第238話 今の状況は俺から見るとお預け感が半端ない
第二部より一日一話更新とさせていただきます。
この世界で生きていくと二人で誓い合った俺と陽菜だが(まあ別の世界に行くという選択肢が存在しない以上この世界で生きていくのだ)、二人で摺合せしないといけない大きな問題があった。
一つは俺たちが異世界からの入れ替わりであるというとんでもない事実を家族や友人に話すかどうかということだ。
これに関しては俺もまだ再会したばかりの陽菜にはいつか本当のことを話せる日が来るといいなって思っていたのは事実だ。
もしも今目の前にいる陽菜が元々この世界で生まれ育っていたとしても俺は陽菜のことを愛していれば自分がよく似た世界からの入れ替わりであることを正直に告白しただろう。
だから今の俺は少なくとも自分の両親と陽菜の両親には話すべきだと思っている。今まで育ててくれて、その上で中身が別人なんて許してもらえるかどうか分からないけど、伝えずに生きていくわけにはいかないと思えるのだ。
そして、俺は友人たち……しずくやひよりには一生黙っていようと思っていた。だけど陽菜は違ったようだ。
陽菜にとっては俺が陽菜に話したいと思っていたのと同じように、ひよりやしずくたちに正直に自分のことを話したいと思っているのだ。俺にだって話したいという思い自体はあるし。
だから話すなら二人一緒にだし、話さないなら二人とも話さない。この件についてはもう少し話し合ってから結論を出そうということになった。
そんな風に陽菜と色々なことを相談しながら数日過ごすと、あっという間にテスト週間が迫ってきた。6月の最終週が1学期末のテスト週間なので陽菜の誕生日である6月25日はまさにテスト前日。
皆で集まって勉強するならともかく、陽菜の誕生日パーティーをやっていて藤岡や丸川が赤点を取るようではどうしようもないからテスト前日の集まりはしないことになった。
ただ俺に関しては陽菜の家のアットホームな誕生日会にお呼ばれしている。といっても陽菜とさちえさんと俺の三人だけだけど。
「「陽菜 (ちゃん)、誕生日おめでとう!!」」
パンッパァーン!!
さちえさんと俺でクラッカーを鳴らして陽菜をお祝い。本当に生まれてきてくれて、手術を乗り越えて生きてくれて良かった。
「陽菜ちゃんが彼氏に誕生日を祝ってもらえる日が来るなんて……」
さちえさんがガチ泣きしてしまったので、二人で背中をさする。この人も考えてみれば大変だったんだよな。
産んでしまった自分の責任ではないとはいえ、娘の心臓には先天性の疾患があり、せっかく無事手術が終わったらこの世界の女の子とは思えないほど性的なこと消極的な女の子になってしまって女としての幸せなんて一生味わわせてあげられないかもと心配していたはずだから。
だからこうして俺が陽菜の恋人となったことをこれだけ喜んでくれるのだ。
……絶対どこかでこの人は落してくるはずだから油断はしないけど。
流石にお祝いの席で「チース、俺たち異世界人で~す」って挨拶するほど俺たちの頭もおかしくないので、いつか俺の両親と陽菜の両親を全員揃って貰って話をしようと思っている。
いや、俺の母さんとさちえさんの二人には事前に話しておいた方がいいのかな? どうせ親父と叔父さんは何を聞いても妻の言いなりだから。
「それで……陽菜ちゃんの初めては無事に恭介くんと済ませることが出来たの? 恭介くんなら大丈夫だと思うけど……」
本気で質問されているので陽菜は真っ赤になってしどろもどろになりながら「ま、まだ私には早いから」と答えている。
実はこれが俺たちの抱えるの二つ目の問題。摺り合わせるもなにも陽菜がどう考えているのかを聞けていないのだ。エッチはまだ早いの一点張り。
実は俺はついこの間まで本気で陽菜は肉食系の可能性が高いと思い込んでいたので付き合いだしたら即エッチ出来ると考えていたのだ。いや、好きな子と付き合ってエッチを我慢する理由なんてないでしょ?
