43-2 知っていた
「ガイドスピリッツって何?」初耳の先崎が理解できないでいると「お前が計画したことだとわかってるんだ。言い逃れはできないから、さっさと出てこい」
相変わらずセイジツたちのほうを向いたままアモニスが話を続けると、ガチャッと音がして病室のドアが開き、まじめな優等生が大人になったような金縁メガネを掛け、コバルトブルーのシャツに黒いストライプが入ったネクタイを締めた、二十代前半の男性が入ってくる。
すると、振り向くアモニスが「孵化した幼虫を回収しに来たんだろう?」
「なぜ私だと思われるんですか? 心外です」
「相変わらずのポーカーフェイスだが、私は誤魔化せないぞ」
「おっしゃってる意味が解りません」
「お前は気付いてないだろうが、ウソを吐くとき、首を小刻みに左右に振る癖はやめるんだな」
「この一大事に捕獲作業に参加していなかったことは謝罪しますが、どんなときも自分の任務が優先される、これがチームのモットーですから、それに従ったまでです。それなのに、犯人にされるのはおかしくないでしょうか?」
すると「こいつが犯人だ!」立ち上がるセイジツがセスに掴みかかり「華河さん! 皆を連れて逃げろ!」
「セイジツ君!」ビックリするあやねも立ち上がると「動くな!」アモニスが前に立ち「先崎! 二人を部屋の奥へ連れていけ!」
「エッ、あっ、はい!」その二とその三の腕をつかんで部屋の奥へ連れていく。
「やれやれ、困ったことをしてくれますね」
セスは苦笑すると、胸ぐらをつかんでいるセイジツの腕をつかんで後ろに回し、紐で両手首を縛ると後ろから抱えて口を塞ぎ「私の計画をこんなところで暴露されるとは、思ってもみませんでしたよ」
フウッと深くため息を吐き「それにしても、なぜ君は正気を保っているんですか? 幼虫に意識を乗っ取られているはずなんですけどね」不思議そうに聞くが「チーフですか?」アモニスを見て「チーフが何かしたんですね?」
「聞いてどうする」
「フフッ、そうですよね。聞いたところで、この状況が変わることはないんですから」
「セイジツ。あれほど勝手に動くなと言っただろう!」
「そうですか。すでに幼虫を取りだしていたんですね。ということは……」
ベッドに腰かけていた桧山とその一が立ち上がる。
「その一! 大丈夫か!」
「意識はある?」
その二とその三が声を掛けると「私は大丈夫だよ」
「そっか……よかった……」
「心配したんだからね!」
「なるほど。この部屋自体が罠だったんですね?」