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第3話 陽菜という女の子を思い出すと

 俺のカノジョのヒナは幼稚園からの幼馴染だ。小さな頃の陽菜はあまりカラダも強くなくていつでも俺にちょこちょことついてきた。

 家も近かった俺は陽菜の母親から「陽菜ちゃんのことをお願いね」と頼まれていた。だから陽菜のことを守るべき対象だと思い同い年にもかかわらず何かと世話を焼いていた。


 幼稚園のスモックのボタンを留めたり、通園時の荷物まで全部取り上げて運んでいたのだから今考えてもヤリすぎだったと思う。

 でも陽菜がいつでも嬉しそうな顔をして微笑むので、その笑顔が見たくて頑張っている自分がいた。

 そう、小さな頃から俺は陽菜のことが大好きだったのだ。

 だから陽菜という女の子を思い出すとあの頃の笑顔が一番に浮かぶのだ。


 そんな二人の関係が変わったのは中学一年生の時だった。体が弱く小さかった陽菜は心臓に重い疾患を抱えていて成人するまで生きられないと言われていた。

 心臓の移植手術しか治療法がなくても笑顔で生きている陽菜のために両親は必死だった。

 そんな必死の思いが天に届いたのか……それは一人のドナーにとっては不幸なことなのだから手放しで喜ぶべきことではないのは分かっているが陽菜の周りの人間は歓喜した。


 必ず成功する手術というわけにはいかなかったが、陽菜は試練に打ち勝った。臓器移植は成功し強い拒絶反応もなく新しい心臓は陽菜に定着した。

 皆はこれから先の陽菜の人生が続いていくことを喜んだ。臓器移植をした陽菜はこれから先も大変なことがあるだろうけど俺も一番そばで支えていきたいと思った。


 が、その後の陽菜は変わっていった。何といえばいいのだろうか、あけっぴろげになったといえばいいが、平気で下ネタを言うようになった。それまで恥ずかしがり屋だったのにそういうことを気にしなくなった。

 そして何より、俺との思い出を語らなくなった。手術前の陽菜は俺との思い出を毎日日記に綴っていて、恥ずかしいから俺のことを書くの禁止と言ったら泣かれたのは申し訳なくもいい思い出だった。


 あまりのヒナの変わり方に陽菜の両親も俺も心配するが、ヒナは心配されること自体がイラつくらしく「これで健康に生きられるんだからもうアタシのことは放っておいてよ」と言い放ち露骨に距離を取られるようになった。


 臓器移植をしたら性格が変わったという俗説を聞いたことがあったが陽菜は心臓の性格に引っ張られてヒナになったのかもと、科学的根拠がないことを知りながらも思わずにはいられなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] もしかしたら、聞くまでもないかもなのですが。 陽菜の日記に恭介が自分のことを書かないでと言って泣かれた直後に、書くのを許してあげて泣き止んでもらったのかななんて。 こちらのアカウントです。…
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