第34話 ゴリマッチョのことか───────っ!!!!!
下駄箱の位置も教室の場所も何もかも記憶の中の元の世界とあんまり変わらないようだ。
俺の部屋みたいなプライベートスペースと違って公共の場所にそんなに変化は起こらないのかもしれない。
「きょーすけひどいよ。入院中に一度も連絡をくれないなんて」
教室に着くと知らない女の子(?)が声をかけてきた。
髪の毛をかなり短く切っていてショットカットの爽やかなボーイッシュな女の子だ……と思ったけどなんで男子の制服で学生ズボンを履いてる?
「何その顔……止めてよね、記憶喪失とか言ったら怒るから」
プンプンと音が出そうなほどほっぺを膨らませている可愛い女の子(?)
おかしい、前の世界の時の1年5組にはこんな子はいなかったし、クラスの女子は風紀委員のアイツ以外はほぼ全員お見舞いに来ているはずだ。
「もうッ! あんまり意地悪すると怒っちゃうんだから!」
何この可愛い生き物!? 陽菜以外でこんな気持ちになったことがないので戸惑う。
「え~と……ヒント貰える?」
両手を合わせてウィンクしてみる……怒っているのか真っ赤になってプルプルしているけど答えてくれた。
「水泳部……水着……写真集」
赤い顔で教えてくれたヒント。分からないけど水泳部でいつも女の子のエッチな水着の写真集を見せてくれた同級生と言えば村上のことが真っ先に思い浮かぶ。
「村上……」懐かしくてつぶやくと目の前のボーイッシュな子の顔がぱぁっと明るくなった。
「きょーすけ……思い出した? 僕は村上ゆうきだよ」
キラキラした瞳で見つめられる。
むらかみゆうき…? む・ら・か・み・ゆ・う・き? 村上祐樹!?
ゴリマッチョのことか───────っ!!!!!
元の世界での俺の親友・村上は確かに村上祐樹という名前だった。
っていうかアイツ女の子にモテたくてプロテイン飲みまくって筋トレしまくってムキムキマッチョのむくつけき立派なオスゴリラに成長していたが、そのままだったら天然物の美少女と見間違わんばかりの美少年だったってこと?
絶対こっちの方が女の子にモテるだろ。
こっちの世界だと女子にモテたいって思わなかったから筋トレに走らなかった結果、ダイヤの原石がカットに失敗せずに天然の状態で残ったってこと!?
あ、向こうの世界の村上のことをカットに失敗したクズダイヤって言っちゃった……ゴメン。
頭の中のCPUが熱暴走でフリーズして立ち尽くす俺に村上(可愛い)がぎゅっと抱きついてきた。俺の村上どこに行った?
村上登場です。