第66話 あーしはそうやって男を落としてる
そんなこんなでやっと皆でご飯を食べ始める。
俺は三個の弁当箱を抱えているため食べることに忙しくもっぱら皆の会話を聞く専門だ。
元の世界でもそうだが、普通は異性がいる前ではあんまりあけすけな話は出来ない。
例えば元の世界で俺と村上は飯の時間も含む休み時間ごとに二人でオカズシェアをはじめとするエロ話に興じていたが、女子に聞こえる環境だと途端に黙り込んでいた。
一応非童貞だった俺でもそうなんだから、この世界の処女も同じ感覚だろうと思う。
ただ、そこにいる異性が……つまり男子が俺の場合だけは皆平気で下ネタを言う。
これは入院中に俺がその手の話を平気で聞いていたためだが、こうして学校生活が始まるとちょっと失敗だったかとも思う。
もっと早めに気付いていればよかったが、学校で同じことをやると周りの男子の俺に対する目が冷たい。氷点下です。寒いです。
まあ、元の世界考えれば分かるけど男子の猥談に混ざってちやほやされてるビッチ系女子なんて同性に好かれるわけないよね。手遅れとはいえどうしてこうなった……
あ、ちなみにゆうきはこの席の中で女子みたいな顔をして混ざってる。もはやこいつは性別が「♂ゆうき♀」なんだろう。
「だからね、クスリに頼るっていうのは最終手段でね、ひよりっちは美人だし優しいから男はそういう所で心から堕としていくんだってば。
よく言うでしょ「男の心の中にはちんぽがあって、心のちんぽが勃てば体のチンポもついてくる」って」
藤岡が小烏にレクチャーしている。小烏は真面目な顔をして「参考になります、みお師匠」などと言いながらメモを取っている。
正直言うと俺はあまり小烏には染まって欲しくない。
「だから優しくしてやって男の方からこの女を自分のものにしたいって思わせることが出来れば勝負ありだから、あーしはそうやって男を落としてるし」
このテーブルのメンバーはほとんど処女だと思うが、藤岡だけはよく分からない。
言ってることがあまりにもリアルだし俺もドキッとするような色っぽいしぐさを見せることが多いし。
今の発言だって元の世界から来た俺にしてみれば茶髪でギャルの藤岡はちょっとヤン入ってイケてる男子で、それが陰キャの女の子に優しくして甘い言葉を吐いたら結構ほいほい女の子を落とせちゃうってイメージが簡単に頭に浮かぶもん。
グループのメンバーの処女・非処女について陽菜の場合はエロ師匠だし小学生の頃からおちんちんの写真とか撮りまくっていたわけだし、非処女だとばかり思っていたが最近一周回って逆に処女なんじゃないかと疑っている。
この世界の女子は男性経験を聞いたら結構教えてくれたりするけど、元の世界の童貞ってビッチに女性経験を聞かれて答えていたかな?
俺は童貞じゃないからどうだったかわからないよ(謎のマウント)
お昼休み中、もっときわどい猥談もあったりしたが、俺は食事に集中であまり参戦出来ず、陽菜はニコニコしながら自分の水筒から入れた緑茶をすすっていた。
本当にどんな猥談でも自分に関係ない限り聞き流す陽菜の姿はかなりの貫録を感じさせた。