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第295話 委員長はこっちの方でも優等生なんだね

 心愛ちゃんは13日まで2泊3日で滞在するということだったので心愛ちゃんを連れて陽菜の家に挨拶に行く。

 うちの母さんに俺が説教された後は何故か心愛ちゃんまで大人しくなったので連れて行っても大丈夫だと判断する。


「へぇ~、このおねぇちゃんが恭にぃの恋人なんだぁ~♡ 心愛が陽菜おねぇちゃんが恭にぃの恋人にふさわしいか見極めてあげるねぇ」

 俺への殊勝な態度もどこへやら、生意気な口調で陽菜を煽っていた心愛ちゃんだったが1時間後には陽菜にトロトロに甘やかされて陽菜の膝で一緒に少年探偵団を読んでいた。


「心愛ちゃんって可愛いね。クラスでも人気者なんじゃない?」

 ツインテールだった心愛ちゃんの髪の毛に櫛を入れて、陽菜がとんでもなく複雑に編み込んで可愛らしいお姫様みたいにしてしまった。

 あまりに可愛いんで陽菜と2人一緒の写真を撮る。後で父さんの妹、つまり俺にとってのおばさんにこの写真を送ってあげよう。


「ん~、クラスの男子なんてガキばっかりだし。ちょっとおちんちん触ったくらいで大騒ぎして逃げたり泣いたりするからつまんないよ。恭にぃみたいに堂々としてて()()()男がいい」

