第115話 多分俺を見てるんじゃなくて
その週はテストの返却を中心に授業が進み、お昼は毎日三人が作ってくれるお弁当を美味しく頂いて、放課後は光画部か水泳部で特訓の日々となってあっという間に過ぎた。
学校に復帰してからずっと見学に行きたかった水泳部にやっと顔を出すことが出来て2年生の北野部長と挨拶することが出来た。北野部長は金髪女子でショートカットの巨乳美人だった。俺が訪問した日はジャージ姿でトレーニングしていた。
「男子部員の水泳部加入は大歓迎だよ。うちはボイラーがあるから外のプールしかないけど4月から泳げるから」と北野部長に言われたが、その辺のことは前の世界と同じなのでよく分かっていた。
とりあえず残りの3月のトレーニングと春休みの水泳部のトレーニングには参加させてもらえることになった。
光画部のさんご先輩は水泳部との掛け持ちを聞いて「掛け持ち自体は特に問題ないけどムリだけはしないようにね」と心配してくれた。
なぜか昔の光画部の先輩が水泳部と勝負したことがあるらしく「水泳部員がいれば今年の夏は自由にプールが使えるね」という謎の言葉もあったがこれはスルーしてよいのだろうか?
ということで、あっという間に土曜日がやってきた。
今日は陽菜と小烏と一緒にAUショップにいき、携帯の機種変とMNPをすることになる。
学校の最寄駅前の集合ということにしたが、陽菜とは一緒に家を出る。
13時集合ということにしてあるが余裕をもって家を出て駅前で小烏を待つようにする。早めに出たのはそろそろ桜が咲いてきて、川沿いの河川敷が見ごろを迎えそうだったからだ。
今日は歩きで出かけている陽菜と駅に向かう道すがら桜の木の下をのんびり歩く。
今日の陽菜の格好は紺色のプリーツスカートに白無地のトップスに桜色のカーディガンを羽織って春っぽかった。俺の方が黒のスキニージーンズに紺色のシャツを合わせている。
「小烏さんって私服もすごくカッコいいんだよ」
駅前に到着すると陽菜が嬉しそうに教えてくれる。そういえばテスト前に図書館でテスト勉強をして買い出しに行ったと言っていたか。
俺は前の日曜日に小烏と一日一緒だったがずっと白の道着と黒袴だったから私服はまだ見ていないといえる。
と、改札を抜けて小烏が出てきた。相変わらず女子にしては長身のモデル体型。すらっと長い脚をピッタリしたデニムのジーンズで包み、黒のノースリブの上から同じく黒の小さめのレザージャケットを羽織っている。
「またせたな、恭介、姫川」
いつもは姫カットと言えばいいのかストレートにしている髪をポニーテールにまとめた小烏が俺たちに挨拶してくる。
「おう、来たばっかりだから気にするなひより。今日もカッコイイな」
「こんにちは小烏さん。今日はいい天気になってよかったね」
三人で挨拶を交わしてからAUショップに向かう。
自然と小烏、俺、陽菜と三人で横に並ぶように歩いてしまう。
歩道が広いから問題はないだろうけどすれ違う女性がみんな振り返るのは多分俺を見てるんじゃなくて小烏を見てるんだろうな。
恭介くんは謙遜していますが、二人で集めてる注目はかなりのものです。イケメンカップル+1って認識されてる?