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第52話 未成年にお酒は絶対NG

「二人の若者の無事故と健康を願って、かんぱ~い」

 乾杯の音頭を取らされたみなもさんが無理矢理なテンションで乾杯する。

 賭けに負けておごらされる時点でみなもさんのモチベーションとテンションは下がりまくっている。


 ゴクゴクゴク……ぷはぁ。ちなみに大人二人の前に置かれているのは生ビールの大ジョッキ。それを二人とも同時に飲み干してドンっと机に置く。


「まだまだ衰えてないようね、()()()……20代も曲がり角を迎えてそろそろ楽勝かと思ったのに」

「あなたこそ……教師の激務でお肌はとっくに曲がっちゃってるみたいだけど」

 二人揃って二杯目と注文しようとジョッキを持ち上げて声を上げている。この二人仲いいのか悪いのか、そして明日は仕事だろうに本当に大丈夫なのか?


 まあ大人は自己責任だ。俺は目の前に置いてある赤々と燃える炭が入った七輪に向かって黙々とお肉を焼いては一番単価が高く、焼き加減のいい肉を陽菜の取り皿に置いていく。焼き肉奉行と呼びたければ呼んでくれ。

 陽菜のために肉を焼くのは俺の仕事やくとくだ。


 陽菜が食べるはしからお肉が追加されるのでまるで()()()()()のようだ。

 陽菜は嬉しそうな顔でたまにウーロン茶をストローでちゅうちゅう吸いながら、ハラミにサガリ、カルビにミスジにロース、ねぎタン塩と高級なお肉をどんどん食べていく。「美味しいね恭ちゃん」とニコニコ顔だ。


 陽菜は心臓の移植手術をしていて免疫抑制剤を使っているので食べ物には気を遣う。生焼けなどは以ての外だし、取り箸と食べる箸を共有するなんて言うのも論外だ。

 ちゃんとトングでよく焼けた物だけをお皿に盛ってやる。


 テーブルの席順は、時計回りにちさと先生、みなもさん、陽菜、俺の順なので俺の右隣の辺に陽菜が座っていて取り皿によそってあげやすいベストポジションだ。


 陽菜が食べている合間に自分の肉を焼いて食べていたら、酔っぱらった国語教師が陽菜用に牛肉を飼育(焼き具合を調整)していた俺の牧場テリトリーに襲い掛かってくる。

「く、負けませんよ、ちさと先生! 美味しいお肉は全部陽菜のものだ!」

 トングでしばらく攻防し、焼けすぎた肉と脂身が多い肉を全部国語教師に押し付けることに成功した。


「みなも~……この辺のお肉(あぶらみ)美味しそうに焼けてるわよ~」

 ちさと先生は友人の世話をやくふりをして隣のみなもさんの取り皿に脂身を放り込んでいる。

 酔ったみなもさんはそれをバクバク食べているが見ているだけで後で胃もたれしそうな光景だ。


「そこのおに~さ~ん、飲み物注文(ちゅ~も~ん)」うちの担任が通路を歩いている男性店員を呼び耳元でごにょごにょと何か注文している。


 すると、カルピスの白色をした飲み物がストローが刺さっていない状態で4つやってくる。

 テーブルに置かれたその飲み物のコップに陽菜が手を伸ばしたところで陽菜の手を握る。

「未成年にお酒は絶対NGに決まってるでしょうが!」

 担任とか関係なく雷を落とす。陽菜に何飲ませようとしてやがる!

本日朝の投稿が出来ていませんでしたので15時に一話投稿いたします。

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