けているヒナとゴム無しですることはヒナの体が心配で俺にはできなかった。
「だから……お前が満足させられないから代わりに俺が満足させてやったんだよ。感謝されることはあっても恨まれる筋合いはないよ」
イヤらしい表情の西田がニヤニヤしながら俺に告げる。