 流石に陽菜の笑顔が引きつっている。異文(異世界)化交流(コミュニケーション)だなぁ。


「男の子には優しくしてあげないと。心愛ちゃんが男の子に優しくして他の女の子から護ってあげたら男子はみんな心愛ちゃんの優しいところを好きになっちゃうと思うけどな」

「う~ん、陽菜ねェがそういうなら。それでもいいけど……恭にぃは男子を守るような女の子は好き?」

「うん、カッコいいしイイ女だと思うぞ」

 陽菜の例えが男女逆転してる元の世界の俺の()()()()()()()と思うとちょっと照れ臭いけど。


「そっか~、未来の旦那様にそう言われちゃったらそういう風になるしかないよね~」

 ん~、こっちの心愛ちゃんも俺のお嫁さんとか言い出しちゃったんだけど。

 こそっと陽菜が「未来の旦那さんはきっと別に見つかるよ~」とか言って予防線を張っているのがおかしくて可愛い。


 そんな心愛ちゃんが陽菜にも懐いてその夜も次の夜も心愛ちゃんを挟んで川の字で寝ることになってしまった。

「陽菜、起きてる?」

「うん、まだ起きているよ」

「俺たちの子供は女の子だったら男の子を守れるような優しい子に、男の子だったら女の子に負けない、だけど女の子にも男の子にも優しい強い子に育てようね」

「私は心愛ちゃんみたない女の子も可愛いって思うけどなぁ。でも恭介くんがそう思うなら優しくて強い子になるように育てようね」

 心愛ちゃんを撫でながら陽菜が約束してくれる。その微笑みは本当のお母さんみたい。


 俺はメスガキの心愛ちゃんと最初喧嘩になりそうになった(大人げない)けど、陽菜には可愛い女の子ってだけみたいだった。

 う~ん、俺もまだまだだなぁ。




「それじゃあ、恭にぃと陽菜ねェ、お正月にまた来るから。また一緒に遊んでね」

 心愛ちゃんは迎えに来たおばさんがびっくりするほど素直になっていておばさんが驚いていた。別れを惜しむ心愛ちゃんを見送ってから2人の部屋に戻る。


「陽菜って本当に免疫抑制剤の制限がなかったら保育園の保母さんとかも向いていたかもな」

「う~ん、どうなんだろう。でも短大の家政科に行きたいっていうのは恭介くんと私の、そしてみんなの子供を育てるのにいろいろできた方がいいかなって思ったからなんだよ」

 俺の顔を見つめながら陽菜が告白する。そうか、そういう風に考えていたんだ。


 自分が出来るやり方でみんなの夢を応援したいっていう陽菜らしいやり方。陽菜の手をギュッと握る。

「だったら応援する。もちろん応援するだけじゃなくて一緒にそういう未来を作っていくから。陽菜の夢は1人じゃ絶対できないことだもんな」

 そう言いながらキスをする。部屋に戻る前にしっかりと歯磨きやうがいまで済ませてきた。


 真昼間からになるけど陽菜と深くつながって愛しあう。

 ひよりとみおと行ったインターハイでの北海道旅行からこっち陽菜とはちゃんと出来ていなかったら久しぶりで求めてしまったのもある。だけど本当のところは明日の夜にはまた東京に向けて出発するので少しでも一緒にいたかったっていうのが大きい。繋がることでお互いの気持ちを伝えあう。


 陽菜の気持ちを知れば知るほど陽菜のことが愛おしくなって大事になっていく。陽菜がいない世界を考えることが出来ない。こんな俺だから陽菜は自分がいなくなった後のことまで心配しちゃうんだと思う。

 ちょっと自分が情けないけどこういうことに気付けるようになったのも成長だと思うことにしよう。




 旅行の準備をしながら翌日の夜まで陽菜といちゃつき、夜8時に夜行バスに乗り込んで東京に向かう。

「恭介さん、来てくれてありがとう。今回の『貞操逆転世界』は自信作なんだけど()()()()()()()()()()()んじゃないかって不安がどうしてもあって」

 しずくみたいな女の子でも不安になることがあるんだなぁ。まあ当たり前か。作品に関してはほぼノータッチで半分部外者みたいな当事者《別世界人》だからこそ気楽な立場で支えてあげよう。


「きょうすけ、夏コミ手伝ってくれてありがとう。男子と夜行バスとかそれだけで興奮する。そういう同人誌も読んで来たから予習はばっちり」

 芥川理央の方は相変わらず絶好調のようだ。()()()()()()()して何をするつもりなのやら。たまには弱って可愛くなってる芥川も見てみたいものだけど。




 バスは一路東へ。翌朝東京駅で夜行バスを降りて会場に移動してからは、怒涛のような人、人、人の群れに圧倒される一日だった。とにかく熱気が凄い、汗が蒸気になって雲が出来そう。

 会場ではしずくに渡されたうちの学校のものではない男子用の制服を渡されて着替えさせられてそのまま売り子をさせられる。

 しずくと芥川も女子のセーラー服の夏服で売り子。しずくのセーラー服が新鮮でドキドキする。


 この期に及んで気付いたが「恭介くんと(俺がモデル)恭しずくちゃん(の同人誌)シリーズ 四部作」の制服だった。群がるように血走った目の女子がシリーズを買い求めて俺までサインをさせられる。

 名字までバレるわけにはいかないので「恭介」だけ書いて握手する。なにこの羞恥プレイ。完全にしずくと芥川にハメられてるよね?


 肌着はちゃんと着てるから乳首透けはしてないけど生地がペラペラのコスプレ制服は汗で濡れ透けそうで怖い。会場の熱気に当てられて結構汗を書いちゃってるし。

 エッチなコスプレ着せられて売り子をさせられる(元の世界の)エロ同人誌みたい。

 もっとも俺がいた会場は女性向けの18禁同人誌だらけだから周りにいるのも女性だらけだし……お化粧と汗のにおいもきついから勃起するどころか正直つらいです。


「完売で~す。通信販売でも扱っているので電子書籍もお願いしま~す」

 結局、新作の「貞操逆転世界」も完売し満員御礼の状態で今俺は1人でブースでお留守番。

 たまに俺を見つけてしずくのサークルのファンの女の子が推しにあったみたいに興奮して握手を求めてくるくらいで暇は暇だった。疲れたけど。

 しずくと芥川は自分たちの欲しい同人誌を買いに駆け回っている。俺? この世界の男性向け同人誌は俺が見たいやつじゃないからパスしてる。


 しずくたちが戻ってきた戦利品を箱詰めして発送準備、しかしどこのサークル見ても手際がイイね。売れてる売れてないはあるかもしれないけど、お祭りって感じが凄い。


 明日の飛行機の時間までどうしようかなと思っていると、芥川は東京の大学を受験するつもりらしくて東京に出ている現視研の先輩女子の家に行ってお泊りするらしい。東京での生活についていろいろと教えて貰うみたい。


