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アーモのネイルサロンへようこそ  作者: 夏八木 瀬莉乃
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5-1 契約完了


 近くの十字路で信号待ちをしている間(あのペディキュア用のソファに座ってた金髪の女の人、誰なんだろう? 私のところからは右側の斜め後ろの姿しか見えなかったけど、そういえば、いつから座ってたんだろう。最初、部屋を見回したときはあんな人いなかった。絶対いなかった)


 預かったペンを思い出し(誰にも見せるなって、不思議な契約書に変なペン。なんで欠けたり割ったりすると、人の幸福で直るんだろう?)どのように修復するのか想像できない。


(でも、大切にしたら幸福が増えるって、あの金髪の人が言ってたけど、どう増えるんだろう?)


 複雑な謎解き問題を出された気分で、考えながら家に帰った。 

 


 次の日の放課後。

 いつものように剣道の練習を始める。


「あやね、どうしたの? いつもの覇気(はき)がなくてボロボロじゃん。抜け殻みたいに気合がまったく入ってないよ」長身の同級生が心配そうに聞いてくる。


「うん、全然集中できない」


「なにかショックなことがあったのか?」小柄なぶっきらぼうが理由を聞くと「いつもと別人みたいだよ」アイドル好きも傍に来る。


 昨日、ネイルサロンから出たあと、ずっと金髪女性と契約書とガラスのペンのことで頭がいっぱいだったが、朝、起きると衝撃を受けた光景が(よみがえ)り、絶望の淵に落ちていた。


 ウルウルウルウル。


「あやね!」ビックリする長身。

「どうした! あやねを泣かせたものは何だ!」理由を確認する小柄。


「私たちが抹消(まっしょう)してあげるから言いな!」推しを泣かせるなんて許せないと、怒りをあらわにするアイドル好き。


「ちょっと、衝撃的な光景を見ちゃって……」


「どんな光景を見たの!」

「なんでそんな光景を見ることになったんだ?」

「どこで見たの?」


 三人で取り囲むと「……ありがとう。大丈夫だから」ゴシゴシと涙を拭う。


「あやね、みんなでケーキでも食べに行こうよ。甘いもの食べたら元気になるよ」

「うん、ありがとう。でも、行かなきゃいけないところがあるから」


「こんなときにどこ行くんだよ。 明日でもいいじないか」

「今日、持ってかなきゃいけないものがあるの。心配かけてごめん」


「どうしても今日じゃないとダメなの?」

「夕方までに持っていく約束してるから」



「なに飲む?」

「エ?」


「また紅茶でいい?」

「あ、はい」


「じゃあ、ちょっと待ってて」

「……ここは?」


 ハワイ風の装飾に、ペディキュア用の一人掛けソファと大きな観葉植物。奥の大きな窓の近くに白いネイル用のテーブルが置いてある。


(あのネイルサロンだ。いつの間に来たんだろう?)横長のソファに座っている。


「正気に戻った? はい紅茶。熱いから気を付けてね」千奈津がいつものようにガラスのテーブルにカップを置くと「ありがとう、ございます」まだ状況が把握できず、空返事をする。



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