47-2 終わったらしい騒動
「それで、ネイルの契約はどうする?」千奈津がスチールの椅子を持ってきて横に座る。
「お願いします」
「じゃあ、セイジツ君狙いで行くんだ」
「誰狙いとか、そんな言い方できないです。自分のほうが大変な状態なのに私のこと気遣ってくれて、この人すごいって思ったんです」
「そんなに大変だったの?」
「大変どころじゃなかったですよ。千奈津さんは来なくてよかったです。来てたら神経すり減り過ぎて、倒れてましたよ」
「そう聞くと、その場にいなくてよかった」苦笑する。
「それにしても、昨日は不思議なことばかり起きて、異次元にでも行ってたみたいでした」
「それって、今流行の異世界ツアー?」
「それは漫画の中の話ですよ」
「どうかな? 別世界のような感じだったんでしょう?」
「エッ、まあ、そうなんですけど」
「みんなで異世界ツアーだったのか?」興味があるので身を乗りだす。
「そうだ。アーモチーフ」
「ダメだよ。なんかすごく疲れてるみたいで、朝方戻ってきてから、ずっとソファの上でダレたまま動かないんだ」
「アーモチーフ、お疲れだよね。私たちと一緒に遅くまでいたから。セイジツ君を助けてくれてありがとうございます」
するとまた片目だけ開けて、一回瞬きするとまた目を閉じる。
「そういえば、ミシュウさんもリエルさんも、結局最後まで来なかった。なにしてたんだろう?」
「昨日の夜? ミシュウたちならここにいたよ」
「エエエエエエエエッ! 本当ですか!」
「……う、うん」
「どうして!」
「あやねちゃん、ここは集合住宅だから、ね?」
「すみません。でも! 昨日は何時からここにいたんですか?」
「えっと、夕飯食べてあやねちゃんたちと別れて戻ってきたら、すでにいたからなあ」
「いたんですか!」
「シッ!」
「……すみません。でも、本当なんですか?」
「だから、用事があって出掛けたんじゃないのかって聞いたら「ない!」って言われて」
「ハァ? 用事はなかった?」顔が少しひきつってくる。
「アーモ君は用事があるから遅くなるので、先に寝てろって言われて。心配だったから午前二時くらいまで起きて待ってたんだけど、さすがにそれ以上は厳しくて」
「ミシュウさんは何時頃帰ってきますか?」
「何時頃だろう。何か話があるの?」
「はい。聞きたいことができました」凄みのある声に「……そう、なんだ。じゃあ、帰ってきたらメールするよ」
「いいんですか! お願いします!」
「わかったから、もう少し小さな声でね」
「ああ、すみません」