第151話 ひょっとして寝たふりしてた?
目が覚めると天国だった。
いや、一回死んでるからみんなから心配されるってのも分かってるし、頭がおかしくなったんじゃないかって思われるのも分かっているんだがあまりにも天国だったから許して欲しい。
なんか柔らかくてムチムチの枕で寝てるの。すごく柔らかくてムッチムチ。なんだろう……自分の体温じゃない体温を感じるような。
それになんか頭を髪の毛をくしけずられるみたいに……髪を梳いてくれてる感じで頭を撫でてくれてる……ここは天国ですか?……って分かった! 陽菜の膝枕だ。生まれて初めてだけど分かっちゃったよ。
だって頭の上から陽菜の声が聞こえるから。
「うん、うん、お母さん、恭介くんが疲れて寝ちゃったから……大丈夫だって……服も脱がせてないしおちんちんに手も出してないから!」
どう考えてもさちえさんにからかわれてるな。陽菜の膝枕に頭をのせたまま陽菜の手からスマホを奪う。
「さちえさん、ここは天国ですよ。おかげでぐっすり眠っちゃいました。一時間ぐらい寝ちゃっていたみたいですね。大丈夫です。陽菜は誰かさんと違うんで手なんて出さないですよ」
『もう恭ちゃんったら……陽菜ちゃんは私の娘なんだから油断したらパクってヤラレちゃうんだから』
「はいはい、俺が起きたんで後10分もしたらそっちに合流しますから。プチッと……全く、陽菜が手を出すわけがないじゃんか、ねぇ」
さちえさんにからかわれすぎたせいか陽菜が真っ赤になってるみたいだ。遠くの街灯の明かりだけでも赤くなってるのが分かるほど。
名残惜しいが陽菜の膝から頭を引きはがして起き上がり、むき出しで寝てたせいでちょっと冷えてしまった右の頬を右手でさする。
「きょ、恭介くん!? ひょっとして寝たふりしてた?」
頬を撫でてるとなぜか陽菜が焦っているがよく分からない。
「ああ、う~ん……良く寝た……本当に短い時間だけどスッキリしたよ、ありがとう」
伝えると陽菜がちょっと疑うような表情の後、どういたしましてと笑ってくれた。
ひょいと立ち上がってひざ掛けとレジャーシートをたたんで回収しようとする。
陽菜がヒッと叫んで膝を崩して悶えている。悶える陽菜が可愛い。
「あ、足がしびれちゃって歩けそうにないんだけどどうしよう!?」
陽菜の泣きそうな顔。
多分10分で帰るって言って20分かかったらあのさちえさんに何を言ってからかわれるかと思ってるんだろうなっていうのが分かった。
さて、どうしたものか。