第116話 それでも小烏よりは時間がかかりそうだ
AUショップでは事前に予約を入れてあったこともあり、陽菜も小烏もスムーズに案内されて店員さんとのやりとりが進んでいる。
陽菜と小烏を隣り合ったブースに案内して貰い、俺が両方に都度必要な事をアドバイスしていく形で進めさせてもらうことにした。
「ひょっとして刀剣女士の小烏さんですか?」
小烏を対応してくれているAUの店員さんが小烏のことを知っていてキャーキャー黄色い声援をあげている。活動を始めてまだたったの一週間でこんな身近な場所にまでファンがいるようになるとは。
応援していますと言って握手を求められている。小烏のマメだらけの手を握って感動してくれていた。照れている小烏の姿が可愛かったのでスマホで写真を撮って店員さんにもネットにあげる許可を貰う。
「小烏についてはMNPなので安くなる機種があればその中からiPhoneを選んでお願いします。予約番号はこれです」
店員さんに伝えてメモしてきた紙を渡す。どうやらiPhoneの二世代前の機種がキャンペーン対象なのでそれにして貰うようにお願いして無駄なオプションを端から切らせて貰う。店員さんも「小烏さんのためなら」と全力で対応してくれるらしい。
後はガラケーからのデータ移行なのでそんなに時間はかからないかな?
「えっと……姫川さんについては機種変なので候補をいくつか挙げて貰ってもいいですか? 今度はAndroidじゃなくてiPhoneがいいらしいんでよろしくお願いします」
こっちの方が時間がかかりそうだが、機種自体は俺が使っているSEの次のバージョンが出ていたのでそれを薦めておいた。あ、「姫川さん」呼びなのは人前だからね。流石に陽菜って呼ぶのはちょっと……
「恭介くんのとほとんど同じ機種なんだ。それがいい。お揃いにしたい。色も一緒の赤がイイ」
ところかまわず俺のことを「恭介くん」と呼んで来る陽菜が可愛い。なんだかすごく嬉しそうだし。人前じゃなければなでなでしたいところだ(しないけど)。
前の機種を下取りすると機種代が下がるという事なので持って来ていたmicroSDカードを店員さんに渡して、データ移行をお願いする。
陽菜はそれほどアプリやゲームを使っていなかったみたいだがそれでも小烏よりは時間がかかりそうだ。
店内で待っているのも暇なのとトイレに行きたくなってきたので二人に声をかけて店を出ることにした。
「ひより、先に終わったら陽菜と一緒に待っていてくれるか? 陽菜のことを頼んだぞ」
店を出ると駅の構内に入りトイレへ向かう。トイレはすぐに見つかったので済ませて手を洗って出てきた。
ドンッ
トイレの通路から出た瞬間、駅の構内を走ってきた女性とぶつかることになってしまった。
な、なんだ? 真っ白いワンピースを着たお嬢様と出会うイベントでも発生してるのか!?