第13話 知らない年号だった
陽菜はショックを受けた表情をしながらも必死に取り繕って後ずさりながら、「ごめんね多々良くん、体調がすぐれないときに来ちゃって」と言いながらドアを閉めて病室を後にした。
「あらあら……恭介、あんたそれは冷たいんじゃない? まあいきなり病衣しか着ていないところを女の子に抱きつかれたら男のあんたがセクハラで訴えたくなる気持ちもわかるけどね。
あの子、橋の欄干から身を乗り出して写真を撮ってたあんたが、おしゃべりに夢中でよそ見しながら歩いてた女の子たちにぶつかられて橋から落ちたのを見たんだって。
泳げないあんたが溺れかけてるのを見てどうにかしたいって橋から飛び込んだんだってよ。泳げないかなづちのあんたを助けてくれたんだから感謝しないと」
自分の母親が何を言っているか分からない。
水泳部で一年ながらも県体に選手として出場した俺がかなづち? 結果的に俺が泳いで陽菜を助けたことを思うとどうなんだと思う。
「小さい頃のヒナちゃんは恭介のおちんちんを揉んだりするようなヤンチャな子だったから、あんたが苦手だったのは分かってるし。
それに中学生くらいからはめっきり付き合いがなくなっちゃったから久しぶりだったかもしれないけどね……
まあ小学生くらいの女の子は皆男の子に興味を持って、好きな子にイタズラしたくなっちゃうものなのよ。
私だってパパにいっぱいアプローチしたんだから。パパは嫌がっていたけどね……最後には諦めて落ちちゃったわよ」
は?……陽菜が俺のアソコを揉んだって? 小学生の頃の陽菜がそんなことするわけないだろ。なんかの勘違いじゃないの? それと自分の親のそんなひどい馴れ初めは聞きたくなかった。
「何言ってるのよ、ヒナちゃんにおちんちんの写真撮られたって泣きながら帰って来たのはどこの誰よ」
母さんが笑いながら言うが本当にどこの誰の話だ? そんな記憶は欠片ほどもない。
「恭介大丈夫? ……川で溺れた時に水は飲んでるけど呼吸が止まったりしていないから脳への障害は大丈夫だろうってお医者様は言ったけど、不安だったら精密検査して貰う?」
遂には俺の頭まで疑いだした……心外どころの騒ぎではない。が、確かに何かがおかしい。母親の雰囲気もいつもと違うし。
「まあいいわ。とりあえずゴミ箱に新聞紙で作った紙袋入れておくからゴミはここに捨てるのよ」と母親の持ってきた昨日の新聞紙を見せられる。
そこに書かれた日付は礼和4年12月19日……知らない年号だった。
ここまで「幼馴染を寝取られたが貞操逆転世界でハーレムを作って幸せになりたいと思う」をお読みいただきありがとうございます。
とうとう主人公が自分が異世界にいることに気付きました。ここまですごく長かった気がします。