 しずくが芥川から見られないようにこっそりと俺の裾をギュッと握ってくるのでドキドキする。


 俺のカバンの中には陽菜が渡してくれたコンドームが入ってるからなおさらやましい気分に。しずく相手には初体験以降ずっとお預けしていたのも相まって芥川と別れてからしずくとラブホテルに入った後は一晩愛しあってしまった。

 今回のコスプレ用のセーラー服を着てもらったり、しずくにおさげとメガネの委員長モードになって貰ってあの頃の俺たちの口調でエッチしてみたりした。


「委員長……凄く上手だよ。やっぱり委員長はこっちの方でも優等生なんだね」

「多々良くんのエッチ。こんな事してあげるのは多々良くんだけなんだから。委員長だからってクラスの男子だったら誰にでも優しいわけじゃないんだよ」

 破壊力抜群すぎて脳が死にました。陽菜にも「多々良くんモード」をお願いしたくなってしまった。


 あの疑似精液フェイクザーメン事件の時には飲ませなかった実物の精液もごっくんして貰ったり。しずくとのエッチは2回目だけどごっくんをすっかり気にいっちゃってまるで同人誌《薄い本》みたいに嬉しそうに飲んでくれる……あんなマズいのに飲んで貰えるのは嬉しいけどさすがにそれはエッチすぎだから。


 しずくのサービス精神とむっつり精神のおかげで夜が明けてお昼のチェックアウトまでたっぷり楽しんでから、空港まで送ってもらう。

 陽菜が「しずくちゃんはいっぱい我慢していた」からってコンドームを10個も渡してくれたけど本当に使い切る勢いだったのは驚いてしまう。


 同人作家しずくコスプレイヤー()のオフパコ? という状況にしずくが妙に興奮してたけどこういうのをやってみたくて連れてこられたのかなと邪推してしまう。

 俺の方も気持ちよかったし興奮したから全く否定できないけど。





 空港に向かうモノレールの中でしずくがぽつりとつぶやく。

「私のコミケはこれが最後かな……流石に今年の冬には受験に向けて本格的に勉強に集中しないと医学部受験は難しいと思うし」

 そうか、ちょっと強引にでも俺に来て欲しかったのはそういう理由もあったのか……しずくの肩を抱いて抱き寄せる。

 電車の中だからあんまり目立つのはどうか思うけど今は人の目よりもしずくが大事だった。

「大学に合格して大学生になってからだって、それこそ医者になってからでも趣味として続ければいいじゃないか。俺もみんなもついているし応援する。

 流石におじさんになっちゃったら()()()()のコスプレはきついけど、しずくがやりたいと思うならいつまでだって続ければいいんだよ」

「ありがとう……恭介さんはおじさんってイメージにはならなさそうだけどね。まずは陽菜ちゃんの主治医になって見せるから受験も応援してね」

 そのまま二人で顔を寄せ合うようにして流れていく車窓の風景を見ていた。


 空港からはそれぞれ別方向の飛行機で飛び立つことになるから、モノレールを降りてから羽田空港の搭乗手続きカウンターまでずっと恋人繋ぎで手を繋いでいた。

 空港には芥川がすでに到着していて一緒に帰るしずくを待っていた。


 眠そうな目でテンションが低いくせに目ざとい芥川が俺たちの恋人繋ぎを見つける。

「しずくときょうすけはセフレなのに恋人繋ぎ。ひょっとしてオフパコで絆が深まって姫川さんから寝取った?」


 とんでもない噂を立てられたりしないようにしっかりと口止めして友達にはいつか俺たちの関係についてちゃんと話さないとなぁって思った。

恭介は無自覚だけど周りからは性的な目で見られまくってます。

この男子があの……みたいな感じで同人誌の中身を比べられてるので正直しずくさんはアウトですね。お仕置きした方が良かったのでは。

生徒会選挙の頃の病み恭介だと悪化したかもしれません。

あっ、あの頃なら元々ついてきませんね。


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