45-1 それぞれの想い
「それってさ、人じゃないだろう? そんな事できるのって、神様くらいだよ」
その二の言葉以降、誰も言葉を口にしない。
沈黙が続く。
「人じゃなかったら何者なんだよ。神様なんているわけねえだろう」先崎がボソッと反論する。「もしいるんだったら、俺を含め、俺たちの仲間があんなひどい目に遭ってるのを、見て見ぬフリするわけねえだろう?」
「……先崎君は、イヤかもしれないけど、今回の真犯人、セイジツ君を連れ去ったガイドスピリッツの人、先崎君の掲げた目標のサポートに付いてたんだって」あやねが説明すると「あんな奴いらねえよ! なにが俺の目標のサポートをしてただ! 偽善ぶった悪人じゃねえか!」
「……先崎」隣の桧山が彼の肩を叩く。
「私たち、最初は先崎君たちのこと、ガラの悪いグループだって思ってたんだ」その三が話しはじめる。「でも、途中から、学校で馴染めず、孤立してる生徒たちを仲間に入れて、土・日とか、ボランティアでいろんな事やってるって聞いてから、見る目変わったんだ」
「ガラにもなく、なに似合わねえことやってんだよって?」
「ううん、すごいなって」
「エッ?」
「すごいなって思った。その一もその二も思ったよね? なんでガラが悪いグループだって噂が立ったんだろうって、思ったよね!」
「思ったよ。だから、あの時から噂って鵜呑みにしちゃいけないって思った」同意するその一。「もっと胸を張って堂々とやりなよ!」
「……その一」
「私もさ。正直、あんたらの悪い噂しか耳にしなかった。でも、真実は真逆だったことにすごいショックだった。真実を確認しないで、噂だけでそれが悪いって決めつけてた自分に腹が立った」
「その二がそんなに自分を責めることねえよ」
「あるだろう! あんたたちは悪い事どころか、街の清掃や介護のサポートとかやってたんだろう! そんな行動を言いふらすわけでもなく、黙々とこなしてきたのに、悪意ある奴の噂を信じて、それだけで悪グループと勝手にレッテル貼ってたんだぞ!」
「……そんなこと、気にするなよ」
「するよ!」
「しなくていいよ。あんたらはこの街を象徴するシンボルなんだぜ。剣道高校生大会、全国大会連覇っていう、輝かしい、全市民が誇れるものを持ってきてくれる、かけがえのない存在なんだぜ。俺たちみたいな、悪い噂が付きまとう低レベルの奴と一緒にいたらいけないんだ」
「それが、その一に告白しない理由か?」桧山の言葉に驚きを隠せない先崎。
「悪いな。お前は親友だけど、その一だけは譲れないわ」
「……気にするなよ。俺より、お前のほうが、相応しい。北条高校男子剣道部の主将だからな」
二人の会話を聞いて目を丸くするその一。