第228話 またどこかに連れ込まれてるんじゃないか
ひよりの体を拭いて浴衣を着せると、改めてひよりが真っ赤になってしまった。
自分の痴態を思い出したらしい。まあ、俺の方も一糸まとわぬひよりの裸を全部見ちゃったから今真っ赤な顔をしちゃってるわけだけど。
「恥ずかしいついでに言ってしまうが、もしも陽菜ちゃんの許可が出て恭介が精子ばんくに登録したらいの一番に報告して欲しい。子供を産むなら恭介の子供を産みたい、他の男の子供なんて欲しくない」
真っ赤な顔をして俺に告げてくるので、「クスリを使って子種だけでも貰えると嬉しい」んじゃなかったっけとからかってやると、胸をポカポカと叩かれた。
「あの頃は恭介の本当の良さを分かっていなかったしこんなに好きじゃなかったんだ、忘れて欲しい」
すごく可愛い顔で言われたら今の言葉も併せて一生忘れられそうにない。
ひよりが駅まで送ろうと言い出すが、絶対安静だからダメと返事したら護身用と言って竹刀を一本渡された。
痴女対策に竹刀とか大げさと思うけどスタンガンを使われる話とか聞くとありがたく借りておく。
しかし、俺ってそんなに頼りないのかな? ひょっとしたら足を怪我してまともに歩けないひよりより弱かったりして。
ひよりの家の玄関から送り出されてスマホを見ると陽菜からの着信が20件以上、メッセージもいっぱい入っていた。お風呂に入っている間に着信したものらしい。
ヤバいっ……っていうより終電間近のこんな時間まで心配させてしまったことを反省する。
新幹線で家に帰って来て、俺の部屋の窓にいっこうに明かりがつかないから心配していたらしい。こっちから電話をかけよう。
プルルルルル プルルルル ガチャッ
『もしもし、恭ちゃん!? 大丈夫?』
焦ると陽菜ってたまに俺のことを恭ちゃんって呼ぶよね。久しぶりに聞くけど。
「ゴメン、今ひよりの家から終電で帰ってるから、あと30分もしたらそっちの駅に着くから」
『ああ、ひよりちゃんの家にいたんだ、良かった。電話に出てくれないから谷垣先生に送るって言われて騙されてまたどこかに連れ込まれてるんじゃないかと思って……』
ちさと先生……日頃の行いのせいで陽菜の中の信頼がストップ安です。今回竜王旗剣道大会で何の得もないのにあんなに尽力してくれたのに。
ちさと先生の冥福を心の中で祈ると、ひよりと裸で抱き合っていたことは絶対に内緒だなと思う。
告白しようと思う相手がいるのに俺は何をしているんだろうか。ひよりとは間違っても一線を越えることはないと思うけど。
『それじゃあ、今からお母さんと車で駅まで迎えに行くから。私たちの方が先に着くと思うけど絶対に駅から外に出ちゃダメだからね。電車は車掌さんがいる車両にいて痴女に会ったら絶対に車掌さんに助けを求めて』
陽菜もこっちの世界の女の子だなぁ……痴女に対する警戒心がハンパないね。
『恭介くん! 真面目に聞いてる? そんな態度だと後でお母さんと一緒にお説教するからね。とにかくこっちはもう出る準備が出来たから駅で合流ね』
電話が切られてしまった。俺の中で世界一の痴女である痴女 of 痴女のさちえさんから痴女について説教されるの? なんか納得いかないんだけど。
駅に着いた俺を車に積みこんで、陽菜の家に連れ込まれた後、遅い時間だったので陽菜は先に寝かせて俺だけさちえさんにガチ説教で30分絞られた。
マジで納得いかないけど、事例で聞かされた痴女の犯行はマジで怖かったので迎えに来てもらえて良かったと思う。
ここまでこの作品に付き合って来ていただきありがとうございます。
お疲れさまでした。いよいよ最終イベント、あと9話で最終回です。
……というつもりで書いていたんですがこの後倍ぐらい続いちゃうんです。初期構想の最終回はまさに9話後。
『第一部完』まであと9話。恭介と陽菜の両片思いの結末をご覧ください。