第30話 母親がなでなでしてくる(陽菜回想)
ドタドタドタドタ
アルバムを掴むと階段を転げ落ちそうな勢いで降りる。
「お母さん、これ見て!」
アルバムを開いて恭ちゃんのおちんちんをお母さんに見せる。今の自分が振り返ると当時の私の行動は痴女(痴女子?)そのものだった。
「あらあら、恭介くんのおちんちんね。ずっと独り占めしてお母さんには絶対見せないって言っていたのに見せてくれる気になったの?」
ちょっと嬉しそうに話すお母さん。おちんちんの写真だよ? なんで娘のコイバナを聞いてる母親の表情でほほえましい顔してるの?
「お、お、お、おちんちん」
真っ赤な顔でそれだけ言う自分も大概だった。
母親がなでなでしてくる。なにこれなにこれ?
「ち、違うの……日記を探してたらおちんちんの写真が出てきて」
焦れば焦るほど自分が何を言っているのか分からなくなる。心を落ち着けようと思って深呼吸する。
「最近は撮らせて貰えてないのね。大丈夫。陽菜ちゃんが心を込めてお願いしたら恭介くんも折れちゃうから」
ページをめくりめくりして恭ちゃんのおちんちんの写真に釘付けになりながらお母さんが言うがそんなことがしたいわけではない。
「大丈夫よ、お母さんもお父さんの小学生の頃から、初めて剥けた時、二人の初体験の直後と最近の元気がなくなるまで全部撮って残してるんだから」
どどどどどうしてこうなった~~~!? ……自分の両親のそんな話は聞きたくなかった~
そんな風にして私は私が今まで生きてきた世界と常識が違う世界で生きていくようになったことを理解した。理解したくなかったけど。
多々良くんのおちんちんの写真を撮りまくっていた小学生の頃の私は友達の岩清水しずくちゃん達から「エロ師匠」と呼ばれて一目置かれていたらしい。
病院を退院してからは中学校で皆の話すそういう話に全然ついていけなくなったので、ニコニコしながら皆の話を聞くだけ聞いていたら、「エロ師匠はもう私たち処女の話をはるかに超越した境地に到達した」「入院中に担当医の男性医師との禁断の恋があった」という噂がまことしやかに流れて「エロビッチ師匠」とか「エロ尊師」に称号をレベルアップしようという話が出てきてしまったので全力でそう呼ばないようにお願いした。
本当にどうしてこうなった……