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第125話 ぎゅぅっと抱きしめながら自分の祖母に宣言する

 どうすれば琴乃刀自を説得できるのか、もう正直にぶっちゃけるしかないのかと俺は考えていた。「でも」と「だけど」が頭の中でグルグル回わる。


「しずくちゃんはずっと私にとっては目標でした。それは今でも変わりません。

 私は心臓がずっと弱くてせめて勉強だけでもって頑張ってきましたが、中学校の頃も高校になってからも一度もしずくちゃんに敵いませんでした」

 陽菜が話し出す。陽菜も俺と同じように岩清水がこれ以上お見合いをしなくていいように岩清水のことを伝えるつもりらしい。


「そのしずくちゃんが恋をしました。今まで男の人に興味があっても自分から動くことなんて一度もなかったしずくちゃんが……その人のためなら毎日病院に通ってて勉強を教えてあげて、彼が退院したら彼のために積極的にお弁当を作ってくるようになりました」

 え!?……俺がどうにか隠そうとしていたことをまさかの陽菜が語りだした。


「私は恋する女の子のパワーって凄いんだって思っています。

 そんなしずくちゃんに今の時点でお見合いを勧めても、お見合い相手の男性が目に入ることはないと思います。だって今のしずくちゃんの瞳にはその人のことしか映っていないから」

 陽菜がちらっと俺の方を見る。岩清水は真っ赤な顔をしてうつむいている。照れてるお嬢様がめちゃくちゃ可愛い。ってそんな場合じゃない!


「だから、その恋の行方を見守ってあげて欲しいんです。

 琴乃おばあちゃんにとってしずくさんがすごく大切なんですよね。だったら孫娘の恋心を応援してあげてください。お願いします」

 陽菜が深々と頭を下げる。友人のために……すると周りにいた藤岡や丸川、小烏こがらすも頭を下げて口々にお願いする。「お願いします」「お願いなんだよ」「お願いする」


 俺たち6人の様子を見ていた琴乃刀自が笑い始めた。

「アッハハハ……お前達は本当に面白いね。しずくは本当にいい友達を持ったよ。

 姫川陽菜って言ったかい。あんたは孫の恋が成就してもかまわないと思ってそう言っているのかい」

 問われた陽菜がまっすぐに琴乃刀自を見つめながら答える。


「私だって負けませんから。一番になるって誰にも負けないって誓ったんです。

 今まで一度も勝てなかったしずくちゃん相手でも今回だけは絶対に譲りません」


「分かった! そこまで言うなら今後しずくに見合いは持って来ないよ。

 しずく、もし必要になったら泣きついて来ればお見合いくらいいくらでもさせてやるから安心しな」

 そこまで言われて岩清水は自分の祖母の顔を、琴乃刀自をまっすぐに見て答えた。


「その代わり私の恋が成就したら、お婆さまも祝福するって約束してくださいね。

 恭介さんは喫茶店で好きでも無い男と結婚するようなイヤな目には合わせないって約束してくれましたから。

 それってつまり()()()()恭介さんが()()()()()()()()()ってことですよね?」

 しずくが左隣にいた俺の腕をぎゅぅっと抱きしめながら自分の祖母に宣言する。


「アハハハ……しずくがそこまで言う男なら結婚相手として連れてくることが出来たら会社も西園寺の当主の座も全て二人に譲ってやる。

 私の人生に最後に大きな楽しみが出来たよ」

 完全に外堀を埋められた!? わざとじゃないよな委員長?

 大きな声で笑う琴乃刀自を見ながら俺は小さくため息をつく。


 左隣にいた陽菜が右手でギュッと俺の裾を握ってくれたのを感じた。

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 ちょっとした小話


「恭介さんって一体いつから私が岩清水しずくだって気付いていたんですか?」

「え?……一番最初にぶつかった直後からだけど」

「ああ。ひょっとしてみおちゃんとまるちゃんの変装が下手だからそれでバレちゃってました」

「いいや、トイレから出てきた俺とドンってぶつかっただろ? あの時胸が当たったから……」

「え?」

「だから委員長の大きな胸の形を間違えるわけないだろ? 胸の形で分かってたって。当たり前だろ」

(うわぁ……嬉しいけど複雑な気分でちょっとドン引きです。さすが恭介さんっていうべきなんでしょうか)

 という会話が帰り道で繰り広げられたとかなかったとか。

岩清水編終了です。後二回で岩清水編エピローグを恭介と陽菜が締めてから桜祭り編突入です。

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