第199話 恭介さんの悪い噂が払拭できてよかった
学校内は阿鼻叫喚の地獄絵図だった。ティッシュに精液吐き出すもの。いつまでも口の中でくちゅくちゅ味わうツワモノ。クラスの予備分まで頂戴って欲しがるもの。あっという間にトイレに駆け込んで朝食まで戻してしまうもの。
女子高生の疑似精液に対する反応は十人十色だった。しかし一つだけ言えるのは流石は貞操逆転世界、みんな興味いっぱい夢いっぱいで精液を啜っておりキラキラしたいい顔をしていた。
結局今回の噂の根源は2年5組だけが疑似とはいえ、他の女生徒が味わったことのない精液を堪能してしかもそれが男子の手作りだったということが妬ましかったという気分の問題も大きかったのだ。
そこに俺の精液だという誤った情報が加わってここまでの風評被害と大惨事になってしまった。
今回学校のみんなの飲んだ疑似精液については動画で作成風景まで見せているので誤解の余地は確実にない。
なにしろ動画の中で藤岡がクッキングしている後ろで俺は後ろ手で縛られて(本当は縛られてないけど)棒立ち(どこがとか突っ込まない)だったのだから。
ピロン♪ピロン♪ピロン♪ピロン♪
「すごかった」「マズすぎ」「これはハマるわ」「MI〇ありがとう」「MI〇様神!」「今度は本物飲みたい」「次は多々良の直飲みで」……
藤岡と委員長のLINEにつぎつぎとクループラインでメッセージとスタンプが届いている。
「恭介くん、良かったね。これで変な噂とおさらばだね」
陽菜が俺に微笑みかけてくれる。陽菜にも彼女のフリをして貰ったりメチャクチャ助けられた。
クラスのみんなのおかげで今回の不評被害を乗り越えられた。陽菜とハイタッチする。
パァァァン! といい音が教室に響く。教室の他の女子もいい笑顔、女の子によっては涙ぐんでくれてる子までいる。
俺の目の前に委員長が立つ。
「恭介さん、今回は私のせいで本当にごめんなさい。でも恭介さんの悪い噂が払拭できてよかった……本当に良かった」
そう言いながら俺の胴体に腕を回してギュッと抱きついてくる。委員長は俺より少し背が低いのでお嬢様スタイルの委員長の髪に俺の鼻が埋まってすごくいい匂いがする。こうしていると本当におっぱいが大きくて柔らかいのが分かる。
手のやり場に困る。恋人でもないのに抱きしめるのも違うと思うし、陽菜の目の前だし。
泣いてるからこれぐらいいいだろうと右手で後頭部をなでる。
陽菜がいつもの彼女ムーブでお決まりのセリフを言おうとした瞬間、陽菜が後ろからガバッと藤岡に捕まり口元を押さえられる。
「ぷはぁ、み、みおちゃん!? なんでいきなり私を捕まえるの?」
「陽菜っちってさぁ、今回大変だったとは思うけど恭っちの恋人役したり結構おいしい目にもいっぱいあってるよね?」
藤岡が陽菜に昨日言っていた「陽菜の天下ももう終わり」という話はこれか?
周りの女子もうんうんと頷いている。
「今回のことであーしたちも分かったんだよね。
誰かが恭っちを独占するよりもみんなで仲良く共有した方が絶対に楽しいって。
やっぱりこんないい男を独占するなんてズルいよね。そこであーしたちクラスで話し合ったんだよ」
そこで今まで何も書いていない面がこちらを向いていたホワイトボードがくるりと上下に一回転されて裏面がこちらに向けられる。
そこには「みんなの恭介くん」と板面一杯に大きく書かれていた。
ということで疑似精液の問題は解決!
みんなの恭介くん編スタートです!