第198話 5・4・3・2・1……ゼロ! はいゴックン!
翌日、いつもよりだいぶ早く家を出て高校に向かう。陽菜も早起きして一緒に行くがお弁当を俺の分までちゃんと作ってきてくれているというので感謝しかない。
だって弁当を作るために俺よりもさらに早く起きたってことだし。
俺は今疑似精液の入った小分け容器を270本も入れた段ボールを抱えているので学校までの道すがら絶対に事故にあうわけにはいかない。
事故にあって内容物が飛び出し路上に散乱、それを車がひいた日にはある種のバイオテロになってしまう。
あたり一帯には栗の花の臭いが立ち込めることだろう。もしもその液体でスリップして後続車が事故りでもしたら伝説になってしまう。
これを学校に持っていき、各学年の各クラスにいる委員長の友達や学級委員の女子が自分のクラスに持って行って女子に一人一つ渡すことになっている。
その後は捨てようが舐めようがエッチなことに使おうが本人たちの勝手だから俺の関知する所ではない。一応希望者のためには踏ん切りをつけるためのカウントダウンをすることにはなっているけど。
ちなみに一クラスに一本ずつ、30mlほどだが市販のザーメンローションの試供品も付けてある。これはザーメンローションの会社との契約の際に試供品を提供してその使用感をインタビューして昨日の動画の最後につけることになっている。
よくある「※個人の感想です。効果には個人差があります」というテロップが付くやつだ。
各クラスで録画して藤岡の元に動画が集まるようになっている。流石に高校の制服は映さないようにするように注意はしてあるが、その辺は藤岡が上手く編集するだろう。
「おはよう、しずく、みお。今回はありがとうな」
「おはよう恭介さん。何言ってるの、元はと言えば私の責任なんだからできることをするのは当たり前でしょ」
「はよ恭っち、あの後編集して恭っちと陽菜っちの名前呼んじゃったところはピー音入れておいたから」
早朝の教室にもかかわらず委員長と藤岡と丸川が来ていて、他の女子もちらほら。うちのクラスの女子はもう飲まなくてもいいんだけど付き合いがいいというかなんというか。
「はい、師匠。こっちにあと3本なんだよ」
「えっと、1年5組の分だよね。うん、この3本で終わりかな」
陽菜と丸川がクラスごとのビニール袋に分けている。あとはこのビニール袋を各クラスの委員か今回の代表者に渡せば終わりだ。
小烏はいつもの服装検査で駆り出されているからいないし、ゆうきは男子だから精液なんて興味ないだろうから声が掛かっていない。
各クラスの代表が持ち帰って今カウントダウン中、うちのクラスの女子もなぜかみんな登校してきて小分けの疑似精液容器を手に待機している。手の平に出して指でつまみ上げたりクチュクチュしている女子もいる。
各クラスの男子は校舎の入口の所でうちのクラスの女子3人ほどで今女子だけの会合中だからちょっと待っててと説明して待機して貰っているので今この校舎内に男子は俺一人だけ。
ほぼ全校の女子が集まっているのに男子が俺一人というのはなかなか肩身が狭い。
「5・4・3・2・1……ゼロ! はいゴックン!」
時計を見ながら藤岡がカウントダウンして世にも最低な掛け声をかけた。
次の瞬間、校舎中に阿鼻叫喚が女子高生の悲鳴のような感想が響いた。
「「「「「「「「「「まっずぅっ!!!!」」」」」」」」」」」
作者もどうしてこうなったと頭を抱えた疑似精液風評被害も次回で最後です。