第149話 これって恋人繋ぎってやつだよね!?(陽菜視点)
ぎゅぅ……
恭介くんが女の子の話ばっかりするし、私と歩いてるのに小烏さんのことを思い浮かべてすごく優しい顔をするのにモヤモヤしちゃって思わず手を握ってしまった。
恭介くんが驚いた顔をして私の顔を覗き込んでくる。
恭介くんが隣にいるのに遠くに感じるのがいやだったから、自分だけを見てもらえるようにって手を繋いだけど大胆過ぎちゃったかな?
思わずはぐれないように手を繋いだって言い訳しちゃったけど、絶対エッチな女の子だって思われちゃってるよね。この貞操逆転世界の女の子は隙あらば男の子に触りたがるイメージだから、絶対そう思われちゃってるに違いない。
恥ずかしくてチラッチラッて恭介くんの顔を見ちゃう。
そうしたら恭介くんが何を思ったのか指を組み替えてギュって握り返してきた。
こ、こ、コケッ、これって恋人繋ぎってやつだよね!? 久しぶりに言語中枢がバグってニワトリみたいになりそうになっちゃった。
恭介くんって女の子と手を繋ぐとき恋人繋ぎにしちゃうの? この世界の女の子に対してサービス良すぎだよ。絶対誤解されちゃうから。
でも恭介くんの手から伝わってくる体温が温かくて、何も言わなくても幸せで夜桜の下をゆっくりと河川敷に向かって歩いていく。
「あ、ここって私と恭介くんが流れ着いた場所なんだって……恭介くんは知ってた?」
12月のあの日、橋から川に落ちた恭介くんを追いかけて川に飛び込んだ私は結局恭介くんに助けられた。
その時に二人が流れ着いて、救助されたのがこの場所なのだ。
夜の川は真っ暗な水面が光を反射するだけで流れの速度さえも分からない。3月も終わりに近い今だって水温はきっと低いだろう。
あの時は本当に凍えるほど寒かった。私に移植された心臓が健康で元気な心臓で良かった。そうじゃなかったら飛び込んだ時点で凍えて心臓マヒで死んじゃっていたかもしれない。
私が護岸に立ち止まって川面を見つめていると恭介くんが言ってくれた。
「疲れちゃった? 少しここで休んでいこうか?」
真っ暗な中で二人きり、遠くの街灯の光しか届いてないから私の顔が熱くて真っ赤になってるのはきっと気付かれてない。
今の顔を見られたら私の気持ちなんてバレバレだろう。
恭介くんが持って来ていたショルダーバッグから小さなレジャーシートを出して敷いてくれる。
小さいから二人ではみ出さないように座るとぴったりと寄り添うようになっちゃう。体温を感じられる距離。
イイよね……幼馴染だもん。