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アーモのネイルサロンへようこそ  作者: 夏八木 瀬莉乃
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42-1 招かれざる客

 

 廊下に出たあやねは、音を立てずに上がってきた階段横を通るとエレベーター前を過ぎ、その先の自販機コーナーでアイスティーとミネラルウォーターを買うと、廊下の様子をうかがう。


 見つかったら追い出されるので、看護師さんや入院患者と鉢合わせしないように、壁づたいに足音を忍ばせながら病室へ戻っていく。


(忍者の修行場にでも行きたい気分。なんてね)


 幸い、何事もなく病室まで戻ってくるとそっとドアを開け、滑り込むように中に入る。

「スリルあり過ぎるんですけど。あれ?」


 あやねが置いた向かい合わせの椅子の真ん中に簡易なテーブルが置かれているので「アーモチーフが置いたんですか?」

「そうだ。その方が話しやすいだろうと説得した」


「ありがとうございます」席に座るとテーブルの向こう端にアイスティーを置き「セイジツ君、お待たせ」と声をかけ、自分用のミネラルウォーターの(ふた)を開ける。

「あり、がとう」セイジツもアイスティーを取ると蓋を開け、飲みはじめる。


 その時、ガチャッと音がして、病室のドアがゆっくり開く。


「エッ?」あやねとアモニスが同時に振り向くと、あいたドアから友達その二とその三が顔を出す。

「二人とも、どうしてここにいるの!」

「あやね!」


「静かに! 早く入れ!」アモニスが二人を中に入れると廊下を確認し、静かにドアを閉める。


「あやね、こんな所で何やってんの!」

「静かにしろ!」アモニスが部屋の隅に連れていくと「なぜここに来た?」

「エッ、あなたは誰?」不信感いっぱいのその二。

「私の質問に答えるほうが先だ。なぜここにきた?」


「あ、その、それは……」その二がアモニスの迫力に押されると「私たち、その一のお母さんから電話をもらって、その一が電話に出ないから一緒かって聞かれて。


 きっと彼の見舞いに病院へ行ってるかもしれないから、電話に出られないんだと言ったら納得してくれて。


 私たちも気になったからラインを送ったんだけど全然既読にならないから、おかしいと思って、その二と一緒に、彼女の携帯のGPSを辿ってきたんです」その三が説明する。


「なるほど。友達思いなのはいいが、餌になりに来るのは感心できないな」

「餌?」二人がキョトンとすると「その一はすでに餌になってる」と言って、ベッドに桧山と一緒に座っているその一を見る。


「その一!」その二が大声を出すので「静かにしろ。ここにいるのが見付かって病院関係者が入ってきたら、全員奴らの餌になるんだぞ」

「……す、すみません……」

「その一……」

 その二とその三が、心配そうに俯いているその一を見る。


「あの、その一は助かるんですか?」涙ぐみながらその三が聞くと「早く助けられるように動いてるが、まだわからない」

「そんな……」


「あの、桧山君は大丈夫なんですか?」

「アイツの中にいる幼虫が、その一のエネルギーを食べてるんだ」

「……幼虫?」


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