第147話 このままじゃフォアグラみたいされそう
その5分後、俺は陽菜に救出されて陽菜が作ったお重にありつくことが出来た。
いなり寿司が美味い。こっちはエビフライだ。お重が三段もあるから豪華だなぁ~。今の俺は現実逃避中。
そして陽菜は今酔っ払い二人を正座させて説教中である。
前回この二人に拉致された時も陽菜に助けてもらったから頭が上がらなくなりそうである。
しかし、説教している陽菜がプンスコしてて可愛くて説教されてるはずの大人二人が陽菜の可愛さにニヤニヤしてるのが解せない。
足がしびれて立てなくなればいいのに。
陽菜パパとは久しぶりに会ったが(実はこちらの世界では初対面だ)元の世界以上に幸薄そうな感じで同情してしまう。
だが陽菜パパが来てくれたおかげでさちえさんに対する弾除けが出来てさちえさんが必要以上にこちらに来ないのは助かる。
いつもなら陽菜があの二人に説教をしているのをいいことに俺のことをからかいに来ていたはず。そのまま夫婦で末永くイチャついていてください。
「恭介くん大丈夫だった? イヤなことされてない?」
説教を終えて陽菜が俺の元に来てくれる。大人組が楽しそうに乾杯してる。うちの両親、陽菜の両親、先生と刑事と看護師、皆が笑顔なのはいい。いいけどどうしても勝てない相手が3人もいるから(うちの母親を入れると4人か)近寄りたくない。
「本当にありがとう陽菜。油断してた。いや、家族で花見に来て油断って意味わからないんだけどね」
「そうだね。私もびっくりした。お母さんたちがあの三人に感謝してお礼の意味で呼んだのは分からなくはないけど本当にああいいうのって困る」
陽菜の独占欲? がちょっと嬉しい。
「恭介くん、今日も卵焼き二種類作ったからいっぱい食べてね。あとウインナーはタコさんにしたから。唐揚げの味付けはちょっと工夫してみたから食べてみて欲しい」
三時のおやつで丸川と食べ歩きした時に一口ずつにしておいて良かった。陽菜が俺に食べさせたがって困る。このままじゃフォアグラみたいされそう。
陽菜にも食べさせるために箸を使い分けてはどんどん餌付けしていく。モグモグ食べている陽菜はすっかりお腹がいっぱいになってきたようだ。
「結構冷えてきたけど寒くない? ひざ掛け持ってきたから使ってよ」
今日の陽菜の格好はベージュの厚手のロングスカートにグレーのセーターを合わせてその上に桜色のカーディガンを羽織っている。
温かそうな恰好だがお花見に合わせてちょっと気合を入れてきてくれた感じなのが嬉しい。多分俺に見せたくて着てくれてるんだよな~と思うと幸せな気持ちになる。
まだ褒めてなかったので洋服を褒めると陽菜の顔も桜色に染まって可愛かった。
「恭介くん、せっかくだから二人で抜け出して夜桜の下を歩いてみない? お母さんたちもすっかり出来上がっているし」
言われてみるとうちの母親もさちえさんも結構飲んでる。父親たちが一滴も飲んでないところを見るとハンドルキーパーは男衆って考えてるんだろうな。
まさかアルコールが入ると勃ちが悪くなるから飲ませて貰えないとかじゃないよな? と一瞬疑うがきっとそんなことはないだろう。
ないと言ってくれ、自分の親の夜の事情なんて知りたくないし。