なので今の状況は俺から見るとお預け感が半端ない。
陽菜が俺《恭ちゃん》のことをメチャクチャ信用してくれているので何度かベッドを共にしているが本当にキスしただけで全力で自分の欲望を抑え込んでいるのだ。
キスだって唇を軽く触れ合わせるようなキスだけ。
それだけで陽菜はうっとりしたような表情になって頬を染めてめちゃくちゃ可愛いので満足してはいるのだが、やっぱり俺としてはベロチューしたいのである。
ただ、陽菜は免疫抑制剤を飲んでいるので本気でベロチューしようと思ったらまず俺自身の体温を測って健康確認したのち、歯磨きをしてイソジンで口を洗って少しでも菌やウイルスの不安がない状態にしないといけない。
つまりヤル気マンマンみたいな状態でキスに臨むのだ。処女で俺のことを信じ切っている陽菜にヤル気マンマンで迫るのもなぁ……
なんて風に思っているとあっという間に俺の禁欲生活がさらに1週間更新されて明日でテスト週間が終わろうとしている。
何とか陽菜にエッチしたいという話題を切り出してテストが終わったらエッチ解禁に持っていきたい! 安〇先生……!! エッチがしたいです………
明日がテスト最終日なのだが、その中に保健体育のテストが含まれているので今俺たちは陽菜の部屋で勉強をしている。
陽菜の勉強机ではなく小さなテーブルを持ち込んでそこにノートを広げて二人で向かい合ってテスト勉強の最中だ。
前にも書いたと思うがこの貞操逆転世界ではテストに出るようなことでもちょこちょこ元の世界と常識が違うので油断するとテストで手痛い失敗をする。
例えば保健の授業でやっていたが元の世界では避妊はコンドームをつけて、頼みにくくても自分の身を護るために女の子の方からお願いしてつけてもらえるようなパートナーを選びましょうって話を聞いた覚えがあるが、こっちでは男が身を護るために自分でコンドームをつける。女子からの性病の罹患を防ぐためと望まない女子相手に子種を奪われないためである。男性用自衛膜。う~ん、頭が痛い。
女性用のコンドームについては存在はしているのだがあんまり人気がなくて「使いにくくてちょっと感じにくくなる」などの露骨な使用感が不人気の理由なのだとか。あと意外と避妊性能が低いのも喜ばれないみたい。せっかく使うならちゃんと避妊したいだろうからね。
女性側の避妊方法で一番人気は避妊薬で次がリングと呼ばれる子宮内避妊具でこれらはどちらも避妊率も高いし、手間がないし女性の感じ方に影響しないので喜ばれるらしい。本当にこの世界の女性はエッチだ。
まあ偉そうなことを書いているけど俺は生エッチ童貞なんだけどね。ヒナの体を思ったらコンドームなしのエッチなんて出来なかったし。まあそのせいでいろいろあったわけだけど。
それにそれを言い出したらこの世界では体は童貞だから今の俺は完全に童貞なのか……心は経験済み、体は童貞。
陽菜は中学からこっちの世界にいるから意外とこの世界の常識に馴染んでいる。
それはそうだよね。中一のはじめにこっちに来たってことは小学生の性知識しか持ってない状態でこの世界の常識を学んだんだもんね。女の子が裸を隠して男が上半身裸とか、そういう表面的なこと以外はハイブリッドになっちゃってるのが陽菜の常識なのだ。
でもそうだったらなおさらなぜ「エッチは私にはまだ早い」なのか?
もうこれはストレートに聞くしかない。保健の試験勉強をいいコトに陽菜にセクハラ質問を敢行する! 二人の間のコミュニケーションを密に! 隠し事などない素敵なカップルになるのだ!
「陽菜ってなんでエッチがまだ早いって思ってるの?」
「え!? えっと……なんでそんなこと聞くの?」
「いや、保健体育の教科書見てもこっちの世界の女の子はもう普通にエッチしたいって思ってムラムラしている年頃なわけでしょ?
陽菜は元の世界の女の子だから性的にそういうことをしたいってそんなに強く思ってないのは理解できるけど、こっちで性教育受けてるのに『まだ早い』ってどういうことかなぁって……」
「え、えっとね……恭介くんのおちんちんをペロペロしたりするのはちょっとまだ私には恥ずかしくて……それにエッチする時って私の全身をじっくり見られて……あ、アソコを舐められちゃったりするんだよね?」
真っ赤になって答える陽菜……ヤバいです。股間が痛いくらいで股を押さえてうずくまるしかありません。
なんでこの子、いきなりそんなアグレッシブなプレイをしようと思ってハードル上げてるの? 確かにフ〇ラもク〇ニもして欲しいししたいけど! 処女がいきなりそこまでしようとするなんてハードルが高すぎて陽菜が怖くてエッチを躊躇した理由が判明したよ!
「えっと、部屋を暗くしてその、正常位でちゃんとコンドームをつけてエッチするっていうのでもダメ?」
なぜ俺が元の世界の処女みたいな提案をしているのか? 俺は男でオオカミなんですが! あれ? 一周回って普通に口説いてる? もうわけがわからないよ。
「だってしずくちゃんのマンガにそう描いてあったから……恭介くんもああいう風にエッチするんでしょ? 私にはまだ早いし無理だもん」
……全部しずくのエロ同人誌のせいでした!
確かにしずくの家で「きょうすけくんとしずくちゃん vol.3 ラブラブエッチ編」を確認した時陽菜も一緒に見ていたけど、あのせいでエッチが出来なかったとは……
とりあえず、しずくに八つ当たりでお仕置しておこう。
※追記 女性用コンドームの下りから書き足しました。まだ検討の余地はあるけど貞操逆転世界の避妊はこういう感じってことで理解して貰えればと思います。
〇西先生と言えば、スラムダンクって貞操逆転世界だとどうなってるんでしょうね?
桜木がフラれ王って設定がなくなって、晴子ちゃんがむしろ積極的に男子に迫って、流川は女の子に追いかけられて女に興味がない。
あれ!? 流川だけ変わらない?