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アーモのネイルサロンへようこそ  作者: 夏八木 瀬莉乃
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41-1 変貌した二人

 

 部屋の奥の壁に巨大な蜘蛛の巣が張られ、その前に、青白い顔をしたセイジツと桧山二人が立っていて、桧山はあやねの友達その一である一ノ瀬を抱えていた。


「その一!」

「大声出すな」アモニスが注意するが「どういうことですか!」

「あやね。大声出すな」

「あ、でも」


「心配するな。その一はどうやら気を失っているようだ。それに、桧山は彼女に害を与えるようなことは今のところしてない」


「その一は桧山君と付き合いはじめたばかりなんです」

「なるほどな。だからセイジツはあやねを呼べと言ったのか」


「セイジツ君が私を?」

「そうだ。セイジツ。あやねを連れてきたぞ」

「エッ?」


「華河、さん……」やつれたセイジツが声を掛けてくる。

「セイジツ君、どうしたの?」

「こっちに、来て、くれないか?」

「でも……後ろの蜘蛛の巣が……」

「ああ。これは、僕と桧山で作ったんだ。きれいだろう?」


「……アーモチーフ、セイジツ君たち、どうしちゃったんですか?」

「厄病虫の卵が彼らの中で孵化(ふか)したらしい」


「卵が孵化? 厄病虫がセイジツ君たちの体の中に、卵を産んでたんですか?」

「そうだ。捕獲所の職員たちは、毒は浄化したらしいが、卵を産んでる可能性を忘れてたらしい」


「それで、幼虫を取りだすことはできるんですか?」

「今、もう一度職員を呼び出してるが、捕獲所内で停電が起きたらしく、その対応に追われて、こちらへ来るのが遅れると連絡がきた」

「停電? そんな事が起きるんですか?」


 捕獲所は天界にあるので、そこでも人間の世界同様、電気を使っていると思っていなかったため、意外だった。「上でも電気を使ってるんですか?」


「電気は人間の世界だけにあると思ってたのか?」前を向いたまま聞くので「そう、だと思ってました」

「我々が人間に使い方を教えたんだ」

「そうなんですか」


「捕獲所には、厄病虫のような要注意生物がたくさん集められているのは知ってるな」

「はい。ああ、隔離や監視のための装置が電力で動くものなんですね」

「誰かが電気配線を切ったんだ」

「エエッ! それって!」


「だから、大声を出すなと言ってるだろう。病院関係者に気付かれでもしたら、犠牲者が増える」

「犠牲者?……あ、あれに捕まると」巨大な蜘蛛の巣を指すと「そうだ」


「華河さん、こっちにおいでよ」セイジツが手を差しだすので「セイジツ君……」

「来て、くれないの?」

「あやね、話を続けろ」

「エッ? でも……」

「いいから、奴の気を引くんだ」


「あ、はい。セイジツ君。お腹空かない?」

「大丈夫だよ。さあ、こっちに来てよ」


「立ってると疲れるでしょう? そうだ、あそこに椅子があるから、座らない?」

「……そう、だね」

「じゃあ、椅子を出すから、ちょっと待ってて」


 あやねは部屋の隅に折りたたんでおいてあるパイプ椅子を二脚持ってくると、部屋の真ん中に少し距離をあけて向かい合わせに置く。


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