第117話 あんまり待たせずに済んだらいいんだけど
ドンッ
トイレから出てきたところで白いワンピースを着た女性にぶつかられる。それほどの勢いでもなかったので抱きとめることが出来てお互いにこけたりせずに済んだ。
「大丈夫ですか?」と肩を支えて顔を覗きこむ。
そこには凄い美人がいた。ちょっと目鼻立ちが目立つようにメイクされている感じだが、多分元からすごい美人なんだろう。
髪は黒髪ロングで白いワンピースを着て白い帽子をかぶっていた。
なんだろうちょっとおめかしして出掛けるというよりももう一段階気合が入ってるような恰好。勝負服とかそのためのメイクって感じの印象を受ける。
胸は大きめでぶつかった時に柔らかい感触を味わってしまったのは役得だったけどナイショだ。
後ろから黒服を着た二人組の女性が走って追って来ていたが、俺がワンピースの女性を抱きとめているのを見て踵を返してどこかに消える。
黒のスーツにサングラスに帽子、明らかに素性を隠すようにしているが、一人は茶髪でフワッとした髪が少し帽子からはみ出していてスタイルがよく、もう一人は背が低くてポニーテールが一部帽子からはみ出していた。
「すみません……いきなりぶつかってしまって。少し事情があって追われていたもので前を見ていませんでした。お怪我はありませんでしたでしょうか?」
お嬢様に謝罪されて質問される。
小烏を見ているから美人には慣れているつもりだったが今まで身近にお嬢様なんていたことがないからちょっとドギマギしてしまう。
いや、分かってる……みんなが言いたいことはよく分かってるんだよ俺も。
ここは貞操逆転世界だからこの人だって性欲がありあまってる童貞男子みたいな思考をしてるはずで俺のことを罠にハメるために出会いを演出してるんじゃないかってことだよね?
でも、そんな可能性があっても万が一本当に追われてて困ってるとしたら見捨てられるかって話だから捨ておいて立ち去るわけにはいかないんだ。
これは決して俺がスケベだからとか下心があるとかじゃないから分かって欲しい。
誰にともなく言い訳をしてとにかく返事をする。
「大丈夫です。こう見えても男ですからこのくらいなんでもありません。追われているってどういうことですか?
その……俺でお役に立てることなら手伝いますからお話を聞かせて貰ってもいいですか?」
まあ、こうして俺は自分からお嬢様の問題に自分から首を突っ込んでいくことになってしまった。
陽菜と小烏をあんまり待たせずに済んだらいいんだけど。
※カクヨム時代の後書きです。当時の雰囲気はこんな感じでした。
この物語をスタートしたのが6/26だったので一ヵ月が経過しました。
一ヵ月物語を続けられると思っていなかったのでここまで続けられたことに感謝です。
思わぬ高評価をいただいたのでここまで続いたというのが本音ですが、たった一ヶ月で110話を超える話数になったのが一番予想外でした。
一日一話ペースで公開していくつもりだったのにどうしてこうなった。
30話って見返すと陽菜と再会したあたり。
そういうペースだったらどういう評価だったでしょうね?
とにかくいつも読んでいただいてありがとうございます。物語はまだまだ続きそうです。