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第6話 目の前でラブホから

『それで今日西田先輩はサッカー部を休んでるらしい。授業は普通に出て体育の授業もあったらしいからサボりだろうって話だ』

 続く村上の言葉に目の前が暗くなる……ヒナはどこにいるんだろう…なぜ電話にもメッセージにも反応してくれない。


 叫びだしたくなる衝動に駆られる……何が出来る? ヒナのために何をしてやればいい?

「村上あの動画を俺の携帯に送ってくれ、頼む」


『いいのか? 何か考えがあるんだな?』

 通話しながらすぐに送ってくれているんだろう、村上は本当にレスポンスが早い。


 動画を再生してヒナの裸からカメラがブレて背景が映っているシーンを探す。

 あった……後ろの部屋の作りからラブホであることは間違いない。吐き気をこらえながら動画を隅から隅まで眺める。

 編集しているわけではない撮ったままの映像だ。カットや編集をしていないからこそ顔や女性器を映さないように撮っていたのだろう。


 西田がハメ撮りしてたカメラを落とした瞬間があった……ベッドの上を転がったカメラが止まり画角が固定される。その時画面の端に映りこんでいたのはルームキーのクリープハイプ(キーホルダー)だ。801号!

 すぐにスマホでこの近辺のラブホを検索する。8階建て以上のホテルは2軒だけ。2軒の位置関係はそんなに遠くない。

 昨日と今日で必ず同じホテルを使うという確証はないが何もしないよりずっとましだ。


「村上、俺はホテルダイヤモンドに向かう。もしもホテルマジェスティーから出てきても駅に向かう道の途中にホテルダイヤモンドがあるから」

 言い捨てて電話を切り教室を出て下駄箱で靴を履き替えてラブホに向かって走る。


 杞憂であって欲しい。全ては勘違いで家に帰ったらヒナが笑って電話に出てくれたらいいと思いながら心臓が破れるんじゃないかって勢いで道を走る。


 学校の最寄り駅から一駅離れているが電車に乗るより直線距離を全力で走った方が早い。水泳部の名物冬の走り込みのおかげだ……初めて先輩のしごきをありがたいと思う。


 ホテルダイヤモンドが見えてくる。ゆっくり立ちどまって息を整える間もなく目の前でラブホから腕を組んでヒナと西田が出てきた